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TSした親友がヤンデレ化しました  作者: 如月
第二章 TSした親友がヤンデレになりました
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009 一週間後

「わくわく、どきどき。」


 智之がぬいぐるみを作成し始めて一週間ほど後のことである。ついにぬいぐるみが出来たと呼び出された蓮は目を輝かせて、智之と隣り合って座った。


「あはは。声に出すほど楽しみなのか。」

「ニヘヘ。だって、智之からのプレゼントだよ。喜ばないはずないよ。」

「ははは、別に大したものではないけどな。」


 終始ご機嫌そうな蓮の様子に安心したような、逆に不安を覚えるようなどっちつかずの感情に襲われている智之は謙遜しながらも、どうにか笑みを浮かべている。


「え~、そんなことないよ。手作りのぬいぐるみ貰えるの、すっごい嬉しいよ。」

「そう言ってもらえるとこっちも嬉しいな。」

「ニヘヘ。」


 蓮のにこにこと屈託ない笑みを向けられた智之はようやくほっと一息ついて、心の底から笑みを浮かべた。


「ははは、はい。これ。」

「わ~、ありがと!!既製品と遜色ないね。」

「これでも10年以上は続けているからなぁ。そこそこの腕はあると自負している。」


 智之から熊のぬいぐるみを受け取った蓮は両手で抱えるように持つと、ぬいぐるみを天に掲げて下から覗きあげるようにきらきらとした瞳をぬいぐるみへと向けている。


「ニヘヘ、流石智之。」

「いやー、喜んで貰えてよかったよ。これでも心配してたんだ。」

「心配?」


 智之が安堵からか感情を言葉にすると、蓮はぬいぐるみに向けられていた瞳に疑問の色を浮かばせて、小首を傾げると智之の方へと向いた。


「ああ、最初に結構期待値が上がってただろ。その期待値を超えられるか心配だったんだ。」

「超えるも何も、大幅更新だよ。ありがとっ!!」


 蓮はぎゅっと熊のぬいぐるみを胸に抱きしめて満面の笑みを浮かべる。その表情からは蓮が心の底から喜んでいるのがありありと分かるものであった。


「ははは、よかったよ。」




「もう寝たか?」


 その夜。ぼんやりと霧がかったような暗闇の中で、布団にくるまる蓮に智之の手が伸びる。智之の手が蓮の髪に触れそうになった時に蓮は目をぱちりと開くと、智之の方へと眠気眼を向けた。


「智之……?」

「起こしちゃったか?」

「ん、まだ寝てなかったよ。どうしたの?」


 蓮はどこか虚ろにぼんやりとしながらも身体を起こすと、智之と正面になるように座り込み、その瞳を智之の方へと向けている。

 智之の表情はいつもより数段優し気で、纏っている雰囲気も和らげである。


「どうしたってほどでもないけど。」

「ニヘヘ、寂しくなった、とか?」


 智之は曖昧な態度で蓮の問いに明確に応えない。いつもらしくない智之の様子に蓮がぼんやりとした雰囲気のまま冗談めかして笑う。


「そうだな。寂しかったのかも。」

「え~、今日の智之、素直で変。」

「変ってひどいな。」


 蓮の冗談を真面目腐った表情で答えた智之であるが、そんな智之に対して蓮は驚きに急速に頭が冴えわたっていく。蓮はぼんやりと目尻を下していたのに、今ではいつも通りに戻っている。


「ニヘヘ、ウソウソ。智之も寂しいとかあるんだね。」

「それはそうだろ。人を何だと思っているんだ?」

「んー、他人の感情が分からないロボット?」


 他人の感情が分からないロボットとは酷いものだ。人に向ける言葉ではなく、変という言葉よりもよほどひどい言葉だ。とはいえ、その言葉は蓮の声の調子から冗談で言っているのがすぐに分かるものだった。


「えぇ!?ひどくない?」

「ニヘヘ、冗談だよ。智之が優しいのは知っているから。」

「蓮の感情は結構分かっているつもりだけどなぁ。」


 智之の大げさなリアクションに蓮はころころと笑みを零した。蓮の言葉に心外そうに智之は言葉を漏らすが、その言葉を聞いた蓮は一瞬真顔になり、次の瞬間には下を向いて鬱浮いてしまう。


「それこそ……嘘だよ。」

「本当だよ。」

「……なら、証明してよ。」

「……。」


 蓮の言葉は微かに震えており、何かしらの強い衝動に耐えているようだった。


「……してくれないんでしょ?」

「……本当に蓮が望むのなら。」

「僕はいつでもウェルカムだけどね。」


 智之は蓮が望むならなどといいながらも、行動に移そうとしない辺り蓮の言葉通りなのだろう。望むことをするつもりなど一切ないのだ。

 どれほど蓮が望もうが智之は行動に移しはしない。いつもなら。でも、今日の智之は一味違う。後ろ手に隠されたものを蓮へと差し出す。


「ははは、そうか。ならこれあげる。」

「何……?」

「サプライズで作った。」

「え?」


 それは智之ぬいぐるみ。絶対に作らないと智之が言い張った自分自身をかたどったオリジナルぬいぐるみがあった。

 あまりの衝撃に蓮はぽかんと口を開けて、阿保面を浮かべてしまっていた。


「え~~~~~!!」

「ははは、そんなに驚くことか?」

「だ、だって、あんなに嫌がっていたし。」


 蓮は夜にもかかわらず周囲への配慮を忘れて大声をあげてしまう。そして動揺を瞳に残しながら、おずおずとぬいぐるみを受け取ると理解不能な状況に目を回している。


「まぁ、嫌だったけど、蓮にならいいかなって。」

「……どういう意味?」

「蓮にはいつでも側にいてほしいし、でもずっとはいられないだろ。だから、俺の代わりになるものをと思って。」

「それって……。」


 蓮は唐突な言葉に言葉を失った。そんな蓮の様子に智之は何を思ったのか一歩、二歩と近づいていく。


「ははは、もっと直接的に言わないと分からないか?」

「えっ……?」

「……。」

「きゃっ……。」


 智之がとんっと軽く蓮の肩を押すと抵抗なく蓮は布団へと倒れ込む。そして、その上から智之が覆いかぶさり、顔の側に両手をおき四つん這いになる。

 太く鍛えられた筋肉質の腕に蓮はドギマギしながら、目をさまよわせる。蓮が身じろぎしようとすると自然に二人の身体は密着して、そればかりか蓮を逃さないように智之は脚にぎゅっと力を込める。


「蓮……。」

「智之……。」


 逃げ場のない蓮は近づいていく智之の顔を避けることなど出来ずに目と目を見つめ合わせることしかできない。

 二人が重なるその時、霧がかった夜が光に照らされて晴れていく。


「はっ、って夢……?」


 蓮が夢から覚めると、当然そこには智之の姿はなく服も乱れなど一切なかった。


「夢かぁ、夢だよね~。」


 ほっと安心したような表情を浮かばせた蓮だが、夢の内容を思い出すとぼっと顔を赤くしながらも少し残念そうな表情を浮かばせた。


「んっ、それにしても……プレゼントが嬉しかったからって、あんな夢……恥ずかしい。」


 蓮は汗などで湿った服を気持ち悪そうに身じろぎした後、頭を抱えるとぼふっと布団へと顔を埋めた。

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