表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
占いガール  作者:
タロット占い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/41

新しいカテキョ先


「涼香、神宮寺先生の言うことをしっかり聞くのよ」

「は~い」

「涼香ちゃん、一緒に頑張ろうね」

にっこり微笑んだ私に、涼香ちゃんは愛らしくに頷いた。

妹ってこんな感じなのかなぁ。

可愛いな。


「さぁ、神宮寺先生も冷めないうちに紅茶をどうぞ」

「いただきます」

鏡花さんの言葉に甘えて、紅茶を頂く。

高級品と思われるそれは、味も香りも凄く良いものだった。

お茶請けのマフィンもしっとりふんわりで、文句なし。


「先生、すっごい美少女だよね」

涼香ちゃんが食い気味に話し掛けてくる。

いやいや、貴方の方が美少女だからね。


「涼香ちゃんの方が100倍可愛い」

人懐こくていい子だし。

こんな子のカテキョ出来るなんてラッキーかも。


「えへへ、そうかな。涼香、可愛い先生で良かった。ね? ママ」

「本当。こんなに素敵な人に来てもらえるとは思ってなかったものね」

「うん。がり勉のお姉さんかと思ってたもん」

普段は、そのがり勉のお姉さんなんですけどね。

今は擬態中です。


「先生は恋人いるんですかぁ?」

無邪気に聞いてくる涼香ちゃん。


「こら、涼香。先生のプライベートに踏み込まないの」

涼香ちゃんを困った顔で睨み付けた鏡花さん。


「だってぇ~こんなに可愛い先生なんだもん。気になっちゃう」

唇を尖らせてアヒル顔になる涼香ちゃんの方が可愛い。

このぐらいの年頃は、恋とかに興味出るのかな?

微笑ましく涼香ちゃんを見てしまう。


「神宮寺先生ごめんなさいね」

申し訳なさそうに言う鏡花さんに、

「いいえ、大丈夫ですよ。思春期は、色んなことに興味が湧いてきますよね」

と笑った。


「そうなのよ。今、色々と難しい年頃で」

「私もそんな頃ありました」

「そう言っていただけると助かるわ」

鏡花さんはほっとしたように目を細めた。


「先生、凄く可愛いからお兄ちゃんには内緒にしてね。ママ」

「あらあら、どうして?」

「お兄ちゃんの毒牙にかけたくないもん」

涼香ちゃん、毒牙って・・・。

妹に警戒されるお兄さんてどんな人なの。


「涼香ちゃんはお兄さんいるの?」

「うん。無茶苦茶イケメンだけど女ったらしなの」

少し怒って言う涼香ちゃん。

どこかで聞いたことがあるような話ね。


「これ涼香、そんなことを言わないの。倫太郎さんは涼香の事を可愛がってくれるでしょ」

鏡花さんの言葉にピクッと眉が反応する。

私の嫌な予感、当たってるんですけど。

まさか・・・本当にここ北本先輩の家?

