専用装備を作ろうとするタイプのJK
NPCの女性に案内されて店内の最奥にある扉へ案内される。扉の向こうには金髪丸メガネで白衣を纏った女性が木製のテーブル越しに座っていた。
「やあ、待っていたよヨイニ君! それと……君は"暴君"のアニーちゃんかな。まずはまずは座ってよ」
白衣の女性に促されるまま、椅子に腰を下ろす。
「初めまして、私はニーズズ、鍛治クラン"ウェーランド"のクランマスターをやらせてもらっているよ」
「ニーズズさんが全プレイヤー最高の鍛治職人なの?」
「いいや、私もそれなりにはできるけど……仲介係だよ」
「私の専用装備を作って欲しいんだけど、お願いできる?」
「ああ、アニーちゃんはカオスルーラーだからね。制限も多いだろうから専用装備はあった方が良いよね」
ニーズズさんが私の装備を上から下まで見る。
机に両肘をついて祈る様に両手を組んだ。
「だけど、全プレイヤー最高の鍛治士、ヴォルドは"暴君"の依頼は受けないと言っている」
「それはお金じゃ解決できない問題?」
「君はそのお金を何処で何をして稼いでいるんだい?」
「8割ぐらいはPKだね」
「ならその資金の少なからずは、本来、私達のお金になるはずだった訳だ」
確かに私は戦闘プレイヤーだけじゃなくて、採集系のプレイヤーも狩っている。
まあ戦闘プレイヤーを狩るのだって遠縁には生産系プレイヤーの資金を奪っている事にはなるんだけれど。
「つまり……本来は私達のお金になるはずだったお金を渡されて装備を作ってくれって言われても嫌だってこと?」
私の質問にニーズズさんは頷いた。
「そうだね。専用装備を用意すればPKを止めるなんてことは無いんだろ?」
「もちろん」
「ヴォルドの専用装備を手に入れた"暴君"は今以上に暴れ回って、更に被害は拡大するだろ? 奪われたお金で装備を作って、更に奪われる様になるなんて……割に合わなさすぎる。いち職人として見れば面白そうな依頼だけどね」
うーん、これは困った。
専用装備は欲しいけどPKを止める訳にはいかない。
「どーーーしてもダメ?」
「いいや? アニーちゃんとって幸運な事に、条件付きで依頼を受けても良いよ」
ニーズズさんが引き出しから地図を取り出すとテーブルへ広げた。
「これは?」
「ゴブリン鉱山は知っているよね?」
「うん、通ってる。ダンジョンの中には入った事ないけど」
ゴブリン鉱山は現時点で行けるダンジョンの中で最高難易度と目されている。そのダンジョンを攻略したプレイヤーがここ最近の私の獲物だ。
「……実はダンジョン内に隠し通路が見つかってね。そこから山頂へ向かう道に抜けられる様なんだ」
「ふーん?」
「この道の先に強力なエネミーが居て、まだ誰も先を知らないんだ」
「それが鍛治クランと関係があるの?」
「まぁ確証がある訳じゃないんだけどね? 一般的に閉ざされた山頂にあるものといえば?」
「お宝?」
「そうだね、特に伝説の鉱石とか」
「じゃあそこのお宝を持って帰ってくれば依頼を受けてくれるの?」
「そうだね、それと今後はウェーランドのクランメンバーを狩場で見つけても多少の配慮をもらえるとありがたいな」
「うーん、配慮なら良いよ?」
「よし、じゃあ交渉成立だ」
ニーズズさんと握手を交わす。
「それで、どんな装備が欲しいのかな?」
ニーズズさんが地図をひっくり返して瞳を輝かせる。何だかんだ言って、彼女個人は依頼に乗り気なのだろう。
「私の体型でもちゃんと装備できるやつ!」
「うん、そりゃそうだよね。素材は何が良いとかある?」
「腕は刃物と殴り合える強度は欲しいから金属かな? 殴る時には腕は重い方が良いんだけど、格闘がメインだと腕の振りが遅いのは嫌なんだよねー」
「アニーちゃんのダメージソースって殴りとパイルバンカー、どっちの方が高いの?」
「パイルかなー」
「それなら腕は振りの速さ重視の装甲厚が薄いタイプのガントレットの方がいいんじゃないかな」
ニーズズさんが裏返した地図にメモを取る。
「耐性は何を優先したい?」
「たいせー?」
「斬撃に強いとか、打撃に強いとか、刺突に強いとか、火に強いとか」
「うーん難しいー」
私が頭を抱えるとニーズズさんが追加で判断材料を投下してくれる。
「斬撃と刺突はダメージ効率が高めだから厚く守った方が良いよ。フォートシュロフでは刺突と打撃を厚くするのが流行っているね」
「なんで刺突と打撃なの?」
「なんでだろうねー、どっかにしばき上げパンチングパイルバンカーをしてくる有名PKプレイヤーでもいるのかもねー」
へーそんなプレイヤーもいるんだねー。
何となく次のトレンドは雷耐性な気がするなー。
「じゃー耐性は任せるよ。あっでも属性耐性は炎を厚めにして欲しいな」
「うんうん、了解。デザインはどういうのが良いの?」
「尻尾と翼も装備できるデザインで、トゲトゲと流線型を組み合わせた感じが良い!」
「ベースカラーは?」
「迷彩効果のある黒かなー」
「ステータス補正は何を優先する?」
「AGIとSTRとINT」
「うんうん、なるほどねー」
ニーズズが書き込んでいた地図がそろそろ手狭になってきた所で、ヨイニが大きく咳払いをした。
「ウォホン!」
その声にハッとした様子でニーズズが顔を上げる。
「えっと、じゃあ続きは依頼を達成してからだね」
「確かに、今してもしょうがない話だったね」
「それじゃ、依頼の方よろしく!」





