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パワーでゴリ押すタイプのJK

「ふぅーなんとかなった!」


 私は満足して別に垂れてはいない額の汗を腕で拭うポーズをとった。よしよし、これで安心だ。


「あ、あの……」


 シュクレちゃんがオズオズと言った様子で私の方をツンツンと突いてくる。どうしたんだろう?


「なーにー?」


「このままだと天使像が破壊されちゃいます……」


 シュクレちゃんの言葉がすぐには理解できず、ちょっと考える。はて、彼女は何を言っているのだろう?


「あぁぁああそうだったぁぁあーー!!」


 私は思わず頭を抱えて空へ向かって大きく吠える。別にカタンさんを論破した所で、メメントモリの天使像が破壊寸前なのは何も変わっていない。要は彼のカリスマ折り攻撃を退けただけだ。


「アニーちゃん!」


 悩んでいると、上空からシマーズさんの声が聞こえてくる。空を見上げれば、彼が白いドラゴンに乗って拠点の前に降り立った。


「シマーズさん! どうしたの?」


「ま、配信者としてこの状況を実況しなきゃ嘘だろ?」


「もしかして私を配信のネタに使っていない?」


「よしじゃぁ帰ろうか」


 私が半眼で睨むと、シマーズさんは降りたはずのドラゴンにまた乗り込もうとする。私はそれを慌てて止めた。


「あーまってまって! 配信でもなんでもして良いから! その子を連れて行かないで!」


「シャガファルク、な」


 シマーズさんがそう言って白いドラゴン、シャガファルクの方を親指で指し示す。カドル程ではないけれど、この子も可愛い。


「アニーさん、もう一匹くるみたいです!」


 クランチャットを確認していたシュクレちゃんが声を上げる。およ、このタイミングまで出てこないって事はPK反対連合にはドラゴンがいないと思っていたけど、出し惜しみしていたのかな?


「アニー! ……俺だ! 撃たないでくれよー!」


 全体チャットにヨイニの名前が表示される。え、なんで? 周辺にフォートシュロフ神聖騎士団の領土は無かったはずだけど……。


「よっ!」


 ヨイニの黒い青色をしたドラゴンが拠点の前に着陸する。彼女ははにかむ様な笑顔を浮かべながら軽く片手を上げた。


「ヨイニ! どうして?」


 その答えはヨイニからではなく、シマーズさんから返された。彼はサムズアップをして聞き覚えのあるフレーズを口にする。


「トヨキンTV、よろしく!」


「おーまーえーかー!」


 これまた、いつかに聞き覚えがあるフレーズと態度で返す。あれ……そう言えば疑問だったんだけど……。


「IAFがプレイ中に外部SNSを使えるのは知っているけど、思考加速中のライブ配信って成立しなくない?」


「IAFにはゲーム内配信サービスがあるんだぜ? 録画映像は後で外部SNSでも公開するけどな。そうじゃなかったらアニーちゃんのステータスにモザイクかけるとかできないだろ?」


 今度はヨイニが私へ質問を投げかける。


「それでアニー、これはなんとかなるのか?」


「へっへっへ、ドラゴンが2機もあればなんとかなるよ!」


 私は自慢げに宣言して、クランチャットを開く。


「遠距離攻撃が得意な人、集まれー!」






 

「よーしよし、それじゃそろそろ……反撃の時間だね」


 1時間後、なんとか守り切った戦線を見てニヤリと笑みを浮かべる。やった事はほとんどさっきと同じ事で、ドラゴンに遠距離攻撃ができるプレイヤーを乗せた即席の爆撃作戦だ。

 最高の機動力を持つシマーズさんのシャガルファルクと、最高の範囲攻撃力を持つシュクレちゃんの組み合わせはこの世に戦争の神が顕現(けんげん)したかの如く地上に地獄を作り上げた。

 ヨイニの連れてきたドラゴン、グラレウスはちょうどカドルとシャガルファルクの間ぐらいの性能だった。こっちもシュクレ流魔術師を何人も乗せて、存分に無双してくれた。


「爆撃機は撤退せよー! 他は総員、好きに戦ってよーし!!」


「っておぉおおい!」


「作戦は無いのかー!」


「皆で集まってごー! 以上!!」


 情報がダダ漏れの状況で下手に戦術をこねくり回すぐらいなら、シンプルにパワーでぶつかった方がずっとマシだ。

 それに今回はこれで勝てる。


「皆が行かないなら私は1人でも行くぞー!」


 もうチャットも面倒なのでそのまま突っ込む。


「おらぁ!」


「うぉぉぉおおおお!! 俺たちも行くぞー!」


「このままだと"暴君"に獲物を全部取られちまうぞー!」







 進行スピードを優先して縦長に伸びきり、爆撃機作戦でボコボコになったPK反対連合と、拠点間近という立地で準備万端にして突撃したメメントモリ。結果は火を見るよりも明らかだ。数時間も経たない内に、メメントモリへ侵攻していたプレイヤー達は粉砕された。


「ちくしょう!! どうしてだ!!!」


 目の前にいる筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)で赤髪短髪のプレイヤーがPK反対連合のクランマスターだ。


「えーっと、どこから?」


「途中まで、完全に俺たちが押していたじゃないか!」


「でもその分、陣形が縦に伸び切ってたじゃん? 対してこっちは本拠地近くで横陣を作ったんだから、そこから無秩序に特攻しても余程の事が無ければ先端から包囲して行って鏖殺(おうさつ)の陣形になるじゃん?」


 そもそもなんでクラン同士で領土戦になるかって、その領土でリスポーンするモンスターのポイントを独占するため。

 だけどそれは、プレイヤーがキルされたり、天使像が破壊されてポイントを奪われる事に比べればずっとローコストだ。だから私は、一時的に領土は捨ててプレイヤーの集結を優先した。


「そもそも、プレイヤーの質でこっちが勝ってたしね」


「なんっ……」


「好きな事をやるのって、誰かを、何かを否定するよりずっと大変な事なんだよ」


「そ、それがどうした!」


「対等に勝負をすれば、誰かを否定してばっかりの人に自分の好きな事に夢中な人が負ける訳ないじゃん」


「だぁぁぁまぁぁれぇぇぇえええ!!!」


 PK反対連合のクランマスターが巨大なハンマーで殴りかかってくる。私はそれを棒立ちのまま、裏拳で粉砕する。

 そのまま無造作に半歩前に出て、彼の頭部を掴む。


「ば、化け物……!」


「パイルバンカー!」

 ここまでお読みいただき誠にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 自分が異常者であると積極的に認めるスタイル つ お い 取り敢えず殴り合って勝った方が正しくなるのが人類の歴史なんやで……
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