占いババ
「それに、占いババさんに占って欲しい事があるんだよねぇ」
上から私を舐めるように見た北本先輩。
なんだか、気分悪い。
「おあいにく様、お昼の時間は千尋の占いはありません。なので、お引き取りください」
北本先輩を睨み付けた紀伊ちゃん。
美人の睨みは迫力あるなぁ、他人事の様に感心しながらハンバーグを口に運ぶ。
「連れないなぁ。そんなこと言わずに、ここ座らせてね」
北本先輩は強引に鞄を置いてあった私の隣に割り込んで座ってきた。
踏まれちゃ困るので慌てて鞄を取って膝の上に乗せる。
なんて強引な人だろう。
「ちょ、ちょっと北本先輩。勝手に座るの止めて貰えません」
テーブルを叩いて抗議した紀伊ちゃんの怒りはMAXだ。
「まぁまぁ」
北本先輩は紀伊ちゃんの怒りなんてなんのそので、テーブルに頬杖をつきはじめる。
面倒くさい人。
目を合わせないように、私は隣を見ずに食事を進める。
周囲の視線がやたらと激しくなったのは、絶対に北本先輩のせいだ。
紀伊ちゃんも憤慨