ボスを倒すタイプのJK
「お待たせ!」
ステータスの分配を済ませて元の場所に戻ると、既にヨイニが居た。
「いいや、俺も今来た所だよ。アニーは何のスキル取ったの?」
「え、スキルは取ってないよ。カオスルーラーの種族特典でちょっと肺の形変えただけ」
「へ?」
編集中に確認していたけど、一応ステータスを確認する。
うん、酸欠は解除されているし……何ならHPの自動回復量が上昇していた。
「逆に、ヨイニはどうやって解決したの?」
「俺は普通に、冒険者ジョブのジョブポイントで高地適応をとった」
「あーそっかーその手もあったね」
「肺を改造しようって発想が出てくる方が異常だからね?」
「まぁまぁ、とりあえずこれで山は登れる訳だし」
「それもそうだね、じゃあ行こっか」
という訳で再び山道を登る。
道中でまた性格の悪いゴブリン攻撃はあったけど、途中からそれもパタリと止まった。
雪の降り積もる山頂付近、不自然に開けた場所へ出る。
ヨイニが盾を構え、周囲を警戒しながら口を開く。
「そろそろかな?」
「うーん、そうだよねー」
さっき戦った、戦った? 中ボスのパターンを踏襲しているなら来るはずだ。
「上だ!!」
ヨイニが驚いて空を指差す。
見上げると奇怪な生き物が大きな翼を広げて滑空していた。
「あっヨイニ走って」
奇怪な生物は私たちを見つけると急降下して私たちを襲ってくる。
「うおぉぉおおおおお!!」
ヨイニはゴリゴリのSTR型に有用な魔法スキル分のINTを最低限だけ割くビルドだ。
当然AGIにリソースを割く余裕は無い。
「がんばえー」
それでもかなり早いタイミングで走り出したのが幸いしたのか、謎生物の急降下攻撃をなんとかダイビングジャンプで避ける。
私? ヨイニに避けられるなら当たる方が難しいよ。
「変なモンスター」
ライオンの体に蛇の尻尾、鷹の翼が生えている。
「ああ、これはヌエって奴じゃ無いか?」
「知ってるの?」
「このゲームでは初めてみたけど、まあ……ファンタジーゲームなら割とお決まりのモンスターだな」
「ふむふむ……ヨイニが知らないって事は、割とレアドロップを期待しても良さそうだね」
じゅるり。
「来るぞ!」
ヌエが咆哮を上げて前足の鋭い爪で殴りかかってくる。
ヨイニがそれを豪華で重厚な大盾で防ぎ、もう片方の手に持った大槍を突き出す。
「ギュエ!」
ヨイニの大槍がヌエのガラ空きになった胴体へ浅く刺さった。
彼は直ぐに槍を引き、再び大盾を全面へ構える。
「グギュァァアア!」
ヌエの尻尾が奇怪な鳴き声を雪山へ響かせる。
「アンチライトニング!」
空気の感じや肌の感覚から何となく行動を読んだ私はヨイニの前へ飛び出した。
直後、蛇の尻尾から放たれた雷撃がより近くにいる私へ直撃する。
「アバババッ、そぉれどーん!」
うぐぐ、地面が近すぎるから漏電して結構ダメージを受けてしまった。
「ギャゥ!」
私の投げ返した雷撃がヌエへ直撃する。
放電してしまった分、威力は落ちてそうだけどスタン効果は発生した。
「ヨイニ!」
「おう!」
後にいたヨイニが私の事を盾で大きく前へ押し出す。
「パイルバンカァァ!」
「グギャァァァアアアア!!」
ヌエの脇腹に魔力の釘が深々と突き刺さる。
「スタンボール!」
怯んだヌエへヨイニが電気属性の怯み攻撃を放つ。
ヌエが怯む事を前提にしていないとできないタイミングだ。
「キヒヒッパイルバンカー!」
怯んでのけぞっているヌエへかち上げる様にパイルバンカーを打ち込む。
「ギュァアアアア!!」
尻尾の蛇が頭をブンブンと振り回す。
「わわっそれはマズイ!」
周囲に炎の玉が形成されて次々と襲いかかってくる。
「アニー! 俺の後ろに!」
「ひえー!」
ヨイニが大盾を構え、私はその後ろに隠れて丸くなる。
彼の大盾にいくつもの炎の玉が命中するけど、HPの減り方は微々たる物だ。
「凡人種は火耐性が優秀だからな」
私はスッと大槍を預かるとヨイニはアイテムボックスから水筒を取り出し一気に飲み干す。
HP回復効果のあるドリンクでHPが回復していった。
あっ大槍返すね。
「アトラクトボール!」
最後の火球が終わるタイミングに合わせて前に飛び出して私の方へノックバックするスキルを放つ。
サイズの関係もあってすっ飛んでくるって事は無いけどヌエは私たちの方に引っ張られた。
「エンペラーチャージ!」
ヨイニが大槍を脇で固定しながら突撃する。
彼の全身から集中線の様な特殊エフェクトが迸った。
「パイルバンカー!」
私もそれに追いつき、パイルバンカーを打ち込む。
「ぎゅぅぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁ!!!!」
ヌエが絶叫を上げて横たわった。
「素材ドロップかー」
ヌエの鱗とか翼とかをゲットした。装備とかに使うんだろうけどよく分からない。
食材はちょっと嬉しい。
後で調理法を研究しよう。
「アニー、あっちに洞窟があるぞ!」
ヨイニがヌエの降り立った場所の後方へ指を刺す。
半分ぐらい氷で埋まっている入り口があった。
「むむ、お宝の匂い!!」
ヨイニと2人、洞窟の奥へと進む。
「あれ、行き止まり?」
「いや、あそこ」
ヨイニが指差した先は、一見するとただの行き止まりに見えるけどよく見たらそれは氷の壁だ。
その奥はすりガラスの様になっていてよく分からない。
「とりあえず、壊してみる?」
「そうだな」





