模擬戦2
俺は剣なら多少扱うことが出来る。そしてFランクの魔物なら何体も狩ってきた。そして今は、鈴蘭の助けもある。十分やれる。
「死んでくれるなよ、人間」
「お前も死なないよう気をつけろよ」
軽口をお互い言い合いながら鵺が動こうとする。
だが奴の足は動かない。
「いつの間に氷を」
鈴蘭が、喋ってる間に先制攻撃を仕掛けてくれていた。元から作戦では、そうなっている。そしてここから、
「狙うなら弱い方からでしょ」
「鵺、何をしているそんな氷大したことないだろ、早く俺を守れ」
足は動かせないと悟った鵺は、尻尾で俺に攻撃しようとする。
「我も忘れるな」
氷の槍が鵺の尻尾に降り注ぐ、だが鵺は、決意したかのような雰囲気をしたかと思うと。急に大きな声で叫び出した。
「ギャァァァァァァァ」
「何!?」
その叫び声を聞いたとたん俺の体は、平衡感覚を失う。そして立ってられない程の倦怠感に包まれる。それは鈴蘭も同じようだ、懸命に立ち上がろうとするが、身体が震えている。周りの生徒たちも。
「スキルの力か、」
そして、鳴き声によって乱されたことで、鈴蘭の氷も、砕ける、拘束が解けた鵺がこちらに向かってくる。
「動け、俺の足」
鈴蘭を抱え、間一髪の所で避けることに成功する。
「この鵺がいる限り、もうここから先は、通さん」
「鈴蘭行けるか」
「当たり前なのじゃ」
そこで俺は、2つの疑問を持った。何故あいつは、間髪入れずに雄叫びをしないのだろうか。そしてダイナは、何故影響が出ていない。
「あの男耳栓で周りの音を聞こえないようにしてるぞ」
「なるほど」
耳栓か、なら攻略法は、ある。
「鈴蘭ちょっと耳を貸してくれ」
「なるほど、なるほど、わかったのじゃ」
そして作戦を伝え終えた俺と、鈴蘭は、鵺にガチンコで挑む。
「生身の人間が勝てると思うったか」
鵺は、俺に向かって手を振り下ろしてくる、そして俺はそれを寸前のところで避ける。
「人間ぐらいに当てれなきゃCランクなんて本当か疑わしいぜ」
「ぬかせ」
「狐火!」
鵺に狐火がヒットする。
「ぬぅ、そこからは行かせんぞ人間」
一瞬怯んだ鵺だったが、すぐに切り替え尻尾で攻撃をしてこようとする。
「何?」
鵺の尻尾は俺に触れることはできなかった。少し考えた鵺は、ある結論に至る。
「幻影か?」
その通り狐さんがよく使う幻影さ、うちの鈴蘭は、大得意だからな。そのまま、ダイナに急接近する。
「今だ鈴蘭」
そしてダイナの上に大きな氷の柱が降りてくる。
「うわ!」
ダイナは前に俺、上に氷柱なので、円状の闘技場を俺と一定の距離を保ちながら逃げていく。それをまずいと思った鵺は、必殺の叫びを使おうとするが。
「おい鵺、そこから叫んだらダイナにも効力が発生するぞ」
耳栓をしているのに闘技場の端までいたのは何故か。それは、耳栓では完璧に鵺の叫びの効力を消さないから。そしてこれはここまでお前を誘導する為の演出だ。
「氷の柱が消えている」
「あれは全部幻影だ、いくら鈴蘭でも相手に気づかれないように氷を生成するのは難しいからな」
必殺の雄叫びは使えない、そして鵺は完全に鈴蘭が抑えている。後はこいつに参ったと言わされ場終わりだ。
「ギャァァァァァァァァ」
「ここで今までよりも大きい叫び声、主人巻き添えにしてでも勝ちに来やがった」
ダイナと俺はさっきと同じ倦怠感を、感じる。そして立っていられなくなる。ダイナは、耳栓をしているから回復は、あっちの方が早い。そして至近距離で雄叫びを受けてしまった鈴蘭は、地に伏している。
「失敗した」
「残念だったな人間」
マスターを攻撃してくるはずがないと思った俺のミスだ。様々な思考が頭をめぐる、そして出た結論は降参だった。
「俺は、」
「氷結牢なのじゃー」
俺が降参しようとした所で、聞き覚えのある声が聞こえた。その瞬間鵺が氷の中に閉じ込められる。そしてその力は、ダイナにも振るわれる。
「助け、、、、」
最後のセリフを言い終わる前にダイナは、氷の中に閉じ込められていった。
俺が何が起きたのか分からずにいると、鈴蘭が目の前までやってきた。
「どおして、雄叫びが効いてないんだ」
「そりゃのー、耳を凍らしておいたんじゃよ」
「耳を凍らせる!」
鼓膜が凍ってしまえば、確かに雄叫びは、効かないが最悪耳が壊死してしまうと思い、俺がやろうとしなかった手だった。
「我は寒さへの耐性は持っとるからの、柔な人間とは違うんじゃよ」
正直自分を犠牲にしてまで危険な方法を使って欲しくわないと思ったが、こいつには、何を言っても無駄だろう。そして苦笑して俺は言う。
「何とか一勝だな」
「まいまい棒10本忘れるなよ!」
そして俺は鈴蘭とハイタッチを交わすそれとともに、審判が氷の中の鵺とダイナを戦闘不能と判断し連れて行く。
とても小さい一歩だが、最強の召喚術師に少し近づいた気がした。




