第41話
「ねぇ、少年は誰と一緒に寝たい?」
マーニがベッドに座り妖艶な雰囲気でシバに尋ねる。ゆったりとした部屋着からは豊満な双丘がチラリと見える。ベッドに仰向けになったシバに覆いかぶさるように四つん這いでシバに近づく。マーニの大人の色気と部屋着から少し見え隠れする双丘にシバの顔も赤くなる。
「顔、赤くなってるよ、しょ、う、ね、ん、」
完全にシバの真上までやってきて押し倒す形となったマーニは顔を近づけ耳元でささやいた。先ほどまであれほど言われていたエイミーですらまるで映画のラブシーンでも見ているかのようなマーニの優麗な姿に見惚れてしまっている。
「、、、シバに変なことしないで。」
アイはそう言うと腕を伸ばした。するとベッドの天井に魔法陣が現れそこから雷が落ち雷鳴が轟く。
マーニはシバから離れ落雷から回避したがシバは言うまでもなく回避できずに直撃した。勢いのままベッドから転げ落ちる。
「ちょっとー、アイちゃん、いきなり何するのよ、少年が可哀そうじゃない、」
(可哀そうだと思うなら避けんなよ、)
「、、、シバにはまだ早い。悪影響。あと、腹が立った。」
「そうかなぁ、あ、アイちゃんのじゃ少年を赤くできないもんねぇ、」
マーニは自分とは対照的で慎ましやかなアイの胸部に目を向けながら言った。
「、、、それ以上しゃべったら黒焦げ。」
今度はマーニに手を向け魔法陣を展開させた。魔法陣からは光点が光る。直接マーニに放つつもりだ。
「へぇ、黒焦げねぇ、返り討ちにしちゃうよ、」
マーニは空中に四つの魔法陣を展開し紫色の魔弾を生み出した。紫色の四つの魔弾はマーニの前で浮遊している。
アイの雷によって我に返ったエイミーはシバが黒焦げ、アイとマーニが不穏な空気である状況にまだ追いつけていない。
「ちょっとシバどうしたのよ!?、それにアイとマーニさんも、、」
「「うるさい!赤髪女は黙ってて!」」
二人はエイミーに向かってそれぞれ手を向けアイは雷、マーニは四つの魔弾を放った。
「ちょっ、まっ、、」
理不尽にもほどがあると思う暇もなくエイミーは目をつぶった。
しかしエイミーに直撃する瞬間ベッドから転げ落ちたシバが起き上がった。丁度アイやマーニとエイミーの間だ。
「えっ、、」
バリーン!
シバにアイとエイミーの攻撃が再び直撃し窓を割ってシバは外まで吹き飛ばされた。
「あれ?何ともない?」
エイミーは特に何も衝撃がなかった状況をうまく呑み込めていない。部屋を見渡すと窓が派手に割れ外気が吹き込む。窓に駆け寄り下を見た。地面にはシバが倒れていた。
「え?えぇぇ!シバー!!」
「はぁー、」
「もう、さっきからため息ばっかりついちゃって気持ちはわかるけどこっちまで朝からテンション下がるじゃない、」
エイミーが朝食のパンをちぎりながら言った。バターを塗って口にする。
「ため息も出るだろう、むしろ出さずにはいられないだろ、昨日の夜は散々な目に合った、これで朝食抜きはマジであり得ん、」
翌日、皆が朝食を食べている中一人だけ皿がない。加えて昨夜の傷口がやや痛む。そんなシバに目を向けられないのは言うまでもなくアイとマーニだ。
「お兄ちゃんお腹すいてないの?」
フォニアがシバだけ朝食がないことに気が付いた。
「お腹がすいてなくても食べられるときに食べないとですよ、」
モグモグとパンやらベーコンやらを頬張りながらアデルフィーが言った。
「めちゃくちゃ腹は減ってるが悪いことしたから食べちゃいけないんだ、」
「お兄ちゃん悪いことしたの?反省中なの?」
「ま、そんなとこだ、」
「でも、お腹すいてる、フォニアの少しあげるの、」
そう言うとフォニアは自分の朝食の皿をシバの目の前にずらした。
(て、天使だ、、)
「だめですよ、これはシバさんへのお仕置きですから、」
(あ、悪魔、、)
笑顔のベルカがやってきて皿をベルカの前に戻した。
「そういうことだ、フォニアの気持ちだけで十分だ、」
