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工業地帯奪還作戦

 だいたい一週間後、今日はシティ・リビルド・チャレンジの2ndフェイズ、工業地帯の奪還イベントの日だ。


 半ば廃墟と化した剛輪禍の中央部分に、私たち"メメント・モリ"のメンバーが集結していた。今では総勢400名を超える幻夢境街で最大規模のクランになっている。まぁ規模が大きいのに統率とかの概念が存在しないからこの手のイベントだと大体デバフ喰らってるんだけど。


「……そろそろだね」


 私たちはそれぞれ10つのゲートの前に(たむ)ろしている。頭上には赤いタイマーが動いていて、イベントの開始が間近である事を告げていた。


*「皆ー! 一応、作戦の確認をするぞー!」*


 クランチャットで呼びかけると、メンバーが各々、思い思いに答えた。誰が誰とか殆ど分かってないけど、ふんわりとした愛着みたいなのは感じる。


*「最高難易度のダンジョンは私、シュクレ、ゴングマンさん、ムエルケちゃんを中心とした4つの上位プレイヤーを中心に攻略する」*


*「ずるいぞー!」*


*「俺たちもまぜろー!」*


 一部のプレイヤーから不満の声が上がる。まぁ本気で不満と言うより、いつもの軽口に近いけど。


*「本当に来たければ好きに来てくれても良いけど邪魔ならキルするしピンチでも普通に見捨てるからそのつもりでヨロ」*


*「諦めたぞー!」*


*「それでも俺はいくぞー!」*


*「お前をキルしても良いのかー!」*


*「私をキルしたい人はいつも通り好きにしていて良いぞー」*


「おらぁああ!!」


 チャットで返事をした直後、背後からメメントモリのメンバーが私へ向かって剣を振り下ろしてくる。


「それはもう、見た」


 私は振り向かず、そのまま背後へ腕を伸ばして剣をつまむ様に押さえる。決死の覚悟で攻撃するなら切り付けるんじゃなくて突き刺そう。


「なんっ」


「えーい」


 そのまま指の力で剣を奪い取り、振り返りながら投げつける。驚きの表情を浮かべるプレイヤーへ剣は高速で回転しながら飛んで行き、彼の体を両断した。


*「他のエリアは各自が自分のレベルに合った場所を適当に選んでねー、近いエリアで取ってるから終わったら他のエリアに行くのも自由だよー」*


 私を背後から攻撃してきたプレイヤーに関しては割といつもの事だから特に言及する事もなく、そのまま話を続ける。


*「それじゃ皆、楽しむぞー!」*


*「おぉー!」*


 クランチャットが流れる中、頭上のカウントダウンが0へと変わる。ゲートから発行するリングが現れて、私たちを包み込んだ。









 一瞬の暗転の後、一気に視界が開ける。


 ビュウビュウと吹き抜ける風が、煉瓦造りの建物と、木と鉄で組まれた機械類を通り抜け、黒く汚れた川へ拭きつけていた。


 まず目に映るのは、巨大な煉瓦造りの工場群だ。窓ガラスは殆どなく、窓枠からは、機械の音がガタガタと響いてくる。


「うーん、とりあえず兵士班! 建物とモンスターの配置、侵攻がしやすいそうなルート可能な限り調べてきてー」


 私の率いるメンバーは主に三種類へ分類できる。


「イエス! マム!」


 私の言葉に、敬礼で答えた暗い紺色の軽装鎧に身を包んだ一団が"兵士"部隊だ。彼らは私が過去にした演説? に感銘(かんめい)? を受けてメメントモリへ参加したRP(ロールプレイ)民のプレイヤー達だ。


 その後も私の指揮? を気に入ったらしく、ちゃんと言うことを聞いてくれる。戦力としてみればトップ陣には及ばないけど"言うことを聞いてくれる"って点がメメントモリにおいて稀有で有用な才能と化していた。


「俺たちはどうしたら良い?」


 次に、艶消しのされた黒い鎧に身を包んだ男が代表して声をかけてくる。彼らは殆どPKをする為にゲームへログインしている犯罪者予備軍だ。


 メメントモリは誰もが自由にやりたい事をやる為のクランだよって説明を"要はPKクランだな?"って解釈した認知の歪んでいる現代社会の闇が生み出した悲しき獣の集団である。


 同じクランの仲間を知らずにキルしない様に、彼らは鎧の右肩を赤く塗っていた。それに因んで"レッドバロン"と呼ばれている。


 曰く、赤い右肩を見たら逃げろ、だとか。そして赤い両肩を見たら諦めろ、とも言われているらしい。これ、完全に偶々なんだけど私の鎧って両肩が赤いんだけど関係ないよね?


「とりあえず、ここを簡易拠点にしようかな? シュクレ教の人たちも手伝ってー!」


 最後に声をかけたのが、フォートシュロフと幻夢境街に詠唱革命を起こしたプレイヤー、シュクレを信奉するプレイヤー達だ。


「はいよー。どんな感じに建てるんだ?」


 シュクレの魔法スキルを一切取らずに自力で詠唱して魔法を発動させる代わりにステータスは全部魔法攻撃アップに注ぎ込むと言うスタイルは第1回イベントでフォートシュロフを救う大きな原動力となった。


 そんな彼女のスタイルをリスペクトし、彼女に詠唱を教わる事と引き換えに言うことを聞いてくれる。

 彼らはメメントモリにおいて非常に数が多いので、上位プレイヤーは4部隊それぞれに均等分配していた。


「まあーとりあえず塀があれば良い」


「まかせろー」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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