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無能魔法士の復讐   作者: 宮田悠保
第一部
1/93

第1話

「では今日も課題を行う。できなかったものは放課後居残り訓練だ。」

 

 黒髪の女性教官が教室に入るとすぐに言った。

 教室内で着席していた40名ほどの生徒は足早に訓練室へ向かう。

 訓練室は円形をしており天井が開けたスタジアムのようだ。周囲にはスタンドも設備されている。

 訓練室では一人ずつ一日ごとに変わる課題をこなしていく。どうやら今日は浮遊魔法のようである。全員が5メートルほど浮遊して100メートルの往復を20秒以内にゴールしていた。


 

 ここは魔法が存在する世界のとある国リャポニヤにある魔法学院である。ここでは6歳になると魔法学院と呼ばれる学校に入学し魔法の研究や治安を守る魔法士育成ための教育を受ける。

 魔法士となった者は治安維持専門の防衛隊に配属される。低学年の頃は学力的な知識を学ぶ。16歳になって魔法科の所属となり初めて魔法について学び始める。

 しかしその頃にはどの生徒もある程度魔法が使えるようになっている。そのためこの毎朝の課題はどんな生徒でも難なくこなせるはずなのだ。



「全く、君は怒る気にもならないよ。どうしてこの程度の課題ができんのだ。」

 煙草の煙を吐き出しながら先ほどの女性教官、パレク・ダスカロナは言った。

 その日の放課後ある男子生徒が教官室に呼び出されていた。

「はぁ、今日はきっと調子が悪かったんですよ。昨日学校の魔導書読んだから寝るの遅くなったので。」

 呼び出された男子生徒は悪びれた様子もなく答えた。

「勉強熱心なことに関しては感心するがそれとこれは話が別だ。なぜ記録なしという記録が出るんだ。」

 教官は紙に書かれた名簿と課題の記録を見ながら言った。

「そ、それは、、は、速すぎて計測不能なんですよ。皆なんであいつ動かないんだって言ってましたし。」

 取って付けたように男子生徒は答えた。

「全く、そんなわけがないだろう。口だけは達者だな。毎日毎日周りの奴らに馬鹿にされてこのままでいいのか。」

 どうやら男子生徒が言うように速すぎて計測不能というのではないようだ。ちゃんと計測して出た結果が記録なしのようだ。

「馬鹿にされてるんじゃなくて周りよりも突出しているから疎まれてしまうんですよ。ほら、出る杭は打たれるっていうじゃないですか。」

「いやお前の場合は突出しているわけではないだろ、その逆だろ。」

 

 この男子生徒の名前はシバ・イクディキシ、16歳。魔法科の一年生だ。魔法科に入るまでの成績で言うと彼はそれほど悪くはなかった。

 しかし教官との話から分かる通りシバは魔法の才能が全くと言っていいほど皆無なのだ。それゆえに他の生徒が難なくこなせる課題を彼はこなすことができない。

 そんなシバのことを誰が言い始めたかはわからないが他の生徒そして教官たちでさえ皆口をそろえてこう呼ぶ、無能魔法士と。


「私も今まで初めてだよ、お前ほど魔法の才能がない人間を見たのは。それでいて落ち込むどころか口の減らないと言うか屁理屈が多いと言うか、とにかくお前みたいのは初めてだ。」

「なら教官もこんな落ちこぼれを切り捨ててしまって結構ですよ、毎度毎度放課後に付き合ってもらうのも悪いですし、じゃ、僕はこれで、」

 シバは教官に軽く一礼し教官室を後にしようとした。

「お前は自分ができないと思い込みすぎているだけだよ。お前は何でもかんでも悪い方向に考えて最後は自己完結する癖がある。」

 背を向けるシバに教官は言った。シバは歩みを止めた。

「しかしな、いろいろ屁理屈を言いながらも放課後居残り訓練をきちんとこなしているからつい世話を焼きたくなるものだ。」

 教官はそれでもシバのことを温かい目で見つめて言った。


「、、それって教官としてまずくないですか。一人の生徒ばかり見てるなんて。」

 シバは振り返り教官を見ながら笑みを浮かべて言った。

「それもそうだな、まぁ私も物好きなのかもしれないな。」

 煙草の煙をふーっと吹き出し教官は言った。

「ほんと、どこにこんな物好きがいるんでしょうか?あ、ここにいました。パレク教官?」

「ほぉ、それは教官に対する冒とくか?では、禁則次項につき処罰をうけてもらうことになるが?問題ないな?」

「いや!今のは教官殿のことを言ったのではなくてですね、そ、そう自分のことですよ!自分に酔ってるみたいな?」

 少し調子に乗りすぎたと慌てて弁明する。

「全く、君というやつはつくづく口が達者なことだ。自分に酔うのはいいがきちんと実力をつけて言うんだな。訓練室に行ってこい、私は他にもやることがあるので行くことはできないがさぼらずきちんとやるんだぞ。それが終わればいつものように帰っていいぞ。」

「分かりました。まぁ、その、毎回ありがとうございます。」

 シバは教官室を出て訓練室へ向かった。

(あいつもあいつなりに色々考えているのだろう。周りからどんなに言われてもこれまであいつが居残り訓練をさぼったことはなかった。他の生徒の何倍も努力している。それでも追いつくことができない。けれどまだあいつは折れずに頑張っている。そんな生徒を見捨てるなんてできるはずがない。)

 教官はシバの出て行った教官室の扉を今まで厳格で凛としていたが優しく柔らかな微笑を浮かべて見つめた。


「教官はああ言ってたけど実際ほんとに魔法をほとんど使えないからな。昔姉さんに教わった体術に身体強化を加えたり他の細かい魔法を使ったりしかできないしな。」

 シバは訓練室に着くと体術の型から始めた。それを陰から見つめる者がいたがシバがその者に気づくことはなかった。


今までこんな小説あったらなと思っていましたがなかなか実行することができませんでした。しかし、この度初めて小説を書いてみようと本気で思うようになりました。初めての小説ということで力不足ではあると思いますが温かい目で読んでいただけると幸いです。

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