敗北とトラウマ
俺が目を覚ますと、そこは、闘技場にある救護科のベットの上だった。そして俺は一番気がかりなことがある。
「鈴蘭、鈴蘭はどこだ」
俺は必死に救護科の中を駆け回る。そして幼馴染のエルを見つける。
「鈴蘭を知らないか」
「何言ってるの、ゼルが弱かったせいで鈴蘭ちゃん死んじゃったんじゃん」
「死んだ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
「そんなに信じれないなら見てきなよ」
俺はエルに指を指された部屋に入る。
「弱いやつは、すぐ死んじゃうから困るよね」
「メイル姫何を言って」
そして俺は言葉を言いかけると同時に血だらけの鈴蘭を見た。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「大丈夫?」
そう声を掛けるのは幼馴染のエルそして周りを見渡すとそこはベットだった。
「ずっとうなされてたんだよ」
「それじゃ今のは夢、、鈴蘭は」
「鈴蘭ちゃんなら横のベッドで休んでるよ、傷も治ってるから心配ないよ」
「よかった」
安堵した、でもこんなことが冒険者になれば日常茶飯事だということもわかってしまった。
「なあ、鈴蘭は俺と一緒に冒険者をやりたいと思ってるのかな」
「当たり前じゃんだから契約してくれたんでしょ」
「嘘だそんなわけない」
俺はエルの言った言葉を自分で質問したはずなのに否定する。
「召喚獣だからって死んだら元の世界戻るわけじゃない、死んじまうんだ、鈴蘭だって怖くないわけがないんだ、だから冒険者なんてやめた方がいい」
「ねえ、それってさ、ゼルが怖いだけなんじゃないの」
「くっ」
俺は図星を突かれて固まってしまった。
「俺は、鈴蘭の為に」
「ゼルは、逃げてるだけだよ、自分が怖いだけ」
「うるさい、まず冒険者の頂点って何がすごいんだよ」
一瞬エルは考えたような顔をしたがすぐこっちに向き直って言った。
「冒険者の頂点がすごいかは知らない、でもそんな中途半端なところで諦められる夢なの」
「くっ」
「ゼルは、子供の頃から言ってた冒険者になって召喚獣と一緒にたくさんダンジョンをクリアするんだって」
「それは子どもの頃の話だ、今実感したんだよ冒険者ってのは危険すぎるって」
「ゼル覚えてる、私昔は治療術師になりたかったって、でもこの世界では適正が無ければ魔法は使えない、だから私は諦めて召喚獣の力でみんなを癒せるようにしようと思った」
「でもゼルはできることを、たったひとつの敗戦で諦めようとしている、そんなもったいないことしちゃだめだよ」
俺はエルの言葉を聞いて、なんて自分は愚かなんだと思った。掴める夢をつかもうとしてなかった。そしてそれを他人のせいにした。一人でも冒険者はやれるのに。
「ゼルその通りじゃよ」
「鈴蘭」
「我がお主と契約したその意味は、お主となら一緒に死んでも構わんという意味じゃ」
「なんじゃその腑抜けた話は、我の認めたゼルはもっと夢を叶えようと一生懸命じゃたぞ」
「でも鈴蘭が俺といたらまた怪我をさせてしまうかもしれない」
その言葉を聞いた鈴蘭は、真顔で俺に言った。
「一緒に強くなれば良い、お主が我に怪我をさせたくないというならお前も強くなれ」
「ああ、俺も強くなる」
「いや我もお前に怪我などして欲しくない、だから二人で強くなるのじゃ」
「ああ、俺たちで強くなる」
そして俺と鈴蘭は拳を合わせた。




