第一章〜倫子
第1章 書かせていただきます。どうなるか、展開は 私にも分かりません。登場人物たちに任せます。宜しくお読みくださいませ。
教室に倫子の姿はなかった。今日は風邪の療養のため、欠席するんだとか。だからか、遠慮のない声が飛んできたのだ。
「これさ。倫子がやったのに違いないよ。あいつならやりかねない。きっとそうだ」
染田勝昭が息を切らせながら断定口調で言った。
彼は僕の親友の一人である。
いい奴だけど、口が軽いのが欠点と言えば欠点である。
教室に駆け込んできた彼が手にしていた物とは。
ボロボロに引き裂かれた体操着であった。所有者の名前など書かれていないから、誰の物なのか特定出来ないと思われる。裏地は起毛していて分厚い生地だから、素手で引き裂けるとは思えなかった。
おそらくは剪定バサミのような強力なハサミを使ったのだと僕には思えた。
「北校舎の三階の廊下、突き辺りに無造作に置いてあったんだ」
勝昭は相変わらず呼吸が速い。我先にこれを見せようと走って来たのだろう。この教室は、南館の一階、三年二組の教室である。
「なんでお前はこれが倫子の仕業だと思うんだ?」
すると勝昭が少し考えてから。
隣の席で聞いていた山根真凛が首を伸ばしながら訊いてきた。
「そりゃあ。逆上すると何するか分かり得ないあの女ならやりかねないだろ?違うか?」
勝昭が答えた。
「だって、こんな事するやつ、他に考えられるか?普段の倫子ならやるわけないんだけどさ、たまたま怒りに燃えてたとかならな」
「嫉妬とかか?男を他の女にとられたとか?あり得るな。ああ見えて意外に男に執着するタイプかもしれんしよ」
クラス一の不良である星野ひかるが口を挟んで来た。
すると、僕の後ろの席に座る後藤田玲子までもが口を出したではないか。普段おとなしいコなのに。
「だからって何でもかんでもリンちゃんの所為にするのもおかしくない?証拠もないんでしょ?思い込みで決めつけるのはよくないわ。可哀想に」
そこで、2時限めの授業を担当する猪俣先生が扉を開けて教室に入ってきたのだ。で、取り敢えず話はそこで一時中断となったのだが。
犯行時間 (と、あえて言ってしまうが)は今日だろうか?もし今日であってさらに犯人が倫子であるとするなら、彼女は休んでいなく、学校の何処かにいるということになるが。
僕たちは 嫉妬深いから、モテる女、倫子に関する噂は、熱の入る話題なのであった。
かくゆう僕はといえば、世界で一番倫子を愛しているという自信を持っているのだが。
だから、ほんとは倫子の悪口なんかいいたくなんかないんだよ。疑いたくもないし。
しかし、それよりこの体操着の持ち主はこれをみたら深く傷ついてしまうかもしれなかった。
さて、僕らはどうすべきなのか?まずはこの引き裂かれた体操着の持ち主を探して慰めるくらい、なのかな?犯人探しはそのあとだ。
いただきまして誠にありがとうございました。