化け物なタイプのJK
「よし、それじゃあそろそろ攻略を再開するか!」
全員がホットサンドを食べ終えると、シマーズさんが意気揚々と立ち上がった。皆もそれにならって立ち上がる。
「ちなみにシュクレちゃん、何か新しい情報はあったりする?」
ヨイニの質問に、シュクレが申し訳なさそうに眉をひそめて首を左右へと振って口を開く。
「いえ、特には……」
休憩前にボス戦をした時は、HPバーを削り切ってから全回復をされてしまった。原因が分かれば良かったけど、IAFの考察ガチ勢であるシュクレに分からないなら現状、この世界にわかる人間はいない。
「じゃあまぁ、とりあえずボッコボコにしながらかんがえよっか!」
私はそう言って、扉を蹴り開ける。
門の先には、つい数時間前に見たのと同様の光景が広がり"悪魔付き"は既に門の前で待ち構えていた。
"悪魔付き"全身を真っ黒な忍者装束に身を包み、身体中からドス黒いオーラが滲み出している。
「スゥ――ハァ――」
悪魔付きは私たちの様子を伺う様にまだ動かない。私は一度、多いく深呼吸をして見つめ返した。
さあ、ボス戦の始まりだ!
「「セット、リボルビングパイル!」」
私の発声に合わせて、両腕へトリガーの付いたトンファーの様な釘打ち機が生成される。
「影踏み!」
スキルで悪魔付きの影へ移動し、防御を掻い潜るように小さくアッパーを繰り出して、同時に釘打ち機のトリガーを引く。
「キヒヒ!」
空間に衝撃波が生じる。攻撃は防がれたけど、その防御を抜いて悪魔付きへ確実にダメージを与えられた。
悪魔付きは負けじと、反撃の掌底を放つ。
「あまぁい」
私はイナバウアーの様に回避し、眼前を通り抜ける腕を抱き抱える。そのまま尻尾で全身を支えながら1回転。
休憩時間の間、父との戦いを経てから……私の中で何かが変わった気がする。まるで、何かのセーフティーが外れたみたいだ。
「キャノン流忍術」
思いついた連続技のイメージに抗わず、体を考えるままに動かす。体は忠実に従って動いた。全身の関節を一瞬だけ外して、身体中の筋肉を一塊のバネのように使う。地面を垂直に蹴り、上空へ上がる。
風間流裏秘技の1つ、空蝉返しだ。
「そのに!」
空中で腕を掴んだ悪魔付きを放り投げる。反作用で私は更に高度を上げて、悪魔付きを眼下に捉えた。
放物線の最高到達点、上昇ベクトルと重力が拮抗して速度が0になったタイミング。空中で体を回転させながら縦方向へかかと落としを叩き込む!
これを空中回転かかと落としか、縦向きの逆回し蹴りか。どう表現するのが伝わりやすいかは微妙なところ。
これも風間流裏秘技の1つ、鷹穿ちだ。
「ジェネシック」
眼前で地面へ向かって落下していく悪魔付きを置き去りに"トンズラ"のスキルで地面へと先に移動する。
「エメラルド」
頭上の悪魔付きへ、ダメージが0の代わりにスタンと吸い寄せる効果のあるスキル"アトラクトボール"を放つ。
「キャノン」
両腕に生成された釘打ち機のシリンダーが前方へ移動する。トリガーを引き絞ると、魔力で生成された釘が放出された。
空蝉返し、鷹穿ち、トンズラ、アトラクトボール、リボルビングパイルのフルバーストを組み合わせた連続技だ。
「バスター!」
錐揉み回転しながら吹き飛んでいく悪魔付きのHPを確認すると、ここまでで既に半分近く削っていた。
「なんか、休憩挟んだらアニーちゃんが一段とアニーちゃんしているんだが?」
シマーズさんが唖然とした様子で口を開ける。
「まぁ、アニーさんですし」
すぐ近くにいたクダンちゃんが頷いて答える。
「ある意味で、いつも通りっすね!」
ムエルケさんまでそれに続いた。なんだか、化け物扱いももう慣れてきたね。まぁ……彼らの評価は正しい。
「あれ、アニーちゃんいつもの言わないのか?」
ゴングマンさんが覗き込むように私の方を見る。私は其れに小さく歯を見せて笑って答えた。
「化け物扱いするな! って?」
「そうそう、それ!」
強さだけじゃない。
普通の人から見れば私の様な精神性の存在は、確かに化け物なんだろう。数時間前ならその事を素直に認められなかった。
「化け物だって――」
だけど、今は違う。
「人と共存できるんだよ」





