第1話
初投稿作品です、宜しくお願いします!一言でこの作品を表せと言われると難しいですが、よくあるテンプレートに私が思う、「自分がこの状況ならこうするだろうな…」という理想を捻じ込んだ、そんな作品に仕立て上げました!!失踪しない様継続した連載、頑張ります!
では少しでも御楽しみ下さいませ!!!
「おいお前、この資料今日迄に終わらせておけよ。」
その言葉と共に、デスクの端に大量の資料が強めに置かれる。軽く脅迫されている様なものだ。軽く了承の言葉を紡いで作業に取り掛かると、去っていく上司の後ろ姿を見ながら舌打ちをする。上司は自身の仕事は既に終わったかの様に椅子に腰を下ろし、スマートフォンの画面を眺めだした。人に自身の仕事を投げ出してダラダラと澄ました顔でサボる姿は、実に癪に障る。控えめに言って、顔面を殴りたくなる。
就職した初めの頃は、そんな上司に口出しをしていた。もう何年も前の事だろうか。然し社会は理不尽な事に、正論を言う筈の私を解雇処分にする。私は最終的にブラック企業の見本を改造したが如き、地獄の様な環境に流れ着いた。給料に至ってはアルバイトをした方が良いレベルで、手元に残る金は少なく僅かで、使おうにもタイミングが無い程逼迫した毎日だ。
さて今日も残業。これで15連勤だ。澄まし顔の上司は既に帰宅。私の身体は既に悲鳴を上げ、疲労困憊といったところであるが、大量のエナジードリンクを片手に作業を続ける。黙々と作業を続けて2時を過ぎた丑三つ時。やっとの思いで帰宅。狭いワンルームのベッドに倒れ伏す自分。そのまま5時30分のアラームに数時間後の自分を預けて就寝。
5時30分、予定通りのアラームが鳴動する。アラームを止め身体を起こす。然しながら、何故か身体はそのままベッドへ伏してしまう。身体の感覚は倒れると共に遠のく。小学生でも分かるであろう。もう身体は持たないと。死ぬということを。
私は薄れゆく意識下、たった数秒間であろうか。走馬灯を見る。小学生、中学生、高校生。どれもパッとしない人生であった。少し強く言っただけで社会から除け者にされる。周りとしては、我が強いと思われていたのかもしれない。人としての感情は持ち合わせていた。只、悪いものは尽く許せなかった。その為か、学校では自分から窓際族へと環境を置いていた。ボッチならではアニメや漫画、ゲームや異世界小説等。幾つのものを時間を潰す為に使ったのだろう。…いや、理不尽に押し負ける自分の考え方から逃げたのだろう。
そんなものらを眺め、憧れや嫉妬を抱いていた。その様な存在に成れない自分が憎かった。
今思えば、分かっていたのに改善せず、周りに流される人生を選択した自分は、何と情けないのであろうか。別に考え方を変える必要は無かっただろう。結局、押し負けた自分が弱かったのだ。それにもっと早く、もっと早く気付いていれば、こんな人生にはならなかったのに。
本当に。本当に情けない人間なのであろうか。私は…
どれ程気を失っていたのだろうか。早く出勤しなければあの澄まし顔の上司にねちっこく御説教される。それだけで1時間は潰れるだろう。それだけは避けなければ。そう言い聞かせて身体を動かそうとした刹那、身体が動かない事に気付く。動いているのかもしれないが、変である。周囲が何時ものワンルームの空間では無い。何も見えない。然し真っ暗では無く均等に白いイメージだ。言葉では表し辛い。
