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TSした親友がヤンデレ化しました  作者: 如月
第二章 TSした親友がヤンデレになりました
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012 男の目的

「それで?何の用だよ。」


 怪し気な男は問い詰められる立場のはずだがふてぶてしい態度を崩すことはなく、どかりとその場に座り込んだ。

 そんな怪しげな男を見て智之はピクリと眉をはねさせるがそれ以上のアクションをなく、努めて冷静に振舞えるように心がけた。


「……その前に俺らのこと本当に心当たりないのか?」

「だから、ないって言ってるだろ。しつけぇな。」

「……。夜に変な薬を渡した覚えは?」


 何度聞いても怪しげな男は智之たちのことを覚えてはいないらしいく、怪訝な顔をして智之を睨みつけている。声を荒げた怪しげな男は智之の続く言葉に顔を固める。


「あ?……あれ、上手くいったのか!?」

「やっぱり知ってるのか。」

「なんだよ。そのことかよ。それでどうなったんだ?」


 怪し気な男が何かしらを思案すると、どうやら智之の言うことに心当たりがあるようで急に顔に喜色を浮かべると、その場に立ち上がった。

 智之は怪し気な男に肩をゆすられながらも目線を合わせる。


「僕だよ。僕。」

「おおっ!!本当に上手くいくとは!!」


 蓮が一歩前に進み出ると、怪し気な男は智之の肩から手をどかして蓮の方をきらきらした表情で見つめた。そして、体中から喜びを表現しながら蓮に近づき、しかし、その行動は智之によって止められた。


「ふはははは。やはり我こそは天才だ!!」

「おいっ、何の目的でこんなことを。」

「天才の俺には一つだけ分からないことがあった。」

「は?」


 急にテンションをあげた怪しげな男は天を仰ぐように手を掲げると、自分を讃え始めた。が、次の瞬間には悲しみに沈んだような暗い表情になる。

 真面目腐った表情で語り始めた怪しげな男に智之は何を言い出すのかと、首を傾げる。


「流石の天才でも解決できないことがあるのだ。」

「……。」

「それはな、何故か我がモテないのだ!!」

「……は?」


 真面目腐った顔で話すのだからどんな内容かと思うと、くそほどつまらないものであった。あまりにもふざけた内容に智之は怒りを隠しきることが出来ずに、前面に押し出した。


「だからな、何故か我がモテないのだ!!この天才たる我が!!」

「……阿保か。」

「ふんっ。そこで我は考えた。」


 怪しげな男はメンタルが強いのか、殺されそうなほど智之に睨みつけられているのにも関わらずその態度に一切の変化はない。


「全世界の我以外が女性になればモテると!!」

「馬鹿だ!!こいつ馬鹿すぎる!!」


 飛躍する結論に智之は思わず心の底から言葉が漏れ出てしまう。天才と言いながらも知性の欠片も感じえない結論はまさに馬鹿というのにふさわしい。


「ふはははは。我の頭脳に追いつけないか。」

「なぁ、蓮。」

「なぁに、智之。」


 智之は自分の世界に閉じこもる怪しげな男に怒りをとうに通り越し、呆れ、哀れみさえもその顔に浮かばせる。智之と蓮の視線が重なり合い、怪しげな男への呆れがお互いに伝わり合った。


「こいつ、どうしようもない阿呆だ。どうしよう?」

「……ニヘヘ。」

「……ははは。」


 智之の問いかけに蓮は誤魔化し笑いを浮かべた。その笑みを見た智之もその顔に乾いた笑みを張り付けて、お互いを見つめ合った。


「そこっ、イチャイチャしない!!」

「イチャイチャしてねぇーし。」

「ニヘヘヘヘ。」


 見つめ合っていた二人の間に怪しげな男が入り込み、一言言葉を漏らす。すると、智之は間も置かずに即否定をして、必死に顔を横に振るう。

 それとは対照的に蓮は顔をだらしな緩めると、智之の方へちらりと一度目線を送りぽっと頬を朱に染めた。


「満更でもなさそうですけど!?」

「気のせいだ!!」

「気のせいか!!」


 蓮の表情を見た怪しげな男は智之の言葉に納得できなかったようで、智之に対して言葉を放つ。だが、智之は認めようとはしない。

 そんな智之の勢いに飲まれるように怪しげな男は一つ頷くと智之の言葉に納得した。


「ごほん。モテるためってマジで言ってるのか?」

「大マジだが?」

「……。」


 大マジらしい。怪キリっと決め顔を浮かべながら発せられた言葉は真を感じさせるのに十分であったが、智之にはその言葉は簡単に認められるものでない。


「大マジだが?」

「マジ、か~。」


 沈黙でもって答える智之に怪しげな男は言葉を繰り返す。すると、観念したように智之はがくりと頭を項垂れて、その場に座りこんだ。


「まぁ、いいや。治すことは出来るのか?」

「出来ないが?」

「何故?」

「我がいれば必要ないだろ?」


 真の問題は治せるかどうかである。智之の願いは届かなかったようで、TSを戻す手段は現状ないことが薬の制作者により明らかになってしまう。

 怪しげな男は胸を張り、その胸に拳をどんと置く。使いどころが間違えていなければカッコいいかもしれないが、今回のはつまるとこと出来ないことを胸を張っているだけである。ダサいにもほどがある。


「こいつ大バカ野郎かよ。」

「さっきから馬鹿だ、阿呆だ、何だよ。」

「いや、どう考えても馬鹿で、阿呆で、ろくでなしじゃねぇか。」


 智之は悪態を漏らさずにはいられない。何度目かの怪しげな男を馬鹿にする言葉に当の本人も黙っていられず、反抗する。

 しかし、智之の有無を言わせないように続けられる言葉に怪しげな男は一瞬顔を硬直させて怯んだ。


「な、なにおう⁉」

「何故直せないんだ?」

「そうやって作っていないからだな。変化は不可逆で、どうしても身体に負担がかかるものだ。故に元に戻すなど出来るはずがない。」

「……そう、か。」


 どうにもできない。智之はそのことが分かると肩を落とすことを止めることが出来なかった。

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