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占いガール  作者:
タロット占い
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占いババ


「千尋、早く食べちゃお」

「うん」

こんな所に長居しちゃ不味い。

紀伊ちゃんと私の思考が同じであることを、視線で知る。

話し掛けてくる二人は一先ず無視だと考えて、急いでAランチを掻き込んだ。



「千尋ちゃんは、どうしてわざとそんな格好してるの?」

Bランチを、食べながら話し掛けてくる北本先輩。


「・・・・・」

「俺、思うんだけど、眼鏡とったら可愛いんじゃないかな? って」

余計なお世話だ。

占いでは、地味にしてた方が上手くいくって出てるんだもん。


「マジかよ、倫。こんなちんちくりんがか?」

ちんちくりんで悪かったわね。

思わず渋谷先輩を睨みそうになったから、俯いて我慢した。

今、目線を合わせたらろくなことない。

そりゃ、167センチある紀伊ちゃんが比べたら160センチしかないけど、そんなチビでもないし。

ムカムカしながら、ハンバーグを租借した。


「千尋ちゃん、そんなチビでもないぞ。隣に座ってたら分かるけど、小さく見えるだけだ」

北本先輩、そんな情報言わなくても良い。

どうでもいいから、私を観察するの止めて!


「そっかぁ? 紀伊ちゃんが大きいからそう思うのかもな。いつも二人が並んでるの見て凸凹コンビだと思ってたわ」

そんな頻繁に見られたの?

渋谷先輩の言葉にギョッとした。

こんなイケメンは私なんて視界にも入れないと思ってたのに。


「渋谷先輩、友達でもないのに勝手に名前を呼ばないで貰えます、迷惑なんで」

食べ終えたらしい紀伊ちゃんが、渋谷先輩の方を睨み付けた。


「じゃあ友達になろうよ。そして今度、デートしよ」

軽く誘った渋谷先輩は、

「渋谷先輩とデートするなら、守衛室の番犬とデートします」

と紀伊ちゃんに一刀両断される。


守衛室の番犬って、雑種の茶色い子犬だ。

名前はポチ太。

キャンキャン鳴くだけで、今はまだ番犬にもならないんだけど。

可愛いから許せる。


「あ。じゃあさ、ポチ太の散歩デートにしようか」

本当、めげないなぁ、渋谷先輩。


「嫌ですよ」

紀伊ちゃんの黒いオーラに渋谷先輩はまったく動じない。

強い心臓の持ち主だなぁ。


「じゃあ、ダブルデートしよう。慧と紀伊ちゃんと俺と千尋ちゃんで」

だから、そこで、どうして、じゃあになるんですか!

北本先輩の思考能力疑いますよ。


「「絶対いや」」

あ、紀伊ちゃんと声が揃った。


「アハハ。二人とも気が合うね」

楽しそうに笑った北本先輩が恨めしい。

なんなのよ、この人。




「千尋、もう食べた終わった?」

「うん」

「じゃあ、いきましょ」

食べ終えた食器の載ったトレーを持って立ち上がった紀伊ちゃんに習って、私も鞄を肩にかけてトレーを持って立ち上がる。


「えぇー! もう行っちゃうの?」

にやけ顔の渋谷先輩を無視して歩き出す。


「またね?」

手をヒラヒラさせながら微笑んだ北本先輩に、黙礼だけした。

そこは、一応ね。

また、なんてないけど。


ざわつく店内を歩いて、食器の返却口へと向かった。

刺さる様な視線は全部女子からで。

本当、面倒くさいな。

彼らのお陰で悪目立ちしちゃったよ。


「いい迷惑ね」

紀伊ちゃんがぽつりと漏らした言葉に、無言で頷いた。

校内で有名な二人と一緒に食事なんて、味も分からなかったよ。

紀伊ちゃんとの、平和な時間を返してほしいわ。



「それじゃあ、また家でね。バイトの帰り道気を付けて帰るのよ」

「うん。紀伊ちゃんもバイト頑張って」

校門で手を振って別れる。

お互いのバイト先は反対方向。

紀伊ちゃんのバイト先はマンションに近いけど、私が今日向かう家庭教師のお家は、電車に乗っていかないと行けないから、私は駅へと向かう。


本当、今日は散々だったな。

正面から照らしてくる太陽の眩しさに目をしかめて、溜め息をつく。

昼食の後の休憩時間に、占いに来た女の子達に質問攻めに合った。

北本先輩達と知り合いなの? とか、紹介してほしいとか。

面倒臭くて仕方なかった。

もちろん紀伊ちゃんが、上手く煙に巻いてくれたからなんとかなったけど。

もう関わってほしくないな。

興味本意で近付かれても迷惑なだけだよ。

顔の良い男なんて信用できないよ。

しかも、遊び人だとかもっと信用できない。

みんなに優しい男なんて、ろくなもんじゃない。


大翔みたいに、流されて裏切るんだ。

チクリとした胸を服の上から押さえる。

もう何年も前の事なのに、未だに私の中でジクジクしてる。

大翔の事はもう好きじゃないのに、嫌な思い出だけが残ってしまった。

幼馴染みで、ずっと側に居た大翔に気がついたら恋をしていて。

大翔に告白されて両思いだと受かれてたあの頃、付き合って一年もしない間に、大翔は私を裏切った。

ぽっと現れた女の子に横からかっさらわれるなんて、思いもしなかった。

私とはキスしかしなかった大翔が、あの子を抱いたって聞いた時、死ぬほど苦しかった。

もう・・・あんな思いはしたくない。

占いで不幸になった分、私は占いで絶対に幸せになってやるんだから。



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