パーティ編成をするタイプのJK
「アニー! なんか地下ダンジョンが発見されたらしいよ!」
半透明のウィンドウからフォートシュロフ神聖騎士団の指揮をとっていたヨイニが声を上げる。
メメントモリの指揮はどうしているかって? 私のクランにそんな概念はない。
「お、どのあたり?」
「メメントモリのメンバーが大広場の噴水をぶっ壊したら階段が出てきたらしいよ?」
どうしてその状況で私より先にヨイニへ情報が届くのか。
「よーし、シュクレちゃん。行ってみよう!」
「はい!」
ダンジョン全体の制圧は順調に進んでいて、広間までの移動で一度もモンスターや他のプレイヤーを見る事はない。
やっぱり常に戦いながらの時と比べて格段に探索がやりやすく、未知の通路やアイテムの発見報告が次々に上がってくる。程なくして、粉々に砕けた芸術的な彫像の散らばる広場にたどり着いた。
「おー、ここが……」
廃墟になる前は沢山の人が往来していたであろう広場。その中央にあったであろう噴水が粉々に粉砕されている。瓦礫の奥に、地下へと続く道が現れていた。
「まさかこんな所にあるなんてねー」
「先遣隊がちょっと探索したみたいだけど、文字通りの全滅だって。ここだけ明らかに他のモンスターとレベルが違うみたいね」
それは本当に先遣隊だったのか、もしかして純粋に衝動を抑えられなかっただけでは……?
物は言いようだね。
ダンジョンの奥を覗き込みながら、ヨイニが問いかけた。
「入り口も狭いし、僕たちでパーティを組み直さない?」
「あー、そうだね。私とヨイニと、あとは魔法職、ヒーラー、スカウトは必要かな?」
「あっあの!」
私とヨイニの会話に、シュクレが入ってくる。
「わっ、私もパーティに入れてください!」
「んー」
涙目で見上げるシュクレを見つめながら考えを巡らせる。シュクレちゃんをダンジョン攻略に加えないのには理由がある。
今回のメインは彼女だけど、彼女のダンジョン攻略能力はほぼ無いに等しい。これは彼女の能力というより純粋にビルドの問題だ。
シュクレちゃんビルドの根幹を成す部分は魔法職なのに魔法スキルを一個も取らない部分にある。魔法の発動は全部詠唱で済ませるからリソースを全部他に割けるのが強みだ。
だけどこのビルドは魔法の発動が致命的に遅い上に、MP切れが早すぎる。集団戦では無類の強さを発揮するけど、ダンジョン攻略には向いていない。
大体の場合においてシュクレちゃんが魔法を発動する前に戦いが終わってしまう。パーティに入れておいて経験値を貰ってもらうのは良いけど、一緒に連れて行く理点は無い。
「その……試してみたい詠唱があるんです!」
「あー、なるほどねー」
新しく手に入れたスキルとかって試してみたくなるよね。
「僕も賛成だな」
「ほう、その心は?」
「ダンジョンの中で何か世界観の知識がないと分からないギミックがあったら困るだろ?」
確かに、攻略してから入り口まで戻ってシュクレちゃんをもう一度連れて行くのも面倒ではあるよね。
護衛しながら攻略しなきゃいけなくはなるけど、それは普通に魔法職を連れてきても同じことだし。
「じゃー後はヒーラーとスカウトだね。ヨイニ、心当たりはある?」
「スカウトなら、僕のクランに適任が居るよ。ヒーラーはメメントモリに適任が居るよね?」
「へ?」
「アニー、もしかしてクランメンバー把握してない?」
「うん、ほとんど顔も分かって無いよ」
私の反応にヨイニが額を抑える。
「今日、来ているメメントモリのメンバーにムエルケって子が居るよね?」
ヨイニの言葉にクランメンバーを確認する。
おお、確かに居るね!
ちゃんとレベルも廃ラインだ。
「ムエルケさんー! ご指名が入ったから来てー! 一緒にダンジョン攻略しよー!」
「はぁい! ちょっと待っていてくださいっす!」
数分後、お互いのメンバーが揃った。
「どーも! メメントモリ、一般ヒーラーのムエルケっす!」
最初にムエルケちゃんが快活な挨拶をする。ゆるいカーブのついたセミロングの赤髪少女だ。黒い司祭服をかなり着崩している。
「かの有名な"デッドエンド"のムエルケを一般ヒーラーって言うのは無理があるんじゃ無いかな? フォートシュロフ神聖騎士団のクランマスター、ヨイニだよ」
「同じく、メメントモリのクランマスター、アニーだよ」
「えっと、メメントモリのシュクレです」
「なんでボスと師匠も自己紹介してるんっすか!」
ムエルケちゃんがケラケラ笑ってツッコミを入れる。なんというか、陽キャ感がすごい。
「それにウチのボス"暴君"のアニー・キャノンと師匠"大魔術教授"のシュクレ・ロベルタに比べたら私なんて一般人っすよ」
そういえば、知らない内にシュクレちゃんにも通りな的なのが浸透してたんだよね。
次はヨイニが切り出した。
「じゃあ、次はこっちの番だな」
ヨイニはそう言ってヒョイっと体を動かす。すると、彼女の背中から一瞬だけ人の姿が現れ、すぐに隠れた。
「おいおい、忍者じゃないんだから」
その様子にヨイニが苦笑いを浮かべる。彼女は後を振り向いて何かを捕まえて私たちの前に差し出した。
「フォートシュロフ神聖騎士団、お庭番衆、筆頭のクダンちゃんだ」
えっじゃあ忍者じゃん。
シュクレちゃん級の低身長で、見るからに忍者と言った風体、黒髪を短いボブカットにした女の子が突き出される。
「あうぅぅぅうう」
両手で顔を隠していて表情はわからないけど、耳まで真っ赤になっている。
「とりあえずヨイニ、突っ込んで良い?」
「それはセンシティブな意味で?」
「ちーがーうー!」
がるるる。
パイルバンカーを打ち込んでやろうか。
あっ深い意味は無いよ!?
「なんで騎士団にお庭番衆があるの?」
「なんかその場の流れで?」
まあ、ゲームだしそんなものか。
メメントモリにも作ろうかな?
「なんかすごい恥ずかしがってるけど大丈夫なの?」
「ちょっと奇行は多いけど、実力に関しては保証するよ」
「まあ、ヨイニが言うなら信じよう! じゃあこれでフルメンバーだね」
ここまでお読みいただき誠にありがとうございます!
是非ともブックマークして頂けたら嬉しいです。もしも面白いと感じて、この作品を選んで頂けたらこれほど励みになることはありません。
もしよろしければ、もう少しだけ下の方にスクロールしていただき、★のマークを押していただけると嬉しいです。