「はて、面白いものが流れて来ましたね。」
何処からか。声が聞こえてくる。私は後ろを振り向いたのだろうか。振り返ったのかは空間の異様さ故に分からない。眼前には何枚、何十枚もの翼を持ち白い服を纏う、凡そ人と見える何かと対面する。まぁ、何かと言われると大体察しは付く。
「私は法と正義を司る神。貴方達の世界の人間からはテミスと呼ばれたりしますので、是非気軽にテミスとでも御呼びください。」
誰も要求していないが、自己紹介をして頂いた。行き成り名乗られても…情報の処理が追い付かず、困惑する。
数秒経っただろうか、分からない。情報の処理が進みつつあると同時にかなり内心は驚く気持ちが溢れてくる。夜、目が覚めてトイレに行き電気を付けた途端、カサカサと壁を蠢くゴキさんと対峙する3倍位は驚いた。驚きすぎて言葉は紡がれない。私の口は一寸も動かなかった。
「恐らく貴方の状況についてですが…」
吃驚する私を置いて、神は言葉を続ける。
「死んだ魂がここ神界に流れてきたのだと思います。流れて来るというより魂の浄化をする段階で魂に歪みが生じていたのだと思います。普通は神界に流れて来ることはあっても神力に当てられて消滅する筈なのですが。」
「稀にですが死ぬ直前に、後悔や自分への叱責、過去の行動への反省をする等して強い心の揺れがあった場合消滅せず、神の元へ流れて来るのです。又その際の心情により流れる元の神が変わってきたりしますが。」
「…」
「…」
「…」
「あの……聞こえていますでしょうか。」
聞こえている。聞こえているのだ。聞こえているのだが、この私が死んだのか?飲み放題であった忘年会の酒の席。端でハイボールの一気チャレンジを1人一人寂しく行ったあの日。30杯程飲んだが酔わなかったこの私が。轢き逃げにあった際には擦り傷で済んだこの私が。過酷な15日間の残業を耐えていたこの私が。何故だ?
「急性心不全で御座います。」
以前読んでいたライトノベル小説に登場する神が如く、当然の様に思考を呼んでくる。死んだ事を告げられ、多少落ち着いた。凡そ普通ではない。所謂、心のショック療法とでもいうのだろうか。冗談はきついぞ、私。こんなに動揺したのは久しぶりだ。
話を整理していこう。私は急性心不全で死んだ。多分身体にきていたガタがいよいよ崩れたのだろう。そして死んだ後、私の魂が神界に流れ着いたと。輪廻転生見たいなシステムが本当にあるとでもいうのだろうか。あるとするなら非常に興味深いな。世界の人間は凄いな。想像や妄言だと今迄思っていたが、宗教とやらも本質的な、科学的に証明できない所を付いていたのかもしれないな。「あのー。」死ぬ前の走馬灯で思い出したけど、これって転生とかになるのかな。死ぬ前はあんなにすんなり受け入れる主人公の思考回路に笑いを浮かべていたな。懐かしいな。久しぶりに読んでみたく成ってきたな。「すいませーん。」嗚呼、でも死んだから小説とか読むの無理じゃないか。もういっそあの仕事も辞めて、フリーターにでもなっておけば良かったのかもしれない。近年の最低賃金だと20万は軽く稼げただろうに。体力はある方だったから、夜勤入れば30行くかもな。まあ、こんなのも今となっては全部考えたって無駄なんだろうけど。…誰か何か喋ってるのか?
