プロローグ
新作です。書き始めさせていただきました。数作同時に書いております。どうぞお読みになっていただけましたら幸いです。ラブコメです。宜しく!
高輪倫子がピアノを彈く姿は、とても優雅で可憐で見る者の目を惹いた。彼女は母親がジャズ・シンガーで父親が音楽教師という音楽一家に生まれたそうで、生まれながらにして音楽に秀でているという運命にあったようだ。
ピアノも弾けるが他に、部活は吹奏楽部に入っていて、担当する楽器、フルートの名手でもあるのだ。
身の熟しはお淑やかで、なんでも茶道の嗜みもあるようでその所為か、動きにも育ちの良さが滲み出ていて、いかにもなお嬢様風なのであった。
背も高く、身長170ある僕といい勝負だ。もちろん全身痩せぎすで、その美しさは他の女子の誰にも負けてはいなかった。
クラス委員長もしていて、これ以上にないという人気者なのであった。
ただ、彼女を怒らせた時にはそのキャラは豹変するのだ。
高輪倫子を怒らせては絶対にならない──。
と、全校生徒に言わせるだけのパワーと残虐さを倫子は併せ持っていた。
誰もが彼女を恐れる所以。
可愛がっていた飼い犬を速度超過の車に轢き殺された倫子がその犯人である男をボコボコのフルボッコにして、川に投げ捨てたというのは単なる噂や、誇張された伝説の類だとは誰も言えなかった。
指導のためとはいえ彼女の身体に触れた体育教師の股間を思い切り蹴り上げて気絶させたというのにも、たくさんの証人がいた。彼女の体操着を隠したいじめっ子の女生徒が3日後に自殺体で発見されたというのも、誰もが単なる偶然とは思っていなかった。
僕は倫子が本気で怒るところを見たことはなかったけれど。とにかく、普段の性格、言動からは、怒ったときのそれを想像することもできないのである。
まぁ、そのギャップが僕の彼女を好きにならしめた理由のほぼ全てなんだけどね。
僕は、普段お淑やかな彼女が怒るところをむしろ見てみたい派のひとりなんだけどさ。
お読みに行っていただきまして誠にありがとうございました。