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TSした親友がヤンデレ化しました  作者: 如月
第一章 TSした親友が大変です
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011 再・お出かけ

 例によって朝早くからの近くにあるショッピングモールまで二人は足を運んでいた。このショッピングモールはかなり大型で様々な店が出店している。付近に住んでいるものからはここに来れば、何でも揃うとまで言われる場所だ。


「で、今日は何を買うつもりなんだ?」

「んー、色々?」

「色々って、まぁ、引っ越しの準備だよな。」

「うん。でも、今の家にほとんどあるから。ニヘヘ。」


 蓮は確かに買い揃えたいとしか言っていないため間違えではないのだろうが、買い揃えたい理由自体は引っ越しに向けてで間違えないはずだ。であるのに、なぜ買い揃えるために出掛ける必要があるのだろうか。


「だろうな。でも、買いたいものあったんだろ。」

「んー、一緒に出掛けたかったからって言ったら、怒る?」

「……。怒らんぞ。親友と出かけるのなんて普通だろ?」

「ニヘヘ。うんっ。」




「あっ、これどう?」


 雑貨屋に赴いた二人は小物を物色していく。ふと蓮が呟いて足を止めた。蓮の視線の先にはペアマグカップがあった。マグカップは猫や犬、熊などといった動物をモチーフに作られているようで、色違いの二つ組のマグカップが所狭しと並んでいた。

 その中でも蓮は猫のマグカップを手に持ち、智之に感想を求める。感想を求める蓮の瞳は心なしか輝いており、どうやらいいものが見つかったことに興奮しているようであった。その様子に智之は微笑ましいように目を少々細め、言葉を発した。


「ああ、いいんじゃないか。」

「ニヘヘ。片方はあげる、ね?」

「……ああ。ありがと。」


 それはカップルとかの行動では?と疑問を抱いた智之であるが、特にこれと言って指摘をするつもりはないようで、さらっと感謝を述べるだけに済ました。その返答に蓮は嬉しそうに二度頷くと、口元を緩ませた。


「ニヘヘ。お揃いだね。」




 次に移動した場所は箸のコーナーである。木の箸やプラの箸、子供の矯正用の箸など様々な箸があり、色とりどりに彩られて見るだけでも楽しくなるだろう。二人も例にもれずそのコーナーの前で止まり、手に取った箸の感想をお互いに言い合っている。その中でも気に入ったものがあったのか、蓮は手に持った箸をまじまじと見ていた。


「この箸、可愛いかも。」

「ん?ああ桜柄か。確かに可愛いな。」

「うー。買っちゃおうかな。」


 どうするか本気で悩んでいるようで唸りながら、表情がころころ変わる。そんな蓮の様子を少しの間見つめていたが、あまりにころころと変わる表情に笑みがこぼれた。それに気が付いた蓮が智之のことを見つめると、智之はまだ笑いながら蓮に対して言った。


「ははは。箸はいくらあっても困らないし、いいんじゃないか?」

「んー、じゃあ、買おう、かな。」




「そう言えば智之の家に電気ケトルなかったよね。」


 所変わり二人は電化製品コーナーにやって来ていた。大型の電化製品を買うつもりはないみたいだが、小型の電化製品であると便利なものは多く存在する。二人が持っていない電化製品も多いだろう。電気ケトルもその一つである。


「そうだな。あまり使う機会ないと思ってたからなぁ。」

「あったら便利だよね。」

「確かに色々と楽になりそうだな。」

「僕、買うよ。」


 何故。智之も家にないと蓮が購入することになるかを智之は分からないようであるが、蓮には歴とした理由が存在するのだろう。そこを暴く必要はないと考えた智之は努めて考えないようにし、ただ単に頷いたのだった。


「ん?そうか。」

「ニヘヘ。」




「……。」

「何見てるんだ?」

「えっ、何でもない。」

「ああ。アクセサリーか。興味あるのか?」


 蓮が立ち止まってぽやっと見ていた先にはアクセサリーショップがあった。二人の位置からは商品そのものはほとんど見えていないが、アクセサリーというだけで蓮の興味を引くには充分であったのだろう。


「んー、ないわけじゃない、けど。いいかな。」

「そうか?折角だから見に行ってもいいと思うけど。」

「ん、いい。また来るときに、ね?」

「蓮がそういうなら、いけどな。」




「結構見て回れたな。」

「ニヘヘ。楽しかった。」

「そろそろ昼食にしようか。」


 ショッピングモールに来た当初はここまでの買い物になるとは思っていなかったであろう二人の手には両手に抱えるくらいの荷物があった。智之の手にも荷物があるのは蓮の買い物分もあるが、半分程度は智之のものであった。自身も欲しくなって買ったのだ。


「うん。何食べる?」

「実は店予約してある。」

「えっ、ほんと?」


 驚いたように目を瞬かせる蓮に智之は内心でサプライズの成功を喜んでいた。最近蓮に変な様子が多いように感じる智之であるが、それでも親友であることに変わりはない。親友が喜ぶことをしてやりたいと思うのもおかしなことでないだろう。


「ああ。火曜には予約取ってな。折角ならと思って。」

「ニヘヘ、嬉しい。」





 智之の予約した店はパスタ専門店である。店の中は程よく話声が交わされるくらいで騒々しさとは無縁の空間であった。木のテーブルの上にはクリーム色のテーブルクロスが敷かれており、その上にフォークが事前に準備されている。

 二人は案内されたテーブルに対面してつくと、手渡されたメニューから各々注文をした。料理が来るまでの間に自然と話題はこの店の話になった。


「正直に言えば、前から食べに来たくて。」

「ニヘヘ。そうなの?」

「ああ。上司から美味しいって聞いて、それなら行ってみたいと思ってて。」


 上司と智之が言うとピクリと蓮の眉が跳ねる。その様子に気づく様子はなく智之は機嫌よく話を続けた。蓮は自分の前で他の人間の話をされたのが内心面白くなく、少し唇を尖らせていた。


「上司って、黒井さん?」

「そうそう。あのメガネ美人の。」

「ふーん、あの人のオススメなんだ。」

「あ、ああ。偶々話した時に、な。」


 黒井さんとは智之の会社の直属の女上司であり、本名を黒井翼という。29歳で役職を持つに至った女傑である。智之は会社に就職してからというもの度々お世話になってきた黒井のことを人として尊敬していた。

その黒井のことを話した後に急に何故か蓮の機嫌が悪くなっていることに気がついた智之は少し動揺しながらも会話を続ける。特に不機嫌になるような話はしていないはずだが、と内心では首をかしげていた。


「へぇー。黒井さんは誘わなかったの?」

「ん?上司だからな。プライベートとは別。」

「へ、へー。ニヘヘ。僕はいいんだ?」


 たちまち機嫌がよくなった蓮に智之は安堵の息を吐いた。上目遣いになるように対面から智之のことを覗く蓮の瞳には期待の色が宿っていて、妙な汗を背中にかきながらも智之はその瞳を見つめ返して、智之にとっての事実を口にする。


「当然だろ。親友だし、仕事以前からの付き合いだ。」

「ニヘヘ。僕が一番仲いいもんね。」

「そうだな。」

「ニヘヘヘヘ。」


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