裏切られるタイプのJK
「あ、あの……」
「うん? どうしたの?」
クダンちゃんが不安そうな様子で小さく手を上げた。まあ彼女はいつでも不安そうにしているんだけれども。
「何か、変な感じがします」
「変な感じ?」
ヨイニの言葉に、クダンちゃんは視線を上の方へ向ける。私たちが入ってきた位置は遥か上空で、ここからでは真っ暗な空間に大きな配管パイプが無数に張り巡らされている様子しか写らない。
「ザワザワする感じがします」
これまたファジーな回答が返ってくる。
「うーん……ん?」
ヨイニと2人して頭を傾げながら、クダンちゃんが言う違和感の原因について考えを巡らせる。
そういえばダンジョン攻略中は邪魔だからクランチャットの通知を切っていたのを思い出して確認してみる。チャットウィンドウを埋め尽くすぐらい大量のメンションが飛びまくっていた。
「ヨイニ」
「うん」
私が気がついたのと同じぐらいのタイミングで、ヨイニも自体を把握し、静かに頷いた。
「どうしたっすか?」
状況を把握する為にクランチャットを最初にメンションがついた時間あたりから読みながらムエルケちゃんの質問に答える。
「PK撲滅連合が裏切った」
私たちのクランがプレイヤーとモンスターを一掃して疲弊したタイミングを見計らって各門を守っていたPK撲滅連合のプレイヤーが反転して背後から襲いかかったらしい。
私たちに比べてPK撲滅連合のメンバーはプレイヤースキルが高くはない。それでもリソースを使い切ったタイミングで背後から倍以上の数で組織的に襲われれば支えられる道理は無い。
「んーーー」
頭を抱えながら周辺をクルクルと歩き回る。私が指揮をして迎え打てる状況ならまだやりようは有った。
だけど今私は地の底だし、もうエターナルシア占領作戦に参加していたメメントモリのメンバーはほとんど狩尽くされている。
「最悪のタイミング……どっから、どっから計画していたのかな」
私の呻きにヨイニが答えた。
「最初からチャンスがあれば仕掛けるつもりだったんだろうね。僕も、まさか自治を標榜するクランがエターナルシア遺跡の完全自治を捨ててまで裏切るなんて思わなかったよ」
ヨイニの言葉にシュクレちゃんが石碑を見上げながら呟く。
「今、私たちがPKされたらこの石碑の存在が彼らにも露見することになりますね」
「せっかく苦労して倒したのに、後から来た奴にご褒美だけ取られるのは癪っすね」
シュクレちゃんの言葉にムエルケちゃんが応じて、その会話に混じる様に私は素直な感想を口にする。
「そもそも私たち、ゴリゴリの本気装備だしこれが取られるのも嫌だー!」
私の魂の叫びにヨイニがちょっと笑って答える。
「あはは、普段PKでプレイヤーから装備奪ってるのにね」
「私がやる分には良いの! と言うかヨイニもその鎧と盾取られたら困るじゃん! もう万年寒鉄は無いんだからね!」
私とヨイニの装備に使われている素材は長い年月、極寒の地で風雨によって鍛えられたと言う設定の希少金属だ。おそらくドロップ確率どうこうの次元ではなく、この世界に固有で分布している類のアイテム。
この金属と熟練した職人によって作られた私達の装備は、サービス開始序盤の現環境においては破格の性能を誇っている。
つまり!! 絶対に!!! 奪われたく無い!!!!!
私の反応にヨイニが周囲を見渡した。
「奪われたく無い装備は今の内に隠しておく?」
「うーん、普通に見つけられる可能性があるし、もう1回、ここまで突入できるだけの戦力を集められるか判らないからそれは最終手段かな」
「今から超特急で横道を探して、連中が横道を見つけない事を祈るのはどうっすか?」
ムエルケちゃんが手を上げて意見を投げかける。だけどそれじゃ件ちゃんによって即座に否定された。
「む、無理です……もう」
クダンちゃんはそう言って視線を上へ向ける。ちょっと前までは何も聞こえていなかったけど、今は明確に上の方で膨大な数の足音が響いている。
ヨイニが悩ましげに呟いた。
「ここは大人数で攻略するのには向かないけど、僕たちが丁寧に倒しちゃったからね……」
「多少は残っているモンスターもいるだろうけど、何せ数が数だからなー」
「いたぞ!」
上の方から知らないプレイヤーの怒声が響く。その言葉に続いき、次から次へとプレイヤーとダメージエフェクトを迸らせたモンスターの死骸が落下してくる。
「アニー! 何か作戦はある?」
「各自がんばーる!」
「了解!」
私の号令で各自が動き出す。
私とヨイニ以外は人生に作用するレベルの時間をこのゲームに費やしている様なメンバーだ。明確な作戦が無い以上、各自が考えて最適なフォーメーションを組んだ方が良い。
「シュクレちゃんは僕の後ろに!」
「は、はいっ!」
「か、囲まれる前に陣営の背後を壁にしましょう! 左右からの攻撃は私が対応します!」
「りょーかーいー!」
先に降りてきたプレイヤーが私達へ襲いかかる。
「うおぉりゃああああ!」
「うるさい」
左右の足のつま先と踵を使って半回転、尻尾でプレイヤーの武器を弾き飛ばし、体勢が崩れたところに右ストレートを叩き込む。
一発では倒しきれなかったのでそのまま前転方向に足払いをして倒れ込む顔面へ裏拳を打ち込んだ。
「一撃で倒せないのストレス!」
「普通はみんなそうだからね?」
「師匠の18番にして必殺技、パイルバンカーは使わないっすか?」
「私のスキルは実質的に弾数制限があるから……」
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