第8話『セリフェリオスの裁き』 ― 前編 ―
◆ 異変と共に“法廷”召喚
朝。加奈の部屋には、昨晩刻まれた“光の紋章”がじわじわと広がり始めていた。
壁や天井にふわりと浮かぶ羽の文様、ふんわりとした金色の光。空気の温度も、重力も、どこか違う。
梨花が呆然とつぶやく。「……これ、部屋じゃない」
「空間そのものが変わってる」と美穂が続ける。
やがて、天井の奥から、凛とした声が響いた。
「妖精王、御前に現る」
金色の光をまとって、威厳ある存在がふわりと現れた。
背中には巨大な黄金の羽根。ローブは天光を織り込んだように輝き、その身長は普通の妖精の何倍もある——50cm級の超大型個体。
その名を、セリフェリオス九世。
加奈:「え、デカッ! 妖精サイズって概念が崩壊してる!」
美穂:「あれが……妖精界の王」
◆ 妖精王登場、まずは宣告
セリフェリオス九世は、浮遊するままゆっくりと地に降り立ち、目を閉じて静かに語り始めた。
「人間界における、妖精“パセリ”の死亡に関し、関係者の処遇を定める」
加奈:「ちょ、ちょっと待って。なんかもう、完全に裁判の被告席みたいな立ち位置なんだけど……!」
梨花:「いやまあ実際そうでしょ、これ」
◆ 三人の「弁明」開始
王の眼差しがこちらに向いた。
「言い分があるなら述べよ」
その瞬間——
加奈:「すみませんでしたああああああああ!!」
スライディング土下座で床に沈み込む加奈。
加奈:「ゴキブリかと思って! ちょっとパニクって! つい! 反射的に! 計画性ゼロの事故でした!!」
美穂が冷静に補足する。
「過失致死です。敵意も意図もありませんでした。完全に事故です」
梨花:「あと加奈、妖精の国と戦うには知能が足りません」
セリフェリオス:「……知能の侮辱は重罪であるぞ」
加奈:「えっ!? やばいやばい! ここ笑ったら死ぬ空間だった!!」