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小鳥村の仲間たち  作者: イカロー
1/1

第1羽 どんぐりはどこ!?

耳を澄まさずともここではよく鳥の、僕の仲間たちのさえずりの声が聞こえてくる。ここは小鳥村。僕の住んでいる鳥のための楽園。あ、自己紹介がまだだったね。僕はスズメ。この物語の主人公だ。メタ発言の一つや二つ許してくれよ。実際にそうなんだから。

?「誰に向かって話してんだよ」

スズメ「この物語を見ている人たちに自己紹介をしていたんだ。ムクドリ君。」

ムクドリ「いや、だから誰だよ。」

彼はムクドリ君。僕の友達で、よく人間の街に一緒に遊びに行くんだ。今日もこの木の上で待ち合わせをしていたんだ。

ムクドリ「まったく、今日はどこに行くんだ?ていうか行先くらい前もって教えてくれてもいいだろ?人間の社会だと、そーゆーの『ほーれんそー』ができてないっていうらしいぜ?」

スズメ「ほーれんそー?あのおいしい葉っぱだよね?」

ムクドリ「そうだな。意味は俺も知らん。」

スズメ「ま、いっか。」

ムクドリ「いやよくねえよ。」

スズメ「とりあえず今日は村の近くの森に行こうかなって。」

ムクドリ「そういやあそろそろどんぐりが取れる時期だったな」

スズメ「おいしいよねー。」

ムクドリ「まあ、たまに食いたくなるよな。」

スズメ「そうそう!毎日だと飽きるけど秋になるとたまに食べたくなるというか…。」

ムクドリ「おまえ去年喰いすぎて太ったもんな!いやあ傑作だったぜ。あのときの丸々としたお前の腹!」

スズメ「違いますー。あれは冬毛ですー。」

ムクドリ「じゃあなんであの時飛行能力が落ちてたんだよ。」

スズメ「それは…ええと……とにかく!早く行こうよ!」

ムクドリ「あ、ごまかした。」

 そうして、僕たちは他愛のない会話をしつつどんぐりの木がたくさんある森に向かったんだけど…。

スズメ「ない、ない!どんぐりがどこにもなーい!」

ムクドリ「嘘だろ!?少ないとかじゃなくて、ほんとに一つも落ちてねえじゃんか!どうなってんだよ一体!」

スズメ「知らないよ!とにかく、原因を探さなくちゃ!」

 困ったことに、なぜかどんぐりが一個もなかったんだ!もう僕の舌はどんぐりを求めてるのに…。ああ、一層どんぐりが食べたくなってきちゃった。こうしちゃいられない。早く原因を突き止めてどんぐりを食べよう!でもどうすればいいんだろう。とりあえず、このあたりを調査することにした。


……しばらくして

ムクドリ「おい、すずめ!なんかあったか?」

スズメ「何にもなかったよ…。」

ムクドリ「手がかりはなしか…。」

スズメ「あ、そういえば。」

ムクドリ「なんかあったのか!?」

スズメ「なんかっていうか…。少し離れたところに他の鳥がいたような…。」

ムクドリ「そーゆーのを早く言えって!」

スズメ「ホカノトリガイタヨウナ(早口)」

ムクドリ「その速くじゃねえ!とにかく、行くぞ!」

そうして僕たちは森の少し奥深くまで進んだ。森の奥には、小さいけどとてもきれいな池がある。あそこにピクニックに行く鳥も少なくはない。もしいるとすれば、僕が見た位置からもそこが近いだろう。

