メイルVSゼル
「幻影を失ったお前が私に勝てるわけないじゃん」
「やってみるか」
「もちろん」
激しい鍔迫り合い、ガードされたり攻撃されたりを繰り返す。会場に響くキーンという高音そして制したのはゼルであった。
「なんで、あいつの剣はちゃんと見えてるのに、寒いし体が重い」
「ねえアイくん、なんか寒くない」
「そうだね、多分これは魔法によるものだよ」
「そしてやったのは、鈴蘭です」
アイとエルが話しているのを横で聞いていた、アイラはそう言った。
「でもなんでこんなことを」
「それは、今のゼル様とあの女の戦いを見ていれば分かります」
その頃自分に起こった自体が理解できないメイルは、混乱していた。
「どうしてどうして、王宮剣術1の型、網目切り」
「縮地」
(避けられた)
「今のお前のスピードなら、俺は一歩先を行く」
持ち前の反射能力で避けるが全てを避けることはできず。メイルの足からは血が滴っていた。
「おい、そのままだと出血多量で死ぬぞ」
「何言ってんの、これくらい」
メイルは傷口を力一杯叩く、これにより驚くべきことに、止血が完了してしまった。
(こいつ本当に、人間かよ)
「そろそろか」
メイルの体がどんどん凍っていく。これは、いわば時限式の魔術。効力は、このリング自体の気温を下げることだ。メイルは、温度の低下により体を動かすことが難しくなっていたのだ。そして鈴蘭の魔術なのでゼルにはマスターなので力は及ばない。そしてそれが最終段階に来たのだ。メイル姫を凍らして終わりそれが俺達のシナリオだったのだ。
「ああ、もう本当にうざい、うざすぎるよ」
「なんで動けるんだ」
ゼルには信じられない光景だった。確かに魔法は完了しメイルは凍ったのだ。それが今は、氷を溶かし動いている。
「魔法ってのは正体が分かれば無効化することも可能なんだよ、勉強不足だな」
「くっ」
ゼルはそれについては知っていた。魔法が相対する魔法で打ち消すことができるのも、メイルが魔法を使えることも、だが時限式の魔法は本来とてつもない威力なのだ、それをさも当然のように無効化したメイルにゼルは恐怖を抱いている。
「本気で殺しに行くよ」
そう言ってメイル姫は、使ってるのとは、別の剣を出す。
「今からは、王宮の剣じゃない、私の剣で行く」
そう言ってメイルは、もう一つの剣を取り出す。
「二刀流ってわけか」
「簡単に終わらないでね」
そこからさっきの倍近くの速さの剣技が繰り出される。
「さすがに早すぎだろ」
「この程度で驚いてもらっては困るな」
そして、メイルは、ゼルの知っている構えをする。
「二刀流、網目切り」
「がはっ」
超高速の連撃によりゼルの体からは、血が滴る。
「まずは、傷一つだね」
「こんなもんただのかすり傷だろ」
「いいよ、次行くから」
そう言って踏み出そうとした、メイルの足が止まる。
(何か狙っている)
直感的にメイル姫はそう感じた、ここまで何度もの死線を超えてきたからこそ、感じられるものである。
「来ないならこっちからいくぜ」
「迎え撃つ」
本来二刀流は、攻撃ではなく防御に優れた型であり、そこからカウンターに繋げるのが一般的だ、だからこそメイルの決断は、必ずしも間違っているわけでは無い。
「使うぜ、アイ」
「エルさん、アイラさん、今からもっと注意しといてみた方が良いよ、ゼル君の大技が出るから」
その言葉で二人ともがいっそう、注意しながら見始めた。だが、その技を彼女たちは視認できなかった」
「一の太刀」
「えっ」
「ついに、メイル姫が倒れた!!」




