無慈悲なタイプのJK
「う、撃て……」
「おそーい!」
プレイヤーの1人がライフルを構えて引き金を引こうとする。私は一歩で彼の眼前まで移動して、銃口を掴んで上へ向けた。
「やっぱり、近接戦闘を想定したスキルはあまり取って無いみたいだね?」
「や、やめ……!」
「キヒヒッ……パイルバンカー!」
私はもう片方の手でプレイヤーの頭を掴み、スキルを発動する。魔力で構成されたパイルが手の平から打ち出され、彼の頭部を粉砕した。
「ひぃ!」
「おらぁあ!」
怯えた様子で私から逃れようとプレイヤーが走り出す。それを私と一緒に乗り込んできたメメントモリのメンバーが背後から斬りつける。
無抵抗の相手でも容赦なく攻撃するその姿勢、流石は私のクランメンバーだ。道徳とか騎士道精神とか何処に置いて来ちゃったんだろうね。私はお母様のお腹の中に置いて来ちゃったんだろうけど。
「さっきはよくも一方的に攻撃してくれたね、今度は私たちの番だよ!」
「ヒャッハー!」
「逃げる奴は蛆虫だ! 向かってくる奴はよく訓練された蛆虫だ!」
「うわぁぁぁあああ!!」
立ち向かうプレイヤー、逃げ惑うプレイヤー。区別なく、次々とメメントモリのメンバーが蹂躙していく。ぶっちゃけ飛び降りに成功したのは半数ぐらいで、数的有利は相手にあるんだけど個々の力量差がそれを覆していた。
「そこまでだ!」
バァン! 銃声が響き、肩に衝撃が走る。体力ゲージがチロリと削れたのを確認して、射線の方へ視線を向けた。
「ふーん」
ニヤリ、と思わず上がってしまう口角を何とか抑えつつ、眼前に映し出されたプレイヤーを観察する。
身長は160cm前後で、シャープな体に軍服を彷彿とさせる黒色の装束を身につけていた。彼女の左手には拳銃が握られいて、私の方へ向けられている。それとは対照的に、右手には日本刀の様な刃物が携えられていた。
「拳銃も作ってたんだ?」
私の質問に、拳銃を構えた女性が答える。
「まだ試作段階だけどね」
周囲のプレイヤーとは次元の違う相手だと、あらゆる感覚が伝えてくる。蒸気機関車の振動と駆け抜ける風が彼女の足元と髪をなびかせるものの、彼女の姿勢は全く崩れることがなかった。
「キャハ!」
バァン! 再び、彼女の拳銃が火を噴く。引き金が弾かれるより一瞬早く、私は移動を開始する。弾頭が顔の真横を通り抜ける風圧を感じながら、彼女の元へと突撃する。
「そこ!」
私が移動した先に、待ち構える様に振るわれた日本刀がキラリと煌めく。私はそこへ捩じ切る様に右腕を突き出した。
「なんっ……!」
久々の登場、風間流裏秘技其乃六……白刃流し。インパクトの瞬間に拳の回転ベクトルによって刃の腹を弾き、切先を逸らしつつ拳を繰り出す攻防一体のカウンター攻撃だ。
「これが、暴君……!」
私の右腕は彼女の顎を掴み上げる。
「パイルバンカー!」
発声によってスキルが発動し、魔力によって構成された釘が拳銃と日本刀を携えたプレイヤーの頭部を破壊する。系が切れた人形の様に彼女の全身から力が抜けて両腕がダラリと垂れ下がった。
それを列車の外へ投げ捨てる。
「さて、と……」
周囲を見渡すと、私に付いて来た悪逆非道のクランメンバー達が一方的なPKを繰り広げていた。
*「帰りたい人は一緒に帰るぞー! この場で好き放題したい人はそのまま残ってよーし!」*
私がクランチャットで呼びかけると、各々が返事を返して来た。残りたい人、帰れると思って来ていない人、私の内心を察している人、様々だ。
*「俺はここに残るぞー!」*
*「えっこれ帰れるの!?」*
*「どう考えてもお前以外は帰れる訳ないだろ馬鹿!」*
*「面白そうだし俺は一緒に帰るぞー!」*
帰る前に、この機関車を完全に壊しておこう。私は屋上から降りて動力炉がある車両へと入る。
やっぱり、配置や構造は同じみたいだね。
「「セット・リボルビングパイル」」
発声をキーにスキルが発動して、トリガーの付いたトンファーの様な形状をしたパイルバンカーが生成される。射出機構の後方にはリボルバー式拳銃のシリンダーの様なパーツが付いていた。
トリガーを引く事でシリンダー内部に生成されたパイルが射出され、一々スキルの発声をしなくても釘打ち攻撃ができる。
「フル・バースト!」
次の始動キーによってパイルバンカーが変形する。後方にあったシリンダーが前方へ競り上がり、固定された。"フル・バースト"は合計12本のパイルを同時に発射するモードだ。
腕を突き出すと同時に両腕のトリガーを引く。12本のパイルが動力炉へ深々と突き刺さり、その構造に決定的な破滅をもたらす。
*「ゴングマンさん! 車両の切り離し始めてー!」*
一瞬、体が前に押し出される様な感覚を覚える。機関車の速度が一気に低下するのを感じながら、クランメンバーの中で数少ない"ちゃんとお願いを遂行してくれる確証がある人"に声をかける。
*「おう、任せろ!」*
チャット欄から返事と共に、ゴングマンさんを彷彿とさせる様な筋肉隆々スキンヘットの男性がサムズアップしているスタンプが送られて来たのを確認して、私は再び屋上に戻った。
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