ムクドリ「ついたぞ。池だ。」

スズメ「うわー!やっぱりきれいだね!」

ムクドリ「池よりもまずは他の鳥だろ。犯人かどうかわからんが、まず話をしないとな。」

?「今年はどんぐりがないわねえ。」

?「本当だね。一体どうしたんだろう。」

スズメ「すいませーん。」

ムクドリ「どんぐりがない件について話が…ってオシドリさんじゃないっすか。」

オシドリ♀「あら、スズメちゃんとムクドリちゃん。」

ムクドリ「珍しいっすね。今日はピクニックに?」

オシドリ♀「いいえ、今日はどんぐり拾いに来たのだけれど…」

スズメ「オシドリさんもですか?なんか意外ですね。」

ムクドリ「いや、失礼だろお前…あ、すみませんこいつが。」

オシドリ♀「いいのよ。よく言われるし。スズメちゃんも虫を食べるの意外って言われない?私たちにとってどんぐりってそういうものなの。」

オシドリ♂「そうそう。僕たちは水鳥だから、海草やコケを食べているって思われがちだけど、実際どんぐりは結構好きなんだ。」

スズメ「へー。それにしても、旦那さんとは相変わらず仲がいいんですね。」

オシドリ♂「?」

オシドリ♀「…ああ。彼は新しい旦那よ。」

スズメ&ムクドリ「え。」

スズメ&ムクドリ「えええええええええええええええええええええええええええええ!?」

オシドリ♂「ああ、僕を前の男と勘違いしてたか。そんなにそっくりかい?」

オシドリ♀「似てるところもあると思うわ。男の趣味が変わったわけじゃないもの。」

ムクドリ「すすすすみません、鳥違いしてて。まさか別人とは思わず。」

スズメ「前の旦那さんと何かあったんですか?」

ムクドリ「ばか!人様の事情に首を突っ込むんじゃない!」

オシドリ♀「…振ったのよ。」

スズメ「え。」

オシドリ♀「浮気してたから。振ったのよ。」

スズメ「…なんかごめんなさい。」

オシドリ♀「いいのよ。そもそもオシドリで一途なほうが珍しいくらいだし。」

ムクドリ「そーなんすか!?」

オシドリ♀「私も今の旦那も少数派。あまりもの同士がくっついたようなものよ。」

オシドリ♂「僕はそれでもいいと思ってるけどね。実際、幸せだし。」

オシドリ♀「あなた…。」

ムクドリ「…あー、いい雰囲気のところ悪いんですが、そろそろ本題の方に入ってもいいですかね?」

オシドリ♀「あっ、ごめんなさいね。」

オシドリ♂「いや、すまないね。話が盛り上がってしまって。どんぐりについてだね?」

スズメ「はい。」

オシドリ♂「申し訳ないが、僕たちもあまりわかってないんだ。一応このあたりにはいくつかあったのだけれど、夫婦の分を取ってしまったら残りはそこのあたりに落ちてる分くらいかな。」

オシドリ♀「今年は本当に少ないのよ。池の底にもほとんど落ちていなかったわ。」

スズメ「そういえば池にも一つ二つ浮いているくらいですね。」

ムクドリ「あれは食うなよ、スズメ。浮いてるやつは中に虫が湧いてたり、腐ってたりするからな。」

スズメ「腐ってるのはやだなー。」

ムクドリ「あ、オシドリさん。手間取らせてすみませんでした。いったん帰るんでここからは夫婦水入らずで。」

オシドリ♂「では、お言葉に甘えさせてもらおう。」

オシドリ♀「もう、あなたったら♡。」

ムクドリ「早くいくぞ。スズメ。」

スズメ「あ、これムクドリ君の分のどんぐり。」

ムクドリ「さんきゅ。いったん休憩しよーぜ。」

スズメ「おっけー。」

そうして僕たちはどんぐりを食べつつ休憩をとることにした。今回の調査で分かったことは、どんぐりが全てなくなったわけじゃないこと。今食べてるのを含めてみても、オシドリさんたちの分もあったんだよね。ほかのどんぐりはどこに行っちゃったんだろう?

