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カエデトヒイラギ  作者: 青野百里
1/1

プロローグ

 トトン、トトン、とサーカストレインの車輪が、レールの継ぎ目を越える定期的な、心地良い振動がカエデとヒイラギを、照明を落とした2人の部屋を揺らしている。


 二段ベットの下段で寝転がっていたカエデは、ベッド脇の時計を確認し、車窓に掛けてある、締めたカーテンの裾に手を伸ばし、それをめくった。

 微かな明かりがカエデの白いおでこを照らす。線路の先。遥か向こうに街の灯が見えた。

 カエデは上段のヒイラギに、囁くように話しかけた。


「ねえ、ヒイラギ。まだ起きてる?」


 平板な声が答えた。


「ああ。なんだ?」


「ヒイラギ、次の町が見えたよ。あそこにはどんなものがあるかな」


「きっと、今までの町と、そう代わり映えのしないものしかないさ」


 カエデは頰を膨らました。


「なにその答え。相変わらずヒイラギは、サーカス以外のことに興味がないんだね」


「俺たちがサーカス以外のことに興味をもってどうするんだよ」


「どうもしないよ。ただ……楽しみじゃないか」


「楽しみ……か?」


  カエデの声が弾む。


「うん。あー、楽しみだなあ。あの町にはどんなものがあって、どんな人がいて、どんな暮らしをしてるんだろう」


「……そうか。まあ、いいよ。それよりカーテンを閉めてくれ、寝る。明日はサーカスの設営があるから、朝早いぞ」


「そうだね」


 カエデはカーテンから手を離し、掛け布団を引き上げた。


「おやすみ、ヒイラギ」


「おやすみ、カエデ」

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