5.いざ!フラワー国
短めです。
4時間後恐る恐る宿屋に帰ると、先ほどの人垣はいなくなっていた。
どうやら王子は帰ったようだ。
「ただいま~」
「おかえり」
部屋に戻ると、サファイアが自分のベッドで本を読んでいた。
「はぁ~ぁ、疲れた~」
「そりゃあ4時間も突っ走ってたらね」
ぼやきながらベッドにダイブすると、サファイアが呆れたように言いながら、フライドポテトやクッキーなど、摘まめる物を差し出して来た。
「夕食も食べなかったし、お腹空いてると思って屋台で買っておいたよ」
「おぉ、弟よ~。お前のように気の利く弟を持って、姉は幸せだ~」
感激のあまり、サファイアに抱き着く。
「はいはいありがとう。感謝は近いうちに返してもらうよ」
「勿論よ、職が見つかったら奢るわよ!」
「………」
クールな弟に感謝しつつ自分のベッドに戻ると、遅い夕食を取りながら今後の対策を話し合う。
「急だけど王子が来た以上、明日この宿を引き払って他の国に行こうと思う」
ポテト片手に真剣な顔で言うと、サファイアが嘆息した。
「まぁそれしかないよね…。行くならフラワー国がいいと思うよ、ちょうど隣りだし」
「う~んそうねぇ…」
サファイアの言葉に、腕を組みしばし考える。
フラワー国はフルーツ国の東側(ジュエル国は西側)に、位置する国だ。
温暖な気候で花の国と呼ばれている。
「フラワー国ならジュエル国と直接の交流はないし、王子も追いかけにくいと思うよ」
「あぁ確かに」
フラワー国は自然を愛する国柄なので、発掘で地面を掘り返しているジュエル国とは、微妙な関係なのだ。
「よし!フラワー国に…って、旅費が無い!!」
うっかり忘れてたが、一文無しなのだ。
「心配ないよ。姉さんが飛び出してる間に、割のいいアルバイトを見つけておいたから」
「おぉ弟よ~」
至れり尽くせりな弟に感激して、再び抱き着く。
「いっぱい感謝してね…姉さん」
感激していた私は、この時弟がどんな表情をしていたのか、確認していなかった。