第4話
さて、ぐでくでとした、売れない漫才師の様なやり取りをしつつ、話しを元に戻して見る。
「ハルシではどうだ?」
.........
「うん」
俯きながら、コクンと頭を前に落とす。
無言の時が流れる。
ハルシは一言も声を発せず俯いたまま
ガサガサ、、、
遠くの方で草ズレの様な音が聞こえる。
ひょこっと顔を出したのは兎の様な小さな何か。
額には捻れた白い角。
叢の中で真っ白とはまた目立つし、体の大きさから、捕食される側と見えるのだが、、、
ちらりと目があった様な気がしたとたん
ビュンと飛び掛かって来た。
何故か一直線かつ錐揉み状で。
す、と横に避ける。
ビーィン。
木に突き刺さり、手足をばたつかせ、必死に角を木から抜こうとしている様だが、根本まで食い込み、かつ、ドリルのような形状の為、抜けそうにない。
「食料確保」
ハルシの一言。未だ俯いたままだが。
顔の向きだけを変えてこちらを伺う兎。
近付くにつれ、激しく手足を動かすが、一向に抜けない角。
ふと、立ち止まると、兎はこちらを伺うように見ている。
一歩踏み出す。
兎はもがく。
(達磨さんが転んだ!)ゆっくり進む
もがく兎。立ち止まると同時に止まる兎。
何度かそれを繰り返す。
手の届く距離まで近付いたので
手を出そうとすると、
キュイ、、、
と小さな声を出して、そのまま動かなくなった。
俎上の鯉でさえ、足掻くだろうに。身じろぎひとつせず
この後の、運命を、受け入れているのだろうか?