指示中なタイプのJK
「**************!」
シュクレが、AGI特化の私ですら聞き取れない速度で朗々と詠唱を唱える。彼女のスキル、詠唱加速は使い手の魔法攻撃力が高いほど、詠唱中のAGIが上昇するチートスキルだ。
「シャイニング・スレイライト!」
シュクレが突き出した杖の先から、無数の小さな光が明滅する。やがてそれは先端で螺旋を描いて収束し、放たれた。
半径2メートルを超えるビームが音を置き去りに空を穿つ。その光の柱はまるで時間が止まった様に未だ空中に浮かぶ悪魔付きへ向かって直進し、残りのHPを消し飛ばす。
「やったか!」
「ヨイニそれフラグ!」
ヨイニの多分わかってやってであろう古典的なフラグにツッコミを入れると、案の定、悪魔付きのHPが復活した。
「ま、もうちょい戦いながら色々見てみるか」
シマーズさんが、ニッ笑って半透明のコンソールを操作する。私たちを囲む用に半透明のドームが展開した。
*「アニーちゃん、がんばれー!」*
*「俺たちも並行して調べてみるぞー!」*
*「シマーズそこ変われー!」*
ドームの内側には、シマーズさんの配信を見ていたリスナーのコメントが次々と表示される。それらのコメントの全ては温かい内容に溢れていて、それを見ているだけで少しだけ体が軽くなった。
頭の霧は晴れ、今日はいつもより遠くが見渡せる。晴天の様に澄み渡った思考を回して、皆へ声をかけた。
「よぉし、悪魔付きは割と何とかなりそうだから作業分担だ」
まずは忍者装束に身を包み、いつもビクビクと不安そうにしているけどなんだかんだいつも逃げ出さずに頑張るクダンちゃんへ視線を送る。
「クダンちゃんは、この部屋のトラップとか隠し通路とか何でもいいからとにかく怪しい感じの全部探して!」
「ふぇ!? わ、わかりました!」
ヨイニの後ろに隠れて、周辺を警戒しながら悪魔付きの行動を監視していたクダンちゃんが驚きながらも頷く。
悪魔付きのHP復活の原因が何かは現状じゃ分からない。探知に優れるクダンちゃんには隠し通路やギミックを探してもらう。
「シュクレはあの建物の中とか、何かヒントになりそうな物を探して! ヒントがあるとしたら、このボス部屋が一番怪しいから!」
私はそう言って、ボス部屋の中央付近にある、元々悪魔付きが出てきた小屋の方を指差す。
「は、はい。わかりました」
私のすぐ後にいたシュクレが頷いて走り出す。
「ヨイニとシマーズさんはそれぞれ2人を護衛して!」
ヨイニは大盾を持っているし、カバームーブという移動防御技を持っている。戦闘中に2人のどちらかえヘイトが向かった時に即応しやすいだろう。シマーズさんも同じ理由で"宿地ッ"がある。
「ゴングマンさんは私と一緒に悪魔付きをボッコボコにする!」
ゴングマンさんは、表側の風間流を習得している。他のメンバーより悪魔付きとの戦いに有利だ。
「ゴングじゃねぇゴリ……あれ、合ってる!?」
ゴングマンさんが条件反射的に憤慨しかけて、びっくりした様に大袈裟なリアクションをとった。
私はそれを口を開けて笑う。
「やっぱりゴリラなんじゃん」
「……ゴリラじゃねぇ! ゴングだ!」
今度は言葉を一瞬、吟味してからゴングマンさんが怒り出した。
「ムエルケさんは私たちのサポートおなしゃ!」
「了解っす!」
最後に、このパーティー唯一の回復役であるムエルケさんにサポートをお願いする。彼女は打てば響く用に答えてくれた。
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