そう思ってふと見ると縮こまって泣きじゃくる、神と名乗るが神に見えない女がいた。
「大変、申し訳無い。無視をしてしまって。テミス様でしたっけ?テミスって確かギリシャ神話か何かの神様だった様な…」
「よく知っていばすね、博識があるのはぼでもいい事ですよ。」
鼻水をすすり、テミスは語る。凡そ神様と名乗るには威厳が感じられ無い。何か冷静になってきた、こんな神様を見ていると。こんな神を駄女神というのだろう。人間は何と便利な言葉を作ったのだろうか。
「さて、先程申し上げました通り、私は正義や法を司る神です。神の裁き等も請け負います。そちらの世界でいう、検察官と裁判官を混ぜた様な役職だと思ってください。丁度良いタイミングで貴方が流れ着いて来てくれましたので、貴方に頼みたい事があるのですが。」
うわあ、切り替え速過ぎ。私、テンプレ過ぎてもう言葉出て来ないです。こんな神が法を司る…笑えてくるな。どうせ断ると「貴方の魂をすぐさま消滅させ、輪廻へと還します。」
とか言ってきましたねー。半ば強制イベントだよこれ。そうときたら大体の流れは…
「貴方には別の世界に転生して頂き、ある神を追って欲しいのです。」
「はあ。」
「名をアレース。戦闘における破壊を象徴する神であり、神の中で世界や神同士への接触は御法度となっております。勿論、裁判は例外ですよ。アレースはそれを破ったと見られるのですが、姿を隠してしまったのです。そこでアレースが接触したと見られる世界に使いを送り、調査を頼むという訳なのです。」
「場所の目星は付いていたりするのでしょうか。」
「乗ってくれるんですね、嬉しいです!場所は幾つか目星が付いていますが、一番神力を感じる場所がありますのでそこ近辺に転生してもらおうと思います。」
「流石にこのまま行くとなると危険なんじゃ無いでしょうか。」
粗確定ではあるがこの流れで行くと…後「嬉しいです!」って何だよ。断ったら殺す気しか無かった分際で。殴りたくなってきた。
「そうなんですよ!その世界には魔法があるんですよ!だからそのまま送り出してしまうと正直即死ですね。魔法と聞いたら分かるかもしれないですが、その世界には魔物がわんさかいますからねー。もって5分位でしょうかw」
wってなんやねん、マジで殴るぞ。………まあ、予想通りの異世界って感じっぽいな。魔法が使えるのか。ここに来て窓際族時代の趣味が活きてくるとは思わなかったが、ここでの選択は結構大事だぞ。それこそ理不尽を押し返す力を手に入れる為の!
「その為に神様からのギフト!!その世界の言語を自動的に翻訳したり出して会話したりできるのは付いてくるのですが。それと一つ、何かしらの願いを何でも叶えて上げる事とします。大サービスですからね!!何でもですよ。何でも!」
なんでもかぁ。何でもってことは多分スキルとかステータスとか自分の容姿とかってことか。あれっ?もしや神様ってバカなのかも。この契約には穴がある。もしや…
「神様。質問をいいでしょうか。」
「はぁい、何でも言って♡♡」
「神様は約束や契約を破らないでしょうか。また契約は僕が願いを言ったそばから実行されるのでしょうか。」
「何かと思ったら、そんな質問でしたか?そうですね、破る何てありえないですね。第一世界への接触以上に嘘を付く事や契約の破棄は御法度なんですから。契約については、貴方がそうしたいと思った瞬間から発動され、実行されますよ。」
さぞ当たり前かの如く言う様から見て、先ず間違えなく嘘は付いていないだろう。では神の裏切りへの不安は杞憂で有ると見ていい。その答えを聞けて良かった。
中学生の頃、誰しも考えた事はあるだろう。もし授業中に犯罪者が教室に来たら。もし教室で授業中に床に魔法陣が現れ、クラスメート、担任と共に異世界転移したら。その時自分にはどんな能力があるのか。なにが出来るのか。
犯罪者は取り押さえられるような技だろうか。勇者の称号等プラス色々なスキルなのか。はたまた、可愛いモンスターとほのぼの生活できるのか。私は一片たりともそうは思わなかった。私は悪いものは悪いと区別し、意見した結果1人となり、周りに流され生きてきた。そう思っていた。
然し実際は自分は何も悪くないと思い続けていただけだった。私は卑怯な人間だ。他人に罪を擦り付け、剰え最終的にその他人に顎で命令される日々だった。哀れであった。そんな卑怯な人間の答えは、皆を先導する勇者でも悪を倒す様な技術でもない。そんな大層な心は持ち合わせていない。卑怯な人間の答え、それは只1つ…
主人公の口調ですが、テンションによって変わりますw 分からない事だらけで試行錯誤しながらも執筆していますが、プロの小説家は並々ならぬ精神力を御持ちですね。本当に尊敬してます!
話の内容を考えながらの執筆はやはり難しいですね…