クローンをちょっと考えてみた
拙作『定期航路を外れて──サルベージ──』において、クローンを出してみた訳ですが、筆友様より
「オリジナルとクローンは同じ名前ですか?」
という質問を受けました。
オリジナルと同じ名前?
…あぁ、そうか。
SFを読み慣れてない方だとそういう疑問が出るのだなと新鮮な思いがしました。
上記作中では「これくらいは解るだろう、本文に直接関係無いし、はしょっても大丈夫だろう」と書かなかった部分というものがあります。
案外この様に読者様が解ると思い、書かなかったら伝わっていなかった部分というのはどんな作品でもあるかと思います。
ファンタジーは流行りですのでさほどでも無いでしょうが、SFですと細かい部分が想像出来ず、それがSF離れの一因かもしれません。
…まぁ、ホラーだと説明なんかしたら怖くなくなりますが(笑)
そこで今回脚注的に『クローン』の分類と問題点を考えてみたいと思います。
まずクローンは大別すると2種類になるでしょう。
オリジナルの遺伝子そのまま(少々いじるかも)の『コピー』型。
そして複数人の遺伝子を混ぜて造る『ハイブリッド』型。
筆友様の質問はこの内のコピー型を想定したもので作中のものはハイブリッド型です。
コピー型はクローン技術解禁がなされたならばすぐに研究されるものですが、かなり早い段階で廃れてしまうでしょう。
それは何故か?
…問題山盛りだからです(笑)
問題を挙げてみましょう。
1.失われた親族を復活させる。
例えば子供の死を嘆いた親が…という話ですね。もうこれはモノがロボットですが『鉄腕アトム』で描かれています。
天馬博士はその為にアトムを造りましたが、トビオとの違いに混乱し、アトムを売ってしまう。
遺伝子は同じでもクローンにはオリジナルの記憶が無い、という事はオリジナルの癖や仕草といった細かい部分に違いが出ます。結果、アトムと同じもしくはそれより酷い運命が訪れるでしょう。
全てがそうなる訳では無いでしょうが、社会問題になるでしょうね?
2.影武者にする。
権力者がやりそうな話ですが、需要が無いでしょう。
権力=組織力ですから、当然権力者が暗殺されても次の人がいます。
逆に造ると組織内のライバル派閥によって『入れ替え』られてしまう可能性があります。『王子と乞食』ですな?
3.若い肉体に移る。
これまた権力者がやりそうです(笑)
若い肉体を造って脳を入れ替える…ブラックジャック先生がいないと(笑)
実際問題、人間の肉体(臓器)は保って120年程。
脳も臓器ですので、焼け石に水です。
これは肉体の若返り技術が生み出された時点で廃れるでしょう。
4.内臓移植用。
これが一番長く続きそうです。遺伝子由来の病気でなければ、免疫による拒絶反応が無い臓器移植ですから。
ただこれも技術が進歩すると拒絶反応を鈍らせる薬剤とか、ロボット工学から流用された人工内臓なんかが出回ると、『金持ち用の贅沢品』となりそうです。
…この様にコピー型クローンは技術の黎明期に姿を消しそうです。
次にハイブリッド型。
ハイブリッド型には問題点が二つあります。
一番の問題点は『オリジナルと何が違うのか?』です。
造り方としては『減数分裂させた細胞同士を組み合わせる』
…母親の子宮で行っている事なので、そもそもクローンなのか?という議論が生まれます。
これを強引にクローンと定義するならば。
1.卵細胞・精子細胞を使わない。
IPS細胞が見付かった事ですから、これはクリア出来そうです。
2.母体の子宮を使用しない。
代理母も駄目ですので、培養機械を造らないといけません。また、成人まで速成出来る培養技術が必要です。
ここらへんはSFですね。
3.複数人の遺伝子を混ぜる。
要は減数分裂させた細胞同士を組み合わせたその後更に減数分裂をさせて…
…面倒臭い。オリジナルからみて孫だか曾孫だか訳分からなくしてしまう事で『遺伝子的な親子関係』を減じます。
4.遺伝子的に肉体強化を図る。
これをする事ではじめてハイブリッド型クローンは『人間以外』と見なされるでしょう。
さて、ハイブリッド型の問題点その2は『アンドロイドとの競合』です。
流用する場面が『オリジナルには危険大の作業』となりますから、これは競合する。
正確な作業・ある程度以上の破損・個体生産スピードではアンドロイドに分がありそうです。
ある程度以下の破損・メンテナンス・動力エネルギーの面ならクローンに分があるでしょう。
『唾つけときゃ治る』はアンドロイドには無理なんですね(笑)自己回復力がありませんから。
もう1つアンドロイドよりクローンが優れている面は『オリジナル並に間違う』でしょうか?
例えば競馬場に連れていって本命と大穴どちらを買うか?
アンドロイドであれば確率の高い本命以外手にしないでしょう。
負けは無いですが、大勝ちもありません。
クローンなら?
…この様に住み分けが出来る訳ですね。
とまぁ、この様な『本文に書かない事』を補足する話というのも物語には必要なのかもしれません。
こういう前知識があってはじめて『行間を読む』事が出来ると思います。
それでは、ごきげんよう♪共に物語を楽しみましょう♪




