交渉
「ただいまゼル参上いたしました」
「入っていいよ」
「失礼します」
アイの部屋はとても簡素で必要なもの以外は、置いていないという感じだった。
「僕が呼び出した理由わかるよね」
アイは笑顔だ、だがそれが本当の笑顔では無いことを俺は知っている。
「はい」
「お願いだ僕が女だということを、黙っていてくれないか、頼む」
泣きそうな顔で俺に懇願してくるアイ、一瞬これを引き合いに出して王宮剣術を教えてもらおうという考えもよぎった。でも、それは違うよな。
「おう、わかった」
「え、てっきり王宮剣術を教えてもらう代わりに黙っといてやるとか言うと思ってたのに」
「友達がそんなにお願いしてきたら守るしかないだろ」
「それと、友達のアイが嫌がってるのに無理やり教えてもらおうだなんて俺もとんだやばい奴だったんだ、だからごめんアイ」
この言葉を聞いた、アイはふっと吹き出して笑った。
「君ってやっぱりバカだな、そんなんじゃ絶対交渉とかできないじゃん」
「おい、そんな笑うことは」
「でも、君はいい人だよ友達として誇らしい、でもこっちとしても黙っててもらえるのに何か対価を出したいんだよね」
「なら、王宮剣術なんかいいからさ、俺に修行をつけてほしい」
「いいよ、むしろこっちもそうしようとしてたから、姫には、思うところがあるしね」
こうして俺は、アイに学年選抜大会のある1ヶ月後まで修行をつけてもらえることになった。
「あと、鈴蘭にも修行をつけてもらえたらとも思っててな」
「それは大丈夫彼女ならもうこっちに来たから」
考えることは同じだなと思った。
ーー鈴蘭ーー
「頼むお主のドラゴンと修行をさせてほしいのじゃ」
「とうとつに来たねメイル姫との模擬戦で何かあったのかな」
その言葉に鈴蘭は、まるで嫌なものでも思い出すような顔して、そこから口を開く。
「我たちは力を出しきったにもかかわらず、あやつらが少し力を出しただけで負けた」
「負けたのが悔しいから力が欲しいってことかな」
「確かに力は欲しいが、悔しいから欲しいのでは無い我が切られたとき、あやつは自分を見失いあやつに斬りかかった、そして無駄な怪我を負った」
「あれは我が弱かったから起こったこと、ゼルと世界一になると約束したんじゃ、約束を守るために強くなるんじゃ」
「あーらいいじゃない、その子」
「ドーラ」
ドーラと呼ばれたのそのドラゴンは赤い鱗をもつなんとも迫力のあるものだった。
「なんじゃそいつの口調は男なのか女なのかはっきりせんか」
「体は男、心は女なにかもんだいあるかしら、うふーん」
「なっ」
「鈴蘭ちゃん別に怖がらなくていいから、根はいい奴だからね」
「あなた気に入ったから修行つけてあげるわよ、アイいいでしょ」
「もちろん君に任せるよ」
「本当か、恩にきる」
こうして鈴蘭も、アイの召喚獣ドーラに学年選抜大会まで修行をつけてもらえることになった。




