第7話『裁きまであと三日』 ― 後編 ―
◆夜の会話:少しずつ重なる心
夕方、三人は簡素な食事を囲んだ。
カップスープに砕いたビスケット、チョコは1粒ずつ。
笑えないほど質素だが、どこか落ち着く空気が流れていた。
加奈がポツリと漏らす。
「……両親が帰ってきたとき、部屋がこの状態だったら……絶対、説教どころじゃすまないよね」
「そもそも家ごとなくなってたら、説教以前の問題」と梨花。
「ていうか、異世界絡みで家が消えた場合って、保険効くのかな……」と美穂が真顔で言うと、
三人はなぜか吹き出した。
笑った後の沈黙は、温かいものだった。
これまで言葉にできなかった不安や恐怖が、ほんの少し和らいだような気がした。
「でもまあ、生きてればいいよね」
美穂が言った。
梨花もうなずく。「死んだら謝れないしね」
加奈も目を細めて笑った。「じゃあ……生き延びて、全力で怒られよう」
◆深夜、現れる“先触れ”
深夜——。
部屋は静まり返り、風も虫の声もない。
……ザザッ。
突如、空気が震えたかと思うと、再び銀の副官が姿を現す。
しかし今回は何も言わず、部屋の中央にそっと降り立つと、足元に銀の光の紋章を刻んだ。
淡い光が広がり、その中心に“タイマー”のような数字が浮かび上がる。
「2:00:00:00」
加奈が硬直する。
「ねぇ……これって、カウントダウン……?」
美穂が眉をひそめる。「たぶん、裁きの時までの正確なタイマー……物理的に置いていったのね」
梨花が指差す。「しかも秒単位。親切設計すぎて怖い」
加奈:「そういうの、ファンタジーって“概念”でやってくるもんじゃないの!? なんでこんな具体的なの!?」
副官は一言も発さず、そのまま光に溶けるように消えた。
室内には、光る紋章と、刻一刻と時を刻むタイマーだけが残された。
三人はその数字を、言葉もなく見つめていた。
→ 次回『セリフェリオスの裁き』へ続く!