闘技場で無双するタイプのJK
ロッカールーム?
みたいな所で待っているとすぐにお呼びがかかった。案内されるままについて行くと、円形のドームみたいな所へ通される。
「赤コーナー! ただいまEランク4連勝中、これで勝てればランクアップ! ワーウルフのアルフレッド!!」
実況のアナウンスと共に全身毛むくじゃらの狼男が現れた。
「青コーナー! 実績がない? 新進気鋭と言ってくれ!! 眠れる狩猟本能を解き放て! カオスルーラーのアニー・キャノン!!」
実況のアナウンスに合わせて円形の戦闘エリアに転送される。周囲には高さの異なる数々の障壁や地形が設けられていた。
周囲には壮大な観客席が設けられている。それは巨大な階段の様に連なり、最上段はドームの天井にほど近くまで到達していた。広大な観客席は半円を描き、闘技場を見下ろす形で広がっていて、それぞれの席からは戦闘エリアが一望できる様に設計されていた。
「ひぃぃいいい!!!!」
私が現れた瞬間、オオカミ男、アルフレッドが驚きのあまり尻餅をついた。ドームを囲む観客席からも、その驚きが伝播し、微かなざわめきが響いた。
「おーっと! これはどう言うことだ? ここまで快進撃を続けてきたアルフレッド選手、尻餅をついて後ずさっている!!」
「これ、もう始めていーの?」
テクテクと歩いて戦闘エリアの中心に向かう。
アルフレッドは私から少しでも距離を取りたいのか、後ずさってドームの壁に背中を付けていた。
「おーっと! ここで情報が入ってきました! 青コーナーのアニー・キャノン選手、かの有名なフォートシュロフの死神だとぉ!? 冒険者の方々には、暴君と言った方が伝わりますでしょうか!」
このゲームの世界では、私たちプレイヤーはすべて冒険者という身分で扱われる。料理人や鍛冶師でも、プレイヤーであれば誰でも冒険者だ。
「っく……無抵抗でやられてたまるかぁ!!」
アルフレッドが腕を振りかぶり突進してくる。
おお、早いね! AGI特化かな。
「キヒヒッ」
難しい事は必要ない。
ただ一歩、前に出る。
「ガフッ!?」
それでちょっとだけ首を傾げて、右腕を前へ伸ばす。それだけで、アルフレッドの頭は私の手中に収まる。
「なっ何で……」
「キヒッキヒヒヒヒヒ!!」
ああ、嗚呼!! その恐怖に染まった表情! 相手の命を掌に乗せている感覚!! 最高!!!
「ゆ、ゆるし……」
「パイルバンカー」
魔力で構成された極太の釘がアルフレッドの頭蓋骨を貫通し、柔らかい脳をぐしゃりと潰す。
ゆっくりと手を離すと、彼は顔面からダメージエフェクトを迸らせなが糸の切れた人形の様に崩れ落ちた。
「しょっ……勝者、アニー・キャノン!! 圧倒的な強さです!!」
「アハ、アハハハ!! アヒャヒャヒャヒャ!! あ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"ぎ"も"ぢい"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"い"いいいい!!!」
パイルバンカーから伝わる反動の感触、掌に残る頭部の暖かさ。それらが鮮明に命を刈り取った感触を私に伝えてくれる。無意識の内に広角が限界まで上がり、思わず心の声が溢れてしまう。
「あ、アニー選手?」
実況の人が何故かちょっと震えた声で私へ話しかけてきた。
なんだろう?
「なぁにぃ?」
「れ、連続で挑戦するとファイトマネーが多く入り、より早く高ランクへ上がることが可能です。連続で挑戦されますか?」
「えっ、無料で次の相手を持ってきてくれるの?」
何て素晴らしい施設なんだろう。
思わず笑みが溢れる。
「えっ、いや挑戦者……」
「早く持ってきて?」
「は、はぃ!!」
しばらく待っていると、また新しい冒険者が連れて来られた。なんだか凄く怯えた様な表情を浮かべている。初めてて緊張しているのかな?
「青コーナー! 先程、鮮烈なデビューを果たした狂気のカオスルーラー"暴君"アニー・キャノン!」
「赤コーナー! 無惨にも暴君の贄となってしまうのか、それとも大番狂わせが起きるのか! ドワーフのニコラス!!」
次は全身に金属鎧を装備した筋肉質で背の小さいプレイヤーが現れた。典型的なドワーフだね。片手には本人の体よりも大きな盾、もう片方にはハンマーを握りしめている。
「キヒヒヒッ!」
試合開始の合図と同時に駆け出す。
「パイルバンカー!」
「ブロック! グフッ!」
ダッシュの勢いを乗せたパイルバンカーをニコラスが大盾で防ぐ。だけど勢いが殺しきれず、後方へ吹き飛んだ。
この人、普通に強いよね。
「キャハハハハハ!!!」
ドームの壁に打ちつけられて体が浮いた所を蹴り上げる。
「くそっ!」
ニコラスが器用に体を捻り、大盾を地面の方向へ構える。
彼の大盾は最初のパイルバンカーで風穴が開いて放射状にヒビが走っているけど、まだ壊れる様子はない。純粋な強度の面で見れば一枚の大盾の方が強いんだろうけど、合板型はこういう時に一発で崩壊しない利点があるよね。
私のティラノサウルスキックで彼はさらに上空へ吹き飛ばされたけど、まだ大盾が壊れる様子はない。
空蝉返しの射程圏外。
ちょうど壁の近くだし、あれをやってみよう。
「キヒッ風間流裏秘技其乃二、逆さ風鈴!」
一瞬で内側に反っているドームの壁を両足で駆け上がり、ニコラスの頭上まで移動した。
「化け物が!!!!」
「キヒヒヒッ!」
私を見上げるニコラスに対して、私は笑いながら足を構える。
風間流裏秘技其乃五。
「鷹穿ち!」
かつてご先祖様はこれで鷹を蹴り落としたのだろうか。
知らないけど。
「トンズラ」
落下距離を調整してトンズラを発動する。
大盾の残骸に囲まれて全身からダメージエフェクトを迸らせ、大の字で仰向けに倒れるニコラスの前へシュパッと着地した。
「しょ、勝者、アニー・キャノン!! この世の物とは思えない異次元の動きだぁぁああ!!!」
「こ、これで三十連勝だぁぁぁぁああああ!! 彗星の如く現れた”暴君”アニー・キャンの快進撃が止まらなぁぁああい!! 史上最速でのAランク到達! おめでとうございます!」
「ありがとー」
なんか気がついたら表彰台に登ってインタビューを受けている。なにゆえ?
「一言、いただけますでしょうか?」
「えーっと、クランメンバー、募集してまーす」
「なんと! クランの活動方針などは?」
「特に無いよ」
「な、なるほど! 秘密結社ということですね!」
「よろしくー」
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