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余計な話をせずに粛々とモンスターを狩るタイプの筋肉ゴリラ

 メカエイプの包囲網を何とか潜り抜け、出発地点の港まで何とか帰ってきた。アニーちゃん特性、HP回復アイテム"激甘ラッシージュース"の効果でHPも全開だ。言うほどラッシー味じゃ無いけど。


「ゴングマンさん! あいつら追ってきてますよ!」


 メンバーの誰かが叫ぶ。


「まぁそりゃそうだよなぁ!」


 このゲームにセーフゾーンは存在しない。逃げて開始地点の戻ってもモンスターの配置がリセットされる訳はなかった。


「どうするんですか?」


「いや、包囲されていないなら普通に何とかなるだろ」


 元々、スタート地点にメカエイプは一匹も居なかった。包囲されている状態から追われる様にスタート地点へ帰ってきたなら、必然的にメカエイプの群れは一方方向から来ることになる。


「後はいつも通りだ! 丁寧にな!」


 そう叫びながら、構えを取る。


 モーションを覚える、隙を探す。行動パターンを把握して、先回りしていく。1つ1つ、有利な要素を積み上げていく。


「ウッキャァアア!」


 数分後には、縦横無尽(じゅうおうむじん)に薙刀と九環刀を振り回すメカエイプの一匹を叩き潰した。


「よぉし!」


 まだ緊張を解くわけにはいかない。さっと周囲を確認する。ブルーバロンの面々はまだ他のメカエイプと戦っていた。


 一緒に来ていたシュクレ教の人たちはその後方からチビチビと魔法を撃って援護しくれている。1体1で戦っている所は放置で、乱戦状態になっている場所からメカエイプを2体引き離す。







「ゴングマンさんは、どうしてメメントモリに入ったんですか?」


 追ってきたメカエイプを全員返り討ちにして一息ついた頃、ブルーバロンの1人が話しかけてきた。


「あの演説は知っているか?」


「演説?」


 あの日の事を思い出す様に空を見上げる。空には黒く分厚い雲が重くのしかかっていた。


 脳裏には、あの日の彼女の言葉が蘇る。彼女は自分自身を(さら)け出し、傍若無人(ぼうじゃくぶじん)に好き放題やると宣言した。その上で、俺たちにも好きにやろうと言った。


「アニーちゃんはさ、頭おかしいんだよ」


「え、あっはい」


 ブルーバロンの男が"何を今更、当然のことを?"といった表情で首を傾げる。まぁ、その通りだけど、ちょっと笑ってしまう。


「俺は割と力の意味とか使い方とか、色々考えちゃうんだけどさ、アニーちゃんにはそう言うの、何にも無いんだ。ただただ、好きなことを、好きなように、好きなだけやる……力の塊り」


 アニーちゃんは俺と同じ、風間流の技を扱う人間だ。面と向かって戦ったのは1回だけだけど、見ているだけでも伝わってくる物がある。


 彼女が心に抱えている閉塞感や、息苦しさ。誰にも理解されず、本質的には一生、満たされる事の無い欲求。それが先天性の物なのか後天性の物なのかは分からない。


 アニーちゃんはこの世界で最も自由に見えるが、実は最も不自由な存在かもしれない。


「それはちょっとわかります。今の社会は平和で、それはきっと良いこと何ですけど……」


 ブルーバロンの男は言葉を探す用に一度目を伏せ、言葉を区切ってから再び話し始めた。


「ルールに縛られすぎて、見えない壁を感じます。アニーちゃんはその自分の中にある壁をぶっ壊してくれる気がするんです」


「そうだな、その気持ちは俺にも分かるよ。俺は、見てみたくなったんだ」


「アニーちゃんの活躍を?」


「いや、言葉にするのが難しいんだが……闘技場でアニーちゃんと戦って負けて、あの演説を聞いた日、アニーちゃんの持つ力と可能性の行き着く先が見てみたくなった、かな?」


 俺の返事にブルーバロンの男がちょっと笑う。


「ロマンチストですね」


「うるせぇ!」


 俺は男の肩をちょっと照れながら軽くこづいた。


「でもアニーちゃん、最近ちょっと変わってきましたよね」


 俺は目を細めながら尋ねた。


「お、分かるか?」


 俺の強さは、積み上げていく強さだ。


 対して……アニーちゃんの強さは、削っていく強さ。自分自身から勝利に不要な物を剥がしていき、より自分を捨てた方が勝つと言う世界観でいる。これまで、誰にも理解されずに、孤独の中で培われた強さだ。


「今までは付いて来たいなら勝手に付いてくれば? って感じで俺達がどうなっても視界にすら入ってないって感じでしたけど、最近は一応、こっちも気にかけてくれているって言うか」


 その変化は、ある意味でアニーちゃんの強さを捨てる変化なのだろう。だけど、悪い変化では無い気がした。


 戦いを見ていても、今までは好き放題やっているだけだった彼女の中に、何か意味が生まれ始めている気がする。


 俺はブルーバロンの男の言葉に頷いて、ニヤリと笑った。


「見ていてワクワクしないか? あれだけの力が、これからどこへ向かって、何を引き起こすのか」


「俺には見守る事しかできないですけど、俺はアニーちゃんにはずっと楽しそうにこのゲームを遊んでいて欲しいです」


「それは俺だって同じだよ。ま、お互いにできる範囲で支えてやろうじゃ無いか」


 そう言って、俺はブルーバロンの男へ向かって軽く拳を伸ばした。彼はそれをみて笑みを浮かべて、お互いの拳をぶつける。


「よーし! ダンジョンの攻略を再開するぞー!」


「おー!」

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