シバはフォニアの頭を撫でた。くすぐったそうにするフォニアは浮かない顔だ。しっぽはだらんと下がっている。ベルカは皿をフォニアの前に戻すと別のテーブルに向かって業務をこなしていった。
すると、フォニアがコソッと素早くスプーンをシバに差し出した。チラチラとベルカの様子をうかがっている。
「ベルカお姉ちゃんにばれないように早く食べるの、」
「えっ?」
いきなりスプーンを差し出され戸惑うシバにフォニアはしびれを切らしたのか立ち上がり強引にシバの口に突っ込んだ。はたから見たら俗にいうアーンだ。だがかなり強引だったのでそこにロマンチックなものはない、むしろフォニアにとってはベルカにばれないようにという極秘任務のようなものだ。
ベルカが何かを感じ取ったのかシバたちのテーブルの方に目を向けた。すぐさまフォニアは席に座り何事もなかったように振る舞うがややぎこちない。
「ん?」
ベルカは首を傾げ再び作業を続ける。それを横目に確認したフォニアは再び立ち上がり自分の朝食をシバの口に突っ込んだ。ベルカが見ていない隙にフォニアがシバにスプーンを突っ込みベルカが振り向きフォニアは何事もなかったように装う。これの繰り返し、フォニアとベルカの謎の攻防が続いた。
しかしフォニアの懸命の極秘任務に横槍を入れる者がいた。
「ちょっと!あんた何幼女にアーンさせてんのよっ!ロリコンなの!?」
「は!ちげーよ、お前な、今のフォニアを見て何とも思わねえのかよ!俺のためにベルカと戦ってんたんだぞ、フォニアに謝れ!こんな慈悲深い天使はいないぞ!」
「はぁ!?何急に!気持ち悪いわね、」
「、、、シバ、私のもあげる。」
アイが急にスプーンを差し出す。フォニアと違うのはアーンと言いながらであるというところだ。
「あー、アイちゃんずるーい、少年、はい、アーン、」
アイに続いてマーニもシバにアーンをしようとする。
「お、おい、お前らな、」
シバが二人のアーンを渋っているとベルカがこっちにやってきそうなのに気づいた。仕方なく二人の差し出した朝食を口にした。
「ちょっと、なんでアイたちだけ、シバ私のもほら、あ、アーン、、」
恥ずかしそうにエイミーがスプーンを差し出した。しかしシバがそれを口にすることはないかった。いやできなかった。
「エイミーさん、シバさんは今反省中で朝食抜きなんです、そういうのは結構です、」
シバたちのテーブルにやって来たベルカがエイミーの差し出したスプーンを押し返す。
「シバさん、まさか他にも誰かからもらってはないですよね?」
笑顔でベルカがシバに尋ねる。とても素敵な笑顔なのだがそれを感じる余裕などシバには当然ない。恐怖でしかない。だから当然シバの答える言葉はおのずと決まってくる。
「あー、はい、もちろん、誰からも恵んでもらってません、はい、」
「ならいいですけど、あ、お皿運ぶの手伝ってくださいね?」
「はい、喜んで、」
シバはベルカに言われベルカの作業を手伝うため席を立った。
「ねえアイちゃん、私少年にアーンしちゃったよ~」
「、、、私も久しぶりにシバにアーンした。」
「フォニアもベルカお姉ちゃんにばれないようにお兄ちゃんにおすそ分けできたの!」
「フォニアちゃんは優しいね~」
「あれ皆さんどうしたんですか?」
満腹になったのかご満悦のアデルフィーが言った。
「エイミーちゃんどうしたの?」
ニヤニヤしながらマーニがエイミーに尋ねる。
「、、、マーニ、察してあげて。」
昨晩の争いはどこに行ったのかというほどの連携プレイ?でエイミーをからかうアイとマーニ、我関せずと朝から遠慮という言葉を知らないというようにたらふく食べるアデルフィー、そして達成感に満ちた表情のフォニアがエイミーの前にいる。
「なんで私だけいつもいつもこうなのよー!」
エイミーの嘆きが宿屋中に響き渡った。しかし誰もそれを気に留める者はいなったと。