ムクドリ「…やっぱりあそこに行くか?」

スズメ「あそこ?」

ムクドリ「察しがわりーな。あの鳥の巣だよ。」

スズメ「あー。分かったかも。」

ムクドリ「多めにどんぐりを持ってきてくれて助かったぜ。…全部食ってないよな?」

スズメ「…いくつか残ってる。」

ムクドリ「あまり残ってなかったからしゃーないわ。とにかく、行くぞ。」

そうして僕らはとある鳥の巣に向かうことにした。…ほんとはあまり行きたくないんだけどな。だって、怖いんだもん。巣も、住んでいる鳥も。

ムクドリ「ごめんくださーい!」

スズメ「お時間よろしいですかー!」

ムクドリ「まずいるかどうか確認しろよ!」

?「ムクドリさんの言う通りですよ。もっとも、今は見ての通り巣にいますがね。」

スズメ「お、お久しぶりです!カラスさん。」

カラス「あまり怖がらないでくださいよ。地味に傷つくんですから。」

ムクドリ「しゃあないと思いますよ。あんたでかいし、強いし、巣もなんですかこれ、めっちゃパンクじゃないっすか。」

カラス「パンクって…ただの金属じゃないですか。ハンガーとか、金だわしとか。」

ムクドリ「聞いたことねえよそんなもん…。」

スズメ「なにそれ…。」

カラス「ああ、人間の使う道具なのですが、聞きなじみがありませんでしたか?」

ムクドリ「聞いたことないし、金属って聞くと前教えてくれた車が頭をよぎって身の毛がよだつんですよー。」

スズメ「僕らはよく町に行くしね。」

カラス「まあ車は怖いですよねー。」

ムクドリ「あ、そうそう。これ、お土産のどんぐりです。」

カラス「おや、これはありがとうございます。おいしいんですよねー、どんぐり。」

スズメ「それで、実は相談があって…。」

カラス「君がここに来たということはそういうことですからね。」

ムクドリ「やっぱわかってましたか。」

カラス「ええ、それで要件はなんですか?」

ムクドリ「実はこのどんぐりについてなんです。」

カラス「どんぐりについて?」

スズメ「はい…。」

ムクドリ「俺たち、どんぐりを取りにいつもの森に行ったんです。」

カラス「池のある森ですね。」

ムクドリ「はい…。そこでどんぐ「どんぐりがほとんど落ちていなかった。」」

ムクドリ「!」

カラス「君たちはどんぐりの季節になるたびに取りに行きますからね。そこに少ししかないどんぐりとここに来たという事実だけで大体わかります。しかも君たちは小食ですし、二人ともはしゃぐと行儀が悪くなりますからね。君たちのくちばし周りがきれいなのを見ると、お土産の分まで食べつくしてしまったわけでもなさそうだったので、どんぐりをとることができなかったと考えるべきでしょう。その原因が外敵だった場合、もっと騒ぎになっているだろうと推測してこの結論に至りました。あってますか?ムクドリさん、スズメさん。」

スズメ「…大正解。」

ムクドリ「相変わらずすげー…。」

カラス「当たっていたようで何よりです。」

スズメ「それで、原因は?」

カラス「今断定するには根拠が少なすぎるので…、もう少し教えてくださいませんか?些細なことでいいので。」

ムクドリ「そういえばオシドリさんも来ていたよな。」

スズメ「うん。僕らよりも早かったような…」

ムクドリ「でもあの鳥たちもほとんど取れてないって言ってたぜ。」

カラス「彼らのような水鳥なら水中でも…いや、そういうことか。」

スズメ「何かわかったんですか?」

ムクドリ「まさかあんた、あの夫婦が原因だっていうんじゃないですよね!?」

カラス「さすがに違いますよ。夫婦で森のどんぐりを食べつくしたとはとはさすがに考えにくい。しかも、前の男の鳥とは違い、新しいオシドリさんの旦那さんは小食のようですしね。」

スズメ「あっ、カラスさんそのこと知ってたんだ。」

カラス「ええ。」

ムクドリ「じゃあ、誰が犯人なんだ?」

カラス「それがまず間違いです。」

ムクドリ「え?」

カラス「犯人がいるというのがそもそもの間違いなんですよ。」

スズメ「そういえば、僕たちの目的は犯人じゃなくて原因探しだったね。」

ムクドリ「てことは。」

カラス「ええ。最初からあの森にはどんぐりがほとんどなかった。と考えるのが妥当でしょう。」

スズメ「そーだったんだ…。」

ムクドリ「でもなんで急にそんなことになったんですか?」

カラス「ここからは憶測になるのですが、去年はどんぐりが豊作でしたね?」

スズメ「はい。去年はすごかったです。」

ムクドリ「それでお前太ったんだもんな。」

スズメ「あうう…。」

カラス「話を戻しますね。実はどんぐりが豊作になる時期には波があるんです。本来であれば森にはいくつもの種類のどんぐりが実り、常に一定の量のどんぐりが落ちるはずなのですが…。」

