次に解放される街を遠くから眺めるタイプのJK
再度ログインして雪山に降り立つ。
眼前にはヨイニの大きな背中があった。
「ただいま!」
「おかえり!」
手を挙げて声をかけると、ヨイニも手を挙げて答えてくれた。その後、彼は私の腰に生えている翼へ視線を向ける。
「……やっぱり飛ぶの?」
「だから飛べないってば」
氷壁の前に立って両手と両翼を構える。
「スゥー」
大きく息を吸う。
「「「「パイルバンカァー!」」」」
両手、両翼を使った4発同時パイルバンカーを氷壁へ打ち込む。氷壁へと深々と突き刺さった魔力の釘から雷が放出されて亀裂を拡散させていく。
「……」
ダメか、そう思った瞬間、氷壁がパラパラと崩れ出し、すぐに勢いを増して一気に崩れ去る。
「ヒャッホウ!」
思わずガッツポーズ。
「やったな!」
「イエーイ!」
そしてヨイニとハイタッチ。
早速、閉ざされていた洞窟の奥へと足を進める。
ちょっと行った所で、濃い青紫色をした鉱石がそこら中に転がっているエリアに出た。
「万年寒鉄?」
「イベント報酬にも無かったよな?」
「うん、私も初めて見た……名前的に氷属性かな?」
「どうだろうな、ヌエの素材と合わせて、ニーズズさんに聞いてみるか」
「そうだね!」
ともあれこの辺の鉱石を全部回収すればニーズズさんの依頼は達成って判定で良いだろう。
「アニー!」
奥まで進んでいたヨイニが手を振っている。
どうやらトンネルになっていたらしく、反対側に出られそうだ。
「おぉー!」
洞窟を出た先、遥か下方にうっすらと大きな町が見えた。
遠くからでもフォートシュロフとは明らかにフォルムが違う。
「あれが幻夢境街かな?」
「多分そうだろうね!」
木造をベースにした豪華で壮大な雰囲気の建物が立っていて、一番奥の建物はコンクリート建築っぽい外壁に、和風の瓦屋根が乗っかっている。
「何だっけ、何世紀か前の映画でこういうのみた気がする」
「千と千尋の⚪︎隠し見たいな?」
「そう、それ!」
公開前の街へ先に入れないか降りる道を探してみるけどこっち側は断崖絶壁になっていて入れそうも無い。
「こっちからは入れないかー」
「それより、早く鉱石を掘り出しちゃおう」
「そうだねー」
踵を返して洞窟へ戻る。
これで専用装備を作ってもらえるぞ! ワクワク。
それからヨイニと一晩ぐらいかけてぱっと見でわかる範囲の万年寒鉄を掘り尽くして、フォートシュロフのニーズズへ届ける。
「おかえりー! ヨイニ君にアニーちゃん! 」
「約束通り、なんかそれっぽい鉱石とボスドロップ拾って来たよー」
「おー流石! 見せて見せて!」
満面の笑みで出迎えてくれるニーズズの机の上に、アイテムボックスからアイテムを次々に出していく。
「ふむふむ……!」
ニーズズが鑑定のスキルでアイテムを次々と検分していく。
やがて彼女は顔を上げた。
「……この鉱石については精錬してみないと何ともだけど、他のドロップと合わせて考えても明らかにゲーム進行度を逸脱した素材だね」
「もしかして作ってくれない?」
「いいや約束は違えないよ、ちゃんと作る。ただちょっと時間はかかるかも」
「やったー! あっそうだ、設計図みせて?」
「何でもう設計図があるって分かったの?」
「依頼を達成可否とか、受けるのか受けないのかは置いておいて、普通に興味はあったんでしょ?」
「ぐぬぬ……」
ニーズズが観念した様に丸められた羊皮紙の様な物を渡してくる。
私の専用装備に関するラフデザインが何種類かまとめられていた。
「おぉー。あっ、尻尾と翼の付け根の部分は全体的にもうちょっと装甲を厚くしておいて欲しいな」
「え、良いけどそこってほぼ被弾する事ないよね?」
「バランスの関係でそこにウェイトがあるとフィーリング良いんだよね」
「そっかー了解!」
「じゃ、完成したら教えて!」
などなど、和気藹々と会話をしながら身体計測などを済ませ、フレンド登録も終えてニーズズのお店を後にする。
ヨイニと雑談をしながら街を歩く。
「専用装備、楽しみだね」
「そうだねー」
ちなみにこの幼馴染、ついでに自分の専用装備も一緒に作ってもらうことになった。
抜け目のないプレイヤーだ。
「IAF最高の鍛治師って、どんな人なんだろうな?」
「あー、多分存在しないよ?」
私の回答に、ヨイニが驚いた様な表情を浮かべた。
「え、そうなの? じゃあ装備はニーズズさんが作るってこと?」
「それもちょっと違うかなー」
「ど、どういうこと??」
「ヨイニって生産職系のスキルツリー見たことある?」
「ああ、あるよ。なんて言うか、よくわからないスキルが沢山あったよな」
「そうなんだよね、戦闘系のジョブやスキルも沢山あるけど、それに負けないぐらい、と言うかそれ以上に生産と関わるスキルって多いんだよね」
「うん、今のプレイヤーメイド装備が弱いのも、1つの物を作るのに必要なスキルが多すぎて、スキルレベルが分散しているのが原因だよな」
「だから多分、クラン内でスキル毎に役割分担して特定のスキルだけ鍛えているプレイヤーを養殖しているんじゃないかな」
「ああーなるほど、面白いこと考えるなー」
「そうだよねー。ヨイニも何か養殖しているんじゃない?」
「いやいや、ウチはそう言うの無いよ」
そうこう話しているうちに、お互いの帰り道が別れる地点に着いた。
今日はこのぐらいで解散かな。
「それじゃあヨイニ、またね!」
「ああ、また」
あー、今日もゲーム楽しかった!





