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昨日の敵は明日の宿敵なタイプのJK

 シュクレちゃんの要望を満たすのに、いくらなんで私1人じゃ無理だ。とりあえずはクラン内でメンバーを募集しよう。


「これからエターナルシア遺跡の攻略に行くんだけど行くひとー!」


「暇だから行くぞー!」


「対人はあるかー!」


「PKはできるかー!」


「師匠の為ならどこまでもー!」


 酔狂(すいきょう)暇人(ひまじん)が30人ぐらい。シュクレちゃん教の人々が20人ぐらい。


「多分探索がメインだぞー!」


「なら行かないー」


「自由にせよー」


 全ての呼びかけが対人戦かPKの呼びかけに聞こえる末期患者が20人。うーん、総勢70名か。組織的に動かせる数としてみれば結構多いけど、街を占拠する数としては心許ない。


「シュクレちゃん、他のクランの人も誘って良い?」


「え、はい、もちろん……」


 一応、発起人のシュクレちゃんに確認をとって、フレンドチャットの一番上に表示されたプレイヤーへチャットを送る。


「もしもし、ヨイニー」


「アニー! どうした?」


「今からエターナルシア遺跡を占拠しない?」


 ヨイニがクランマスターを務めるフォートシュロフ神聖騎士団はダンジョン攻略がメインのクランだ。戦力的な意味以上に、そのノウハウは今回の作戦において必須と言っても良い。


「面白そうだね! あそこは治安が悪すぎて僕達も攻略が進んでなかったんだよね。クラン同士の協力って事で良い?」


「そんな感じ!」


「分かった。とりあえず行けるメンバー集めて向かうよ! 30分後にダンジョン前集合で良い?」


「ありがとぅー!」


 ヨイニとのフレンドチャットを終えてクランチャットに切り替える。


「皆のものー! 今作戦はフォートシュロフ神聖騎士団との共同作戦となった! 20分後にエターナルシア遺跡前へ集合せよー!」


「アニーさん、ありがとうございます……!」


「良いって事よー! じゃ、私たちも準備はじめちゃおうー!」







 エターナルシア遺跡前の街道に両クランメンバーが揃う。総数は良く分からないけど多分100人ちょっとぐらいかな?


「ヨイニ、お待たせー!」


「アニー、随分大所帯だな」


 手を出したヨイニへ背を伸ばしてハイタッチ。


「ちなみに、攻略の目的は?」


「特に無いよ? 強いて言えば壁画とかを隈なく見てスクショ撮ったり?」


「で、本当のところは?」


「シュクレちゃんがここに新しい詠唱の秘密があるかもって」


「より具体的には?」


「なんのことかなー?」


「アニーがPKよりダンジョン攻略を優先するって事はそれなりの物があるんでしょ?」


「ぐぬぬ」


 この彼女、彼女への解像度が高すぎる。


「……ヘイストだってさ」


「あー、程度にもよるだろうけど、実現すれば必須スキルの仲間入りだね」


 ヨイニが笑って私の頭へ手を乗せてくる。

 ぐぬぬ身長差。


「あっあの! よろしくお願いします!」


 私の後ろからシュクレが挨拶する。


「シュクレちゃん、具体的にどのあたりとかある?」


「街が健全な状態だと確認できないような場所が怪しいです」


 シュクレちゃんの言葉に、ヨイニが頷いて答える。


「フォートシュロフでもNPCに守られている様な教会や王城の一部エリアがあるよね」


「システム的に制限されている訳じゃないから、フォートシュロフも確認できるけどね」


「アニー、ダメだからね?」


 頭にヨイニの軽いチョップが落ちてくる。私はチョップされた部分を両手で抑えながら頬を膨らませて反論した。


「流石の私も後々が面倒そうだってことぐらいはわかる」


「で、具体的にどうするかだけど……」


 ヨイニが私の頭を片手で撫でながらテーブルと地図を取り出してその場へ広げる。地図にはエターナルシア周辺の地形が描かれていた。


「PT機能の最大数は8人だから、僕たちの数で各個撃破すれば内部のプレイヤーを殲滅(せんめつ)するのは可能だね」


 ヨイニが地図へ視線を落としながら状況を分析する。私も彼女の広げた地図を眺めながら思考を巡らせた。


「でもプレイヤーは次々にダンジョンへ入ってきちゃうもんねー」


「そうだね。ダンジョンの入り口封鎖は必要かな」


「ダンジョンの入り口封鎖って心象悪そうだし、やるならメメントモリだけど……」


 エターナルシア遺跡への入り口は西門、南門、それと東門の合計三ヶ所だ。均等に配置すると各門25人ぐらいになる。これは3〜4PTぐらいが一斉に侵入しようとしたら決壊する数だ。


 クランチャットで呼びかけてみる。


「ちな、門の封鎖やっても良いって人はどれぐらいいるー?」


「いーやーだー!」


「やっても良いぞー!」


「後で教授の授業が受けられるなら!!」


 心優しい人が5〜6人、シュクレちゃん狂信者が20人。あとは全部、エターナルシアで自由にやりたい人々だ。

 まるでお話にならない。


「大体25人ぐらいはやってくれるって」


 アンケート結果をヨイニへ伝えると彼女は腕を組んで考える。


「まあ、そうなるよね」


「何でゲームの中で門の警備しなきゃならないんだって話だからねー」


 メメントモリと違って統率の取れているフォートシュロフ神聖騎士団なら皆お願いを聞いてくれるだろうけど、そもそもの母数に大きな隔たりがある。


「完全占拠は諦めて、それらしい施設に絞って攻略するのが現実的かもね」


「何処かに嫌われ役を喜んでやってくれてかつ報酬を要求しない100人以上のプレイヤーを動員できるクランは無いかなー」


「あはは、そんな都合の良いクランあるわけ……」


「あっ」


 ヨイニの言葉を聞いている間に名案が頭を過って思わず声が漏れた。その様子に彼女が驚いた様子でこっちに振り返る。


「え嘘、思い当たる節があるの?」


「あるっちゃある。しかも多分すぐ近くに居る」


 半透明のウィンドウを操作してSNSから見覚えのあるアカウントを見つける。プロフィールからユーザIDを確認して試しにチャットを送ってみた。


「もしもーし! 今ってエターナルシアに居たりしない? いやいつもこの時間帯はいるし居るよね?」


「おい、どう言う神経してやがる!!!」


「エターナルシアの現状を一撃で解決する上に分かりやすい実績を残せる話しがあるんだけどちょっと南門近くの街道まで出てきてくれない?」


「とか言って誘き出してPKする気じゃ無いだろうな!」


「心配なら何人連れてきても良いよ」


「……ちょっと待ってろ」


 よーし、話しは付いた。


「すぐ来てくれるってさ」


「誰に連絡取ってたの?」


「PK反対連合改め、PK撲滅連合のクランマスター」


こっそり割り込み投稿

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