タイトル未定2025/06/08 21:26
魔導王ラグナの目覚めにより、世界の命運が揺らぐなか、アリアはすべての記憶を取り戻す。
彼女が選ぶのは、破滅か、再生か。
“チート”と呼ばれたその知識の真の意味、そして両親の正体が、今すべて明かされる。
「記憶が――流れ込んでくる……!」
アリアは苦悶しながら床に膝をついた。
魔印が肩を灼くように光り、その光が空間を満たすと、
かつての“記憶”が時を超えて蘇ってくる。
◇
世界が滅びかけた、最初の終焉。
ラグナ=ファウストが暴走した魔導文明を止めるため、世界は自らを封印した。
そのとき、ただ一人残されたのが――
「この記録を受け継ぎ、世界がまた過ちを繰り返さぬよう導け」
そう言って、ラグナは記憶を持つ“観測体”を創り出した。
それが、アリアの前世だった。
◇
アリアは“日本の女子高生”としての記憶の奥に、さらに深い層が存在することに気づく。
それは、人でもなく、神でもなく――
ただ、“繰り返される世界を記録し、未来に繋げるための存在”。
(私のチート知識は、前世のものだけじゃなかった……)
(この世界よりさらに前の、滅びた世界の――“記録”だった)
◇
そして彼女は知る。
この世界に転生する直前、自ら記憶を封じる契約を交わしたことを。
「私が世界を導けるような人間だとは思えない。でも……それでも、誰かの役に立てるなら」
「記憶も力もいらない。私は、普通の女の子として幸せになりたい」
「でも、もしもまた、世界が滅びそうになったとき――
そのときは、この身を捧げても、誰かを守れるように」
それは、“自分を人間として生きさせてほしい”という願いと、
“もしものときは世界の盾になれるように”という誓いを両立させた“魔導契約”。
◇
現在――
アリアは目を開けた。
目の前には、ラグナ=ファウストが立っている。
「ようやく思い出したか。君は、私の――いや、世界の記録だ」
「そして今、そのチートと呼ばれた“知識”を、自らの意志で使えるようになった」
アリアは、まっすぐに彼を見つめ返した。
「私は、記録でも兵器でもない」
「私は、ただのアリア・ブレイユ。人として、生きて、愛して、笑って……家族を築きたいの」
「その夢が、誰かを救う力になるのなら――私は、それを“チート”と呼んでもいい」
その言葉に、ラグナは静かに目を閉じた。
「ならば――この命を賭して、試させてもらおう」
そして、空間がねじれる。
始祖の魔導――それは世界法則すら曲げる究極の力。
◇
王都上空、二人の魔導がぶつかる。
アリアは、かつて封印されていた全記録を駆使し、
ラグナの魔力を“理解”し、対抗していく。
「私は、あの人たちの娘。だから――こんなところで負けない!」
その言葉に反応したのは、母・レイナと父・ガルド。
王都の結界の外にいた彼らが、ついに姿を現す。
「やっと……思い出してくれたんだな」
母が微笑む。
「ずっと、お前の未来を邪魔してきたが……もう、お前を信じてもいいよな」
父が涙を堪えながら頷く。
「――勇者と聖女の娘としてじゃない。
ただの“アリア”として、世界を救ってみろ」
◇
戦いの終盤。
アリアは、ラグナに最後の問いを投げかける。
「あなたは、なぜ世界を滅ぼそうとしたの?」
「救うためだ。理想を叶えるために――だが私は間違えた」
「なら、もう一度、やり直しましょう。今度は――一緒に」
その言葉に、ラグナの魔導がふっと静かになった。
「……人間は、変わったな」
「いや、君が変えたのか。なら――未来を託そう」
彼の身体は光へと還っていった。
◇
そして――
王都に、春が戻った。
アリアは王立学苑の卒業式を終え、
家に帰ると、両親が小さな家で料理を作って待っていた。
「ただいま」
「おかえり」
「明日からは、また“普通の生活”が始まるのね」
「うん。ようやく、私の“チート”が本当に活きる日常だよ」
彼女の右肩の魔印は、今も微かに光っていた。
だがそれは、重荷ではない。
それは、選択の証。
信じる力。
そして――
幸せになるためのチートだった。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。