スズメ「ふむふむ。」

カラス「あの森、なぜかほとんどの木がマテバシイなんですよね。」

スズメ「マテバシイ?」

カラス「はい。おそらく、今年はマテバシイが不作の年だったのではないでしょうか。ほら、君たちの持ってきてくれたこのどんぐりは、マテバシイではなくコナラですし。」

ムクドリ「ですしって言われても…、わかんねー。」

スズメ「去年のってどんなんだっけ?」

カラス「見分けるのは難しいと思いますよ?…とにかく、結論としては最初から今年はどんぐりがなかった。ということになりますね。」

ムクドリ「すげー!あんたやっぱ頭いいっすね!」

スズメ「主人公…僕なのに…。」

カラス「ふふ、ありがとうございます。」

スズメ「でもどうしよう…。」

ムクドリ「?」

カラス「ほかの鳥の分のどんぐりがないことですか?」

スズメ「はい…。」

ムクドリ「確かにそれは困るな。どうすんだ?」

カラス「…あそこなら、いやでも…」

スズメ「カラスさん。どうしたんですか?」

カラス「いや、他の森のことを考えていたのですが、あれはどんぐりなのかと考えてまして。」

スズメ「?」

ムクドリ「どういうことっすか?」

カラス「とてもおいしいのですが…、その、どんぐりを楽しみにしているならどうなのだろうと思いまして。」

ムクドリ「あー。それなら多分大丈夫っす。」

カラス「本当ですか?」

スズメ「僕たちおいしいものが目的なので!」

カラス「そうですか。なら大丈夫でしょう。こっちです。ついてきてください。」

スズメ「いったいなんだろー?」

ムクドリ「なんかワクワクするな!」

 こうして僕たちは、カラスさんの後をついていった。いつもの森より少し遠かったけど、いけない距離じゃなかった。その森にあったのは…。

スズメ「なに?このとげとげ。」

ムクドリ「これは…食えんのか?」

カラス「外は無理ですが、中身はとってもおいしいですよ。」

ムクドリ「へー。で、どーやって食うんすか?これ。」

カラス「任せてください。」

そう言ってカラスさんは僕らを連れてまた少し移動した。そこにあったのは、あの恐ろしい車の走る道だった。

スズメ「ここって…あの車の道!!?」

ムクドリ「どどどどうしてこんなところに!?」

カラス「大丈夫ですよ。任せてください。」

 そういうと、カラスさんはあのとげとげを道にばらまき始めた。もともと落ちている分も合わせて結構な数だ。

カラス「このくらいでいいでしょう。」

すると遠くから何かうるさい音が聞こえ始めた。車の音とも違う、もっとやかましい音だ。

ムクドリ「なんだ!?うるさいのがこっち来るぞ!」

カラス「…来ましたね。」

そのうるさいのは一瞬で僕たちの前を通り過ぎて行った。カラスさんは上で飛んでいるから無事だ。あまりのうるささに呆然としていたら、カラスさんがつぶれたとげとげの中から何か持ってきてくれた。

カラス「ほら、これが今回のお目当てですよ。」

ムクドリ「おお、確かにうまそう!」

スズメ「これって何ですか?」

カラス「これは、人間たちが『栗』と呼んでいる木の実です。」

ムクドリ「確かにちょっとどんぐりっぽいかも?」

スズメ「食べていいですか?」

カラス「もちろん。いいですよ。」

スズメ「わーい!」

ムクドリ「あ、俺も俺も。」

スズメ「!」

ムクドリ「!」

カラス「どうです?」

スズメ「お」

ムクドリ「う」

スズメ「おいしーーーーーーーー!!!!!」

ムクドリ「うめえーーーーーーーー!!!!!」

カラス「そうでしょうそうでしょう。気に入ってくれて何よりです。」

スズメ「もっと食べたーい!」

ムクドリ「俺も欲しいっす!」

カラス「わかってますよ。少し待ってくださいね。」

 そうして僕たちはカラスさんとくりをおなか一杯になるまで食べ続けた。おなか一杯になるころにはもう夕日が沈んでいて、食べ過ぎて動けなくなった僕たちをカラスさんが村まで運んでくれた。カラスさんに「動けなくなるまではさすがに食べすぎです。」って叱られちゃったけど。(ちょっと怖かったけど)おなかいっぱいで楽しい一日になったなあ。それに村のみんなに持って行ったら喜んでくれたし、今年はどんぐりじゃなくてくりを取りに行く鳥たちで空がにぎわいそうだ。今日の物語はこれでおしまい。明日もいい日になるといいなあ。


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