屋上
※本短編には飛び降りを想起させる表現
または、登場人物の死を想起させる描写が含まれます。
苦手な方は読まないことをお勧めします。
※Twitterにて公開している作品を加筆修正したものとなっています。
ひぐらしに急かされ、階段を駆け上がる。
「大事な話があるから、放課後、屋上に来てください……!」
あまりにもベタな自分の台詞を思い出して、にやけそうになるのを必死で堪える。
ドアを勢いよく開けると茜色に染まった屋上が広がっていた。部活動も終わったようで、下のグラウンドにはちらほらと下校する生徒が見える。先程まであれだけ五月蝿かったひぐらしは嘘のように静まり返っていた。
彼女はまだ来ていないようだ。
数分ほど待っただろうか「ガチャリ」とドアが開く。心の準備をするために数秒待って振り返る、と同時にトンっと身体を押された。
── 落ちる。
ゆっくりと浮遊感に包まれる。
私が落ちるのとほぼ同時に、耳が痛くなるような静寂を切り裂くようにひぐらしが一斉に鳴き始めた。
その時、自分でも驚くほど冷静に「死」と言うものを実感した。地面に吸い込まれる。落ちる瞬間、最後に見たのは茜色に染まる君の恍惚に歪んだ笑顔だった。
その歪んだ笑顔に見惚れた刹那、生々しく乾いた音と血の匂いがした。
『屋上』を読んでいただきありがとうございました。
登場人物の容姿などの情報を省いたものはあくまで意図的なものです。私としては、二人の女の子の悲恋の物語、(ほぼ)メリーバッドエンドとして書いていますが、
「登場人物などの解釈を読者の皆さまに委ね、読み手の数だけ変わった物語になると面白いかな」と思いこのような形になりました。
最後に、『屋上』への感想などコメントしていただけると幸いです。また次回作があればお会いしましょう。