表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
占いガール  作者:
花占い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/41

近付く距離

千尋side


好き、嫌い、好き、嫌い

花占いをいくらしても、好きで終わってしまう。

足元に散らばる野花に申し訳無い気持ちになる。


「私、好きなのかな」

北本先輩の事を考えると、ドキドキすると言うか、モヤモヤすると言うか。

大翔の時みたいに、簡単じゃ無いんだよね。


なんなのかな? これ。

紀伊ちゃんは、ゆっくり考えたらいいよって言ってたけど。

最近、北本先輩のアピールにドキッとしちゃうこと増えたんだよね。


「もう・・・どうしたいんだろ」

そう呟いて、学生たちが行き交う中庭を見据えた。

紀伊ちゃんがレポートの提出に行ってるから、中庭のベンチで花占いをしていた私。

もちろん、花壇の花は使ってないよ。

芝生の隅っこに咲いてた野花を使いました。

マナーは守ります。

しかし、日差しがキツいな。

顰めっ面で空を見上げる。

真っ青な空に、ふわふわと雲が浮かんでいた。

もう夏だもんな、と思い出す。

あと少しで、実家に帰る。

大翔の事もすっきりしたので、前のように帰る事を苦に思わない。

今は帰れることが嬉しいかも。

両親にも会えるし、友達にも会えるし。


ちょっとだけ・・・ほんのちょっとだけ、北本先輩に会えないのは寂しいかもな。

毎日会ってるから、なんだか会わない日が来るって言うのが・・・。

北本先輩・・・か。

何をしてても、最近、彼の事が浮かんでくる。

これって、やっぱり恋だよねぇ。

認めるのが怖くて、違うって自分に言い聞かせてたけど。

そろそろ、正直にならないといけないのかも。

もう一度足元の花弁に視線を落とす。

綺麗に咲いてたのに、ごめんなさい。

花占いに使っちゃったこの花達を無駄にしちゃダメだ。

認めよう・・・好きってこと。


「千尋ちゃん」

私を呼ぶその声に心臓がドキッと反応する。

顔を上げたそこには、笑みを浮かべてこちらに走ってくる北本先輩の姿。

カッコいい。

太陽にキラキラ煌めく髪も、今時のファッションを着こなす背の高いすらりとした姿も。

ドキドキする。

これは、間違いなく恋だよねぇ。

大翔の時よりも、ずっとずっと胸が苦しい。

多分、これが本当の恋だからだね。



「どうしたんですか?」

少し息を切らせて私の前で立ち止まった北本先輩を見上げる。


「向こうから、千尋ちゃんが一人で座ってるのが見えたから」

「それで、急いで来てくれたんですか?」

「そう。一人だと危ないし」

大学構内で、どんな危ないことがあるんですか。


「私、子供じゃないんで一人でも大丈夫ですよ」

もうすぐ紀伊ちゃんも帰ってくるし。


「大丈夫じゃなかったよ。そいつらが声をかけようとしてたし」

北本先輩がそう言って睨み付けた先には、三人の学生。

慌てて目を逸らせて去っていく。


「意外に近くに人が居たんですね」

私に声をかけようとしていたのかどうかは、分からないけど、近い距離に居たことに驚いた。


「千尋ちゃん、ぼんやりしすぎ。ちょっと警戒心持とうか」

「ぼんやりはしてましたけど。警戒心は持ってますよ」

失礼な、私だってそれなりに周囲は警戒してる。


「さっきの連中に気づかなかったでしょ?」

「あ、まぁ、そうですけど。あの人たち、通りかがりだったのかも知れないし。私、声なんてそうそう掛けられないですよ」

「はぁ・・・誰、この子をこんなにも天然培養しちゃったの」

北本先輩が額を押さえて大きな溜め息をついた。

天然培養ってなんですか?

まぁ、いいか。聞くと長くなりそうだし。


「北本先輩は何処かに行こうとしてたんですか?」

中庭に居るなんて珍しいし。


「うん、教授にレポートの提出に行ってきた帰り」

「紀伊ちゃんと一緒ですね」

「彼女一人だけ? 千尋ちゃんは提出しないの?」

「はい。私は直ぐに出したので。紀伊ちゃんをここで待ってるんです」

「そうなんだ。隣座っていい?」

「はい、どうぞ」

隣に置いてあった鞄を膝の上に乗せた。


「ありがと」

そう言って座った北本先輩から、ふんわりと良い匂いがした。

北本先輩は、いつもお洒落な匂いがする。

くんくんと鼻を動かしてしまった。


「ん? どうかした?」

「あ、いえ、なんでもないです」

慌てて誤魔化す。

変態になってたよ、私。


「そう? もうすぐ夏休みだね。何処かに出掛けるの?」

「お盆は実家に帰ります」

「そっか・・・その間は会えないのか」

そんな寂しそうに言われるとは思わなかったな。


「お土産買ってきますね」

「本当?」

「はい。涼香ちゃんとも約束してますし」

「そ、そっか、そうだよな」

元気になったり落ち込んだり、北本先輩は忙しい人だな。

でも、最近はそれも可愛いと思っちゃう。

シュンとした北本先輩に声をかける。


「そう言えば、連絡先聞いても良いですか?」

鞄をからスマホを取り出した。

今更ながらに、私たちはお互いの連絡先を知らない。

北本先輩は、どんなセンサーを持ってるのか知らないけれど、広い大学で私をピンポイントで探し出す。

連絡先を交換する機会がなかったのが不思議だけどね、


「も、もちろん。千尋ちゃんになら何でも教える。スリーサイズとかも」

嬉しそうに破顔して、ポケットからスマホを取り出した北本先輩。


「スリーサイズは要りませんけど」

そう言いながら連絡先を交換する。

まずは一歩から始めようと思った。

連絡先を聞いて、少しずつ近付いていこうかなと。


「つれない千尋ちゃんも良い」

「変態ですか」

「千尋ちゃん限定だから」

「そんなのヤですよ」

「千尋ちゃん可愛い」

「脈略もなく、何を言うんですか」

「だって、可愛すぎるから」

惜しげもなくそんな風に言われると、顔が赤くなる。

だけど、北本先輩とのこんなやり取りも嫌いじゃない。


「千尋ちゃん、赤くなってる」

嬉しそうに言わないでください。


「う、煩いですよ」

「ヤベッ、マジで心臓鷲掴み」

ウッと北本先輩は自分の胸元を掴んだ。

何が、ヤバイんですか。


「・・・・・」

「千尋ちゃん好き好き病が発病した」

「・・・キモいです」

「そんなツンデレな君が好き」

「そんな北本先輩が怖いです」

そう言いながらも、頬が赤くなるのを止められなかった。

この人が好きだと思えた瞬間から、北本先輩の言葉に反応してしまう。

今まで、分からなかった北本先輩の伝わってくるから。

冗談めかして言っても、きちんと心を乗せてくれてる言葉。


あぁ・・・認めちゃうと、こんなにも知ることが出来るんだね。


「千尋ちゃん、絶対連絡するね。毎日連絡する」

私の手をギュッと握った北本先輩。


「用のある時だけにしてください」

素っ気なく返してしまうのは、まだ素直になりきれないから。


「じゃ、毎日用を作るよ」

嬉しそうに笑った北本先輩に、ほんのちょっぴりだけ嬉しいと思った。

多分、毎日、迷惑だと笑いながらもスマホを確認する私がいるんじゃないかと、そう思った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