メイルの過去
「私は、アルフレッド王国の第3王女として生まれた」
「お父様、私立派な王国の姫として食事マナーを学びましたの、みてくださいませ」
「また今度な」
「はい、楽しみに待っております」
またこれだ、いつもお父様はまた今度と言う。でもまた今度が来たことはない。いつもお姉様が優先だった。
「メイルまた無駄な努力をしてるの」
「お母様別に無駄な努力なんかじゃ」
「無駄よ、所詮ただの平民の子なんだから」
この人は本当のお母様じゃない。私は隠し子だったのだ。だからこそあたりは強い、お父様も隠し子のことで周りの目が変わるのを恐れている。だから私を誰一人としてみてくれる人はいない。でも私にも一つだけ認めてもらえるところがあった。
「お父様武術大会で優勝しました」
「おお、流石我が娘だこれで王国の評価も上がる、次も励むのだ」
「はい」
私には武術の才能があったようだ。それから父は武術の修行の時だけは見ててくれた。
「メイル前の試合はなんだ」
「なんだと言われましても勝ちましたが」
「峰打ちでだろ」
「はい」
お父様がなぜ怒ってるのか分からない。勝ったのにどうしてだろう。
「完膚なきまでに潰せ、力の差を見せつけないでどうする」
「はい、出来るだけ痛めつけてやれということですね」
「そうだ、そうすれば相手は恐怖し立ち向かってこない、お前より強い奴はあらわれなくなるんだ」
そうか相手に傷をつけて勝利すれば喜んでくれるんだ。そしたら私をもっと見てくれる。そして次の試合もその次も、相手を再起不能まで追い込んだ。だけどお父様また見てくれなくなった。
「お父様今回も優勝です」
「ああ、良かったな」
「また修行を見てください」
「ああ、また今度な」
どうして、あんなに喜んでくれていたのに。もっと勝てばまた見てもらえるはずだ、きっとそうに違いないんだ。勝ち続けなきゃ、いつか見てくれるその時まで。
「おっとこれは、メイル姫立てないか」
「うぁぁぁぁぁぁ」
獣のような咆哮とともにメイルは立ち上がる、だがかろうじて剣を杖代わりにして立っているにすぎなかった。
「私を見てもらうだ、だから勝ち続ける、負けられない」
「すげえ根性だぜ」
「認めるよ君は強いよ、でも負けられないんだよ」
そして猛然とこちらにダッシュしてくるメイル、いつものゼルならいなせるかも知れない、だがその力は残されていなかった、だからゼルは腹を括った。
「正面から叩っ斬る」
「うぉぉぉぉ」
「両者火の出るような、剣技の応酬だ」
「はぁぁ」
互いの剣がぶつかり合う、常人には見えない程のスピードで技を出し合う。だが剣技のレベルは、一目瞭然だった。徐々にゼルが押されるだが、倒れない。
「くそ、倒れろ、倒れろ、倒れろよ」
素早いメイル姫の剣がゼルの腹切り裂く。それが致命傷だということは誰の目にも明らかだ。それを確信しメイルも安堵する。だがその緩んだ気持ちすぐに締め直す。
「こいつ、まだ目が死んでない」
「うぁぁ」
ゼルは、メイルの一瞬の隙を見逃しはしない、さっき受けた傷など御構い無しに攻撃する。
「強い、強い、なんでそんな強いんだよ」
(一歩引いた今なら一の太刀が出せる)
「これを食らったら、負けちゃう負けちゃうよ、負けれるかよ」
「虎威切り」
「一の太刀」
「いっけええええ」
二人の剣が交差する、互いに一番な必殺技を出した、果たしてどちらが制するのか。
「勝った俺の剣が一番に届いた」
「はぁはぁはぁ」
「なのになんであいつが立ってるんだ、分からない分からない、どうして」
肩で息をする、メイル彼女は勝ったという安堵より、恐怖を感じていた。あの剣がもし先に届いていたらということに。
「おおっと次はゼル選手が倒れてしまった、流石にこれはもう決定的か」
そしてゼルは理解した、先に届いたのあちらの剣だということ。ゼルは、満足した全てが出し切れたことに関して。
「出し切ったならしょうがないか」
心の中でゼルはそう思った。
「ゼルーーーー」
観客席から大声が聞こえる、誰の声なのか分からないけど、立たなきゃ、立たなきゃ。
「嘘でしょ」
確実に倒したはずの、ゼルが立ってきたことにメイルは驚きが隠せなかった。
ゼルは今意識が無かった、だがその声を聞いてたたずに入られなかったのだ。そして目を覚ましたゼルは、声の主を見つけた。
「ゼル勝手に負けなぞ許さんぞ」
そこには、鈴蘭がいた包帯などをまきながらも、駆けつけてくれたのだ。
「そうだよな、こっち負ける訳にはいかねえんだわ」
「次は息の根を止めるよ、だってそれしかないもん」
そして二人は駆け出す。自分が目指す勝利の為に。
「一の太刀」
「虎威切り」
「はぁぁぁぁぁぁ」




