メイル姫
妖狐がいないことを自覚した。今の気持ちは、嬉しさ半分悲しさ半分といったところだった。家族とあいつが仲良く、暮らしていけてるならそれを嬉しく思う。でももう会えないのは、悲しい。
そう心に言い聞かせていた。本当は、悲しい気持ちしかない。家族とあいつが仲良く暮らす、ということを否定してるのではない。別にそれは良い事だと。でも妖狐を失った悲しみは、それ以上に大きかったということだ。
「ゼルー、もう朝ご飯できてるから、早く降りてきなさい」
母の声が聞こえる、良い機会だから、妖狐のことについて話そと思った。俺の7日間だけの最高のパートナーの話を。
「母さん、父さん実は」
「母上、父上、これはつまらない物じゃが受け取ってくれ」
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「なんでお前がここにいる」
「ゼルは我の最高のパートナーだからなのじゃ」
その瞬間俺は妖狐を抱きしめていた、妖狐がいたという安心感からそうしてしまったのだ。
「なんじゃ急に、はなさんか、父上も母上も見とるんじゃぞ恥ずかしいじゃろーがー」
「これぞ美しき絆だねママ」
「はー、私も昔はあんな感じだったのに」
そう言って二人ともが自分達を見ながら目を細めた。
「なんで俺は、お前と正式に契約してないのに消えてないんだ」
俺は素朴な疑問をぶつける。本来七日間を過ぎている妖狐は元の場所に戻る、つまりこの事はありえないことなのだ。
「ゼル、なんか勘違いしているようだが、契約完了てのは、自分を召喚獣の主人として認めさせること、つまり心の問題だ。儀式とかは必要ない」
「でも、召喚したやつらは、儀式とか色々個別にしてたが」
「そいつらは、契約した後もちゃんと大切にしてくれるのか試してるってとこだよ、教官というやつも言ってたじゃろ、ずっと収納に閉じ込めるのはやめろとな」
「いやでも、契約しないと収納は使えないはずでじゃないか」
「我がお前の前から消えたことがあったじゃろ、あれと同じじゃ、契約してない時は、自由自在に透明化ができるのじゃ、だからお主と契約を結んだ我は、もう透明化できん」
「せっかく、珍しいスキルだと思ったのにーー」
そんな感じで、気になることを話しながら登校をする。そして見るものを魅了する金髪の女の子と出会う。
「Cランクの雑魚、この学園も程度が知れますわね」
「おい、お姫様でも言っていいことと、悪いことがあるだろ」
俺を見下ろしていたのは、この国のお姫様、メイル・アルフレッド、成績優秀であり召喚獣は、Aランク戦乙女。
「平民が私に説教なんて、よほど腕にでも自信があるのかな、それともただのバカかな」
正直俺も王族に逆らってはいけないというのは、分かっていた、でも、妖狐を馬鹿にするのだけは許せなかった。
「また模擬戦で」
そしてメイル姫は、こっちに振りかえりもせず学園の方へと向かっていく、呼び止めようとしたが、妖狐に止められた。
「あの、、な、我を想って相手に説教してくれたのは嬉しかったが、我は、大丈夫じゃから。ゼルが我を必要としてくれるだけで充分じゃ」
もじもじしながら、恥ずかしいセリフを続ける妖狐。
「それと我の名前は鈴蘭じゃ、妖狐や、お前という言い方はやめてくれ」
「おう、よろしく鈴蘭」
「よろしく、、、ゼル」
こうして俺の新しい学園生活が始まる。
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