占いババ
倫太郎side
カフェから出ていく二人を目で追いかける。
校内の女の子達が、よく当たる占いババが居るって噂してたのは前から知ってた。
時々、彼女達を見掛けてた。
特に、声をかけることは無かったけど。
女の子達が騒ぐから、少しだけ気になってた。
占いババなんて呼ばれてて嫌じゃないのかな? とは思ってた。
だって、入学したてのピチピチの女子大生なんだからさ。
別に占いになんて興味もなかったし、俺に寄ってくる女の子達みたいな華やかさも無かったから、接点なんて全くなくて。
だから、すれ違ってもこちらから声をかける事も全然なかった。
今日はたまたま。
本当、たまたま気が向いた。
その理由は、自分でもどうしてだか分からない。
何となく席を探していて、気紛れに彼女達の座る席へと足を進めた。
ちょっとした遊び心だったのかもなぁ。
「倫、珍しいのに声かけたのな?」
俺の目線を辿りながら、慧が言う。
その顔は何かを含んでるように見える。
「まぁなぁ。何となく気まぐれ」
素っ気ない返事を返して、テーブルの上のBランチを食べるのを再開した。
慧にあんまり深く掘り下げられたくないからね。
こいつに妙な勘繰りでもされたら、後々面倒になりそうだし。
「しかし、紀伊ちゃん美人だったよなぁ」
白身フライをかじりながら俺を見た慧は、彼女を思い浮かべて目尻を下げる。
「あの子は手強いぞ」
あの強硬な態度を軟化するのは、時間と忍耐が必要そうだし。
あそこまで、あからさまに俺達に敵意を向けてくる子なんて、本当珍しいよな。
まぁ・・・それ以上に千尋ちゃんは手強そうだけど、そう思ってはっとする。
おいおい、あんな瓶底眼鏡に興味持ってるのかよ、俺。
綺麗な子が黙ってても寄ってくるって言うのに。
俺の頭はどうかしたのか。
でもなぁ・・・千尋ちゃんの隣に座って、彼女の横顔を見て違和感を感じたんだよな。
色白で手触りの良さそうな決めの細かい肌。
分厚い眼鏡の隙間からちらりと見えた長い睫毛を蓄えた二重。
あの子は、それをわざと隠してるんじゃないかって。
ただの俺の妄想かも知れないけど。
彼女は、普通にするだけでかなり化けそうな気がするんだよな。
ひっつめてる髪を解いて、あの厚い眼鏡を外せば、もしかしたら美少女・・・な~んてないか。
漫画や小説じゃあるまいし。
思い浮かんだ自分の思考に苦笑いを浮かべた。
「倫、もしかして占いババに興味持った?」
ニヤた顔で俺を覗いてくる慧。
「うるせぇよ。あんなの相手にしなくても、女に不自由しないよ」
見透かされた事が悔しくて悪態をつく。
まぁ、実際、遊ぶ女に困ってなんてないけど。
やりたい時に、やれればいい。
来るもの拒まず去るもの追わずのスタンスは変わらないし。
面倒な女の子をわざわざ相手する意味なんてないもんね。
「だよなぁ~顔もスタイルも良い女が、どうぞって股を開いてくれるのに、わざわざつわものを選ぶ必要ねぇよな」
クハハと笑った慧に俺も笑い返した。
本当、その通りだ。
恋愛なんて面倒くさいことしなくても良い。
気持ちなんてなくても、体は気持ちよくなれるんだからな。
適当に遊んで、適当に楽しむ。
それが、面倒臭くなくて一番いい。
でも、そう思いながらも俺の頭の片隅に千尋ちゃんが顔がこびりついていたのは、なぜだろうな。