嫌な汗が額に滲んでくる。

北本倫太郎なんて、同姓同名の人間がいるはずないもんね。



絶対、北本先輩とはこの家で会わないようにしないと。

見つかったら、ろくなことになんない。

だいたい、北本先輩、妹に女ったらしって言われてるの、どうかと思いますよ。


「だってお兄ちゃん、女の人コロコロ変えてるじゃん」

思春期の女の子には、そう言うの不潔に思えるんだろうなぁ。


「もう涼香、神宮寺先生の前でそんな話しないの。先生、申し訳ありません」

「あ、いえ、大丈夫ですよ」

こう言うしかないよね。


「先生の事は絶対に秘密ね、ママ」

うん、私もぜひそうしてほしい。


「はいはい、分かりました。倫太郎さんには言わないわ」

困ったように眉を下げながらも頷いた鏡花さんに、涼香ちゃんは満足そうに微笑んだ。


「涼香ちゃんが心配しちゃうから、私も出来るだけお兄さんに会わないようにするね。カテキョの日にお兄さんが居たら時間をずらすから連絡してね」

涼香ちゃんに、ウインクした。


「うん、もちろんだよぉ」

涼香ちゃん、ナイス。

彼女の働きによって私は救われるかもしれない。


「神宮寺先生、変なことに付き合わせてごめんなさいね」

「良いんです。私、涼香ちゃんの先生ですし」

フフフと笑う。


よっしゃ~作戦成功。

涼香ちゃんに、便乗しておけば、北本先輩と会わなくて済みそうだ。


連携プレイで、北本先輩を避けまくる。

もうそれしかない。


「あら、すっかり長居をしてしまいましたね。私はそろそろ失礼します」

鏡花さんが空になったティーカップを片付け始める。


「ごちそうさまでした」

「いいえ。何かご用がありましたら呼んでください」

「はい。よし、涼香ちゃん勉強再開しようか」

「は~い、先生」

涼香ちゃんは立ち上がった私の後ろにピコピコとついてくる。

鏡花さんはそんな私たちを微笑ましそうに見た後、静かにドアを閉めて部屋を後にした。




「わ~ん、どうしよう、紀伊ちゃん」

翌日、講義室で出会った紀伊ちゃんに泣きついた。

紀伊ちゃんは昨日の夜帰りが遅かったので話せなかったし、朝は私の方が一コマ多かったから早く家を出たんだよね。


「ど、どうしたのよ」

驚いて目を丸める紀伊ちゃんに昨日のあらましを話して聞かせる。


「北本先輩が~」

本屋で脅かされた事と、カテキョ先が北本先輩の自宅だったことを続けざまに話す。


「あの男、本当。油断ならないわね」

「そうなの、本当そう」

うんうんと頷いた。


「カテキョ先が北本先輩ん家って最悪よね」

「うん。でも。妹さんとお母さんはすっごくいい人だった。今さら断ることも出来ないし」

半泣きで言う。

だけど、北本先輩に会うリスクが大き過ぎて怖いよ。


「確かにね。訪問前なら断れたのにね。とにかく家で出会わないようにするしかないわね」

紀伊ちゃんは難しい顔で腕組みをする。


「うん。それは涼香ちゃんが細かく連絡くれる事になってるから、なんとかなりそうだけど」

昨日帰り際に、携帯の番号を交換しておいた。

そこは抜かりない。


「でも週2なんでしょ? 気を付けなさいよ」

「うん」

「それに、今の格好じゃなくて普通の姿なんだから、余計に警戒してよ」

普通の姿って・・・紀伊ちゃん、今が私の普通なんだけど。

あれは擬態だしと思いつつ、ちょっと不服そうに見上げたら、


「瓶底眼鏡外して、髪を下ろしてる姿が千尋の本当の姿なんだよ」

と叱られた。


だって、占いは地味に生きろってなってるんだもん。

目立つ格好したくない。


「いっそ、瓶底眼鏡で行こうかな」

「今さらそんなので行ったら、不審者に間違われるわよ」

更に怒られた。

だって・・・・だって、目立ちたくない。


「いい加減、占いから離れなさいよ。まったく」

呆れ顔の紀伊ちゃん。


「無理だよ。占いないと生きていけない」

「バカ言ってんじゃないの! 自分を占っても当たらないでしょ」

「そ、それは・・・」

紀伊ちゃんは痛い所をついてくるなぁ。

あ~、今日は帰ったらタロット占いしよ。


「ちょっと、ぼんやりしてないで聞きなさい」

「紀伊ちゃん、痛いよぉ」

頭をパシリと叩かれて、涙目になった。



放課後になり、紀伊ちゃんと校門へと向かう。

今日は珍しく二人ともバイトのない日、久しぶりに一緒に帰れる。


「晩御飯、なんにする?」

「そうね。焼き肉でもやっちゃう?」

紀伊ちゃんはニカッと笑う。


「うん、いいね」

帰りに商店街の肉屋に寄ろう。

二人揃う日じゃないと焼き肉や鍋は出来ないもんね。

焼き肉って言葉に、朝からモヤモヤしてた気持ちはすっかり晴れる。


「よう! 凸凹コンビ」

「げっ、渋沢先輩」

声のした方に顔を向けた紀伊ちゃんが、物凄く嫌そうに顔を歪める。


「そんな顔すんなって。美人が台無し」

「煩いです。千尋、早くいこ」

私の手を引いて足早に進み始めた紀伊ちゃん。


「まぁ、そう慌てんなって」

余裕の顔でついてくる渋沢先輩は、今日は一人らしい。

北本先輩が居ないことにほっとする。


「ついてこないで」

紀伊ちゃんは渋沢先輩を振り返って睨み付ける。

渋沢先輩がついてくるから、女の子達の視線が集まってきた。


うわぁ~迷惑。

この人一人でも、女の子がこんなに集まってくるんだ。

イケメンの力って凄いな、他人事のように感心する。


「今日は焼き肉パーティーなんだろ? 俺も仲間に入れてよ。もちろん材料費、俺持ちで」

「はぁ?」

ああ、紀伊ちゃん美人が台無しなほど顔歪めすぎ。

と言うか、渋沢先輩はどこから私達の話聞いてたの。


「な、な、いいだろ?」

「いい訳けない」

紀伊ちゃんの言う通りだ。

いい訳けない。

私達の幸せな時間を邪魔されちゃ困る。


「眼鏡ちゃんも紀伊ちゃんに言ってやってよ」

私を見る渋沢先輩。

眼鏡ちゃんて、なんだ。

そもそも、私がどうして言わなきゃなんないのよ。


「嫌ですよ。私は紀伊ちゃんと二人が良いし」

渋沢先輩を誘わなきゃいけない義理はない。


「そうよね。私も千尋と二人がいいわ」

「「ねぇ」」

顔を見合わせて頷き合う。


「二人とも冷たい」

寂しそうな顔をした渋沢先輩に、ちっとも心が痛まないのはなぜだろう。


「私達じゃなくても、ほら、向こうのお姉さん達が遊んでくれますよ」

紀伊ちゃんはこちらを睨んでる先輩達を指差した。

彼女達は、渋沢先輩の視線が向くや否や、醜く歪めた顔を笑顔に変える。

ヒラヒラと手まで振って愛想を振り撒いてる。

なんて早変わり。


「はぁ・・・仕方ない。今日はあれで我慢するか」

なんて言いながら女の子達に、手を振った渋沢先輩。

キャーキャー騒ぐ女の子達。

渋沢先輩、ちゃっかり遊ぶんじゃん。

そして、誰でもいいみたいね。

紀伊ちゃんと目を合わせて、更に速度を上げて大学を後にした。

今のうちに急いで逃げよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