貴方の神に祝福を!(男性二人版)
古賀 男子高校生
三上 男子高校生
ナレーションはキャラクター名+Nで表記
男女版、男女逆転版、女性二人版は前の話にあります
古賀N) 昔から思っていたんだ。神様なんていないと。そんなものがいるならこの世界から戦争なんてあるはずが無いし、餓死する人なんていないだろうし、理不尽に暴力を受ける人も、死んでしまう人だっていないだろう。しかしそんな世界にとって必要のないはずの不条理なことはずっと消えていない。現状として今もすぐそこにある。何なら、朝付けたテレビから虐待死といじめと集団自殺のニュースを見たばかりだ。そんな世界の中で神なんて……
古賀「いたならもっと世界は幸せなはずなんだよな」
三上「おぉっと、古賀殿。厨二的な思想をこじらせている発言だな? どしたよ」
古賀「お前な…。いや、さっきまで宗教の話があっただろ?」
三上「あぁ、倫理の? なんなら昨日も世界史であったな」
古賀「そうそれ。少ない数の人がそうやって神だの仏だのお釈迦様だのを信じて毎日拝んだりしてる訳だろ? そういう人らってなーんで信仰してんだろうって思ってさ」
三上「うーん。まぁ、俺も信じてるってほど信じてる訳でもないけどさ。古賀はなんというか、盲目的な信者に対して疑問を持ってる訳?」
古賀「信者っていう対象では無くて…、どうして信仰心がわくのかっていう純粋な疑問、とでも言えばいいのか? 俺はいないと思ってるから、なんでいると思うんだろうって」
三上「なるほど? 幽霊を信じるか信じないかみたいな」
古賀「信じるやつはおかしいとか思ってる訳でも無いんだけどやっぱり理解とか共感とかはしかねるんだよな。ほら、争いとかも起こってる訳だろ? お前らが信仰してる神は人を殺しても許すようなやつなのか? とか思ってしまうんだよ」
三上「多数派が少数派を迫害したり、宗教戦争が起こったり、革命やらなんやらあったわけだしその疑問はなんとなくわかる気もする」
古賀「だろ? まぁ俺自身そんな詳しくないし授業で習う程度ぐらいの知識しかないけどさ、一体どんな神を信じてたらそんな行動を取れるんだって人も世間にはいる訳で」
三上「なーんか、信憑性というか胡散臭さがある所とかもあるしな」
古賀「胡散臭さ?」
三上「うん、ほら、よくあるだろ? 久しぶりに同窓会で出会った、昔少しいいなと思ってた女の子と仲良くなって、今度会おうって約束していざ行ってみたらよくわからない幸福の壺とか売り付けてきたりとか、休日に寝てたら突然インターホンがなってしぶしぶ出たら、若い女性が神を信じますか? とか言って子供連れながら勧誘してきたりとか」
古賀「あぁーー。そういう本当に危なそうな、関わったらいけないと脳が直感で伝えてくるタイプのやつか」
三上「やっぱりそういうのを見たり噂とかで聞いたりとかすると、幸せになれる幸せになれるとか言ってもそれで幸せになれなかったら詐欺じゃないか? とかこんな暑い中、子供を歩き回らせてるのか? 親の都合で? とか思っちゃうし」
古賀「三上って案外、リアリストだな……。もっとなんかこう、やばー(笑)みたいな感じかと思ってたわ」
三上「お、おい?! 流石にそれは心外だぞー?」
古賀「ごめんごめん、あー、ほれこれやるから機嫌直せって」
三上「チョコ!! ラッキー! 頂くぜぃ!」
古賀N)馬鹿にはしていないけれど、そう捉えられて不機嫌になられても困ると思い、咄嗟にカバンに入っていた個包装のチョコレートを渡す。するとこいつは花が咲いたようにぱぁっと笑う。こういう所がさっきみたいな評価に繋がるんだけど、と言わずに俺はチョコを頬張り幸せそうな顔をする三上を笑う。
古賀「そういうとこだぞ?」
三上「(食べながら)んぇ? 何が?」
古賀「はぁ……。なんでもない」
三上「やっぱ甘いものはいいねぇ! ご馳走様~~! で、何の話だっけ?」
古賀「あー、いない神をなんで信じるのかって話」
三上「いない神をねぇ、うーん、ちなみに古賀はなんでいない派なの?」
古賀「だっているとしたらおかしくないか?」
三上「おかしい?」
古賀「あぁ、いるならなんでこの世界から悪が消えないんだ? 理不尽なこと、不条理なこと、こんなことあっていいはずがない! なんて思うものが無くならないんだ? ってさそう考えるんだ」
三上「いるならそんなもの無くせよってこと?」
古賀「うーん、いるならちゃんとしろよって事じゃなくて、ちゃんとなっていないからいない、というか。だって言うだろ? 信じるものは救われるだの幸せになれるだのってさ」
三上「なるほどね、そこまで言う人達が信仰している神がいるなら、皆幸せになってるはずだろ? ってことか」
古賀「そう。でもそうなってはいない。よって神はいない」
三上「ふむふむ。んー、でも、古賀って案外可愛いところあるんだね」
古賀「え? ……は?!」
三上「ひゅ~! 古~賀~く~ん~! か~わ~い~い~!」
古賀「急にどうしたお前は……! なんでだよ!」
三上「え~? 俺のどこが可愛いのか、教えてみろよ、ってこと~?」
古賀「いつ俺がそんな風に言ったよ!!」
三上「あはは! ごめんごめん!」
古賀「三上、お前なぁ…」
三上「ごめんってば~! でもあまりに可愛らしかったからつい、こう、本音がね、ポロッとね!」
古賀「はぁ……、なんでそんなこと思うんだよ。割と男が男に可愛いって言われて笑われると何かくるものがあるぞ、気持ち悪いという意味でな」
三上「嬉しいって思ってくれてもいいんだよ?」
古賀「お? 喧嘩なら買うぞ?」
三上「しっませーん! まぁあれだよあれ!」
古賀「どれだよ……」
三上「他の人が言ってる神様の条件をそのまま鵜呑みにするなんて可愛いなぁと思って」
古賀「……? どういうことだ?」
三上「幸せになれない世界には神様はいない、だって神様は皆を、あるいは信仰している人を守り、安らぎを与え、幸せにする存在だから、ってことだろ?」
古賀「お、おう」
三上「でもその存在しているとされてる神様の定義は信仰してる人が言ってるだけの言葉なんだよ。神様が人に優しいなんて前提は何処から来たんだ?」
古賀「確かに……?」
三上「もしかしたら神様って性格悪かったりするのかもしれないだろ? 全部掌で転がして、所詮人間は愚かなものでしか無かったか、ふぉっふぉっふぉっみたいなこと言ってるかも」
古賀「なんか長老とか仙人っぽい言い方するなぁ、おい」
三上「信仰してる人の中に思い描かれてる神様って、その人が幸せになるための手段でしかない気がするんだ。神様を信仰してたから幸せになっていったんじゃなくて、幸せになろうと努力してる時に、神という錯覚しやすい虚像を努力が報われることの理由にして、その後に自分の力でただ幸せになっていっただけなんじゃないかって。そして神様ありがとうなんて言って自分の中の想像の神様に感謝してる。でもそんな人達が信仰してる虚像は無くても、意地の悪い、厳しい神様ならいてもおかしくないんじゃないか、って思う訳だ」
古賀「他人の神様の定義をそのまま捉えすぎってことか?」
三上「うーん、信仰してる人って、よく狂信者とか言うだろ? のめり込みすぎているというか……。実際布教しまくってる人とかって割とやばそうな人多いし。黒い噂しか聞かない宗教だってあるわけだし? そんな人達が言う神様をそのまま神様だと信じちゃうの? っていう、そんな話かな」
古賀「神様だと信じちゃう……か。まぁたしかに神様がいるならこんな世界であって欲しい、こういう世界にいるならしてくれよみたいなのはあるかも。他の神様というか性格的な? そういうのが違う神様は想定してなかったかもしれない」
三上「だろ? だから、神様は信じられないとか言いながら神様の信仰している人の中の神様を神様だと信じてしまっているのがちょっと面白くて」
古賀「でも、実際いるならそうであって欲しくないか? 7日間で地球を作ったとか言う話もあるだろ? 作ったからにはハッピーエンドを目指してくれよって思っちゃうわけだ」
三上「まぁ確かに自分が関わるならハッピーエンドがいいよな。それの手助けをしてくれる存在がいたら神様とか天使とかと思っちゃうのかな?」
古賀「都合のいい解釈って気もするけどそうなんじゃないか?」
三上「神様が皆を幸せにするよー! なんて言ったりしてないのにね」
古賀「はは。そうだな」
三上「それに、善良であるべきなんて神様には通用しないかもしれないしね。だから俺は意地悪な神様ならいてもおかしくはないんじゃないか! って思う派!」
古賀「まぁそれなら俺も可能性としては無くはないかもとは思えるかな」
三上「あっでも……」
古賀「ん?」
三上「俺はチョコをくれた分ぐらいは古賀を幸せにするよ?」
古賀「なんだそれ」
三上「あはは! たまにはそれくらいしないとね」
三上N)神を信じない人間と関わっていたって楽しくないしね?