おにぎりとお味噌汁、それこそが至高なタイプのJK
今日は喫茶店dreamerでシュクレちゃんとクランの運営会議だ。ついでに今、巷で有名な号泣辣子鶏定食も一緒に出して上げる。
「アニーさん、話は変わるんですけど……」
「なぁに?」
「今度は、アニーさんの好きな料理も食べてみたいです」
「ほえ?」
「この辣子鶏定食は、アニーさんが私のことだけを考えて作ってくれた物ですよね? 私は料理には詳しくないですけど、それはわかります」
シマーズさんの配信が結構バズってなぜか他のプレイヤーにも人気だけど、この辣子鶏定食は純度100%、シュクレちゃんの為だけに考えた料理だ。
「うん、そのつもりだったよ?」
「だから、今度は私の為だけじゃなくって……アニーさんが好きな料理を食べてみたいなって思ったんです」
「……」
「アニーさん?」
黙っていると、シュクレちゃんが首を傾げて私の方を覗き込んできた。
「……考えたことなかった」
「へ?」
私にとって料理は、そう言う物じゃなかったから。
「私が、好きな料理……」
私が好きな料理。
私が好きな物。
「シュクレちゃん、好きってどんな感じ?」
「えっ? そうですね……何も考えていない時に、パッと思い浮かぶ物、じゃないですか?」
「……そっか、ちょっとやってみるね!」
テクテクと調理場に移動した。心の中から打算的な都合とか損得とかそう言う余計な思考を全て排除する。
「ふぅーー」
作り終わって、テクテクと歩いてシュクレの待つテーブルへ帰ってくる。彼女は丁度、辣子鶏定食を食べ終わったところだ。
「こんなんできた」
アイテムボックスから料理を取り出す。
「これは……おにぎりとお味噌汁?」
「うん、具材は昆布と鮭」
「じゃあ、いただきます!」
シュクレがおにぎりをパクリ。
もぐもぐ、お味噌汁をごくり。
「えへへー、優しくて美味しいです!」
「そっか、良かった」
嬉しそうにしているシュクレの頭を撫でる。なんだか、自分の好きな物が他の人から肯定されるのって、嬉しいね。
「アニーさんは、どうしてこのお料理が好きなんですか?」
「これはね、小学生の頃、ヨイニが作ってくれた料理なんだ。私が初めて料理を作ろうと思ったきっかけの料理」
「アニーさんって、ヨイニさんが好きなんですか?」
「うぐっっごほっゴホッ」
唐突な言葉の右ストレートが飛んできた。
今その言葉は私に効く。
「アニーさん!?」
「あっごめん、何でもない。でも、ありがとう」
「え?」
「シュクレちゃんのおかげで、クランの件……ちょっと整理がついた」
「えっ今の流れでですか?」
「うん。じゃ、ちょっと闘技場行ってくる!」
「あっ行ってらっしゃい……」
闘技場の戦闘エリアへ転送させる。
「赤コォナァー! 全戦圧勝! この闘技場に突如として舞い降りた殺戮の権化! "暴君"アニィィィ! キャノォォォォオオオオン!!!」
今日の実況者は特に熱気を帯びていて、その声が闘技場を揺らす。
「暴君ー!!」
「がんばれー!」
「装備返せー!!」
「伝説を作ってくれー!!!」
観客からも応援と罵声が沢山飛んでくる。
「青コォナァアー!! 連戦連勝! この闘技場の頂点!! "鉄拳"ゴングマァァァァアアアアアンン!!!!」
実況の声に合わせて、反対側から大柄スキンヘッドの男性が転送される。彼の体には、高いステータスアップ効果の装飾品がジャラジャラと付いている。だけど、鎧の類は見当たらない。唯一それらしいのは、両腕につけられた重厚なガントレットだけだ。
「チャンピオンーー!!」
「暴君を止めてくれー!!」
こっちにも歓声が飛ぶ。あれれ、おかしいぞ? 私の時は罵声も入ってたのにゴングマンにはないぞ?
「さぁあ! ゴングマンがチャンピオンの座を防衛するのか! アニー・キャノンが奪い取るのか! チャンピオンマッチ、開始です!!」
ばぁーん。
試合のゴングが鳴る。
「キヒヒヒッ。パイルバンカー!」
まずは小手調べ。
ゴングと同時に突っ込んでパイルバンカーをぶち込む。
「ふんっ」
おお、すごい。
ギリギリの所で僅かにそらされた。
空撃ちになったパイルバンカーが空気を振動させる。
「キヒッ」
やっぱりチャンピオン、相当なゲーマーだね。
まず第一に、キャラメイクがガチ。
筋力と運動能力の関係について考えてみよう。この世界において、AGIが同等なら筋肉の少ない方が早いと言うのが通説だ。だけどこれはちょっと間違っている。
筋肉が重量物なのは事実だけど、筋肉の大きい方が沢山の力が出るのもまた事実だ。要は、骨格に会った筋肉量を付けましょうってお話なんだよね。
それならメッチャ大きい体に適切な筋肉量を付ければ良いのかって言うとそう簡単でもない。
骨格的に一番、総合的な運動能力が高いサイズと言うのが存在する。彼はそれを目指したんだ。私では実現不可能だった、人類の最適解への挑戦。言うなれば人類2.0かな。
「おらぁあ!」
「遅い!」
お返しとばかりにノータイムでカウンター気味の裏拳が飛んでくる。習慣として無意識にやっていた片手の防御でそれを防ぐ。
「……上手じゃん」
「そっちもな」
お互いに一歩下がって仕切り直す。
ゴングマンがニヤリと笑って切り出した。
「まさか、同じ風間流の者に会うとはな」
「やっべ……」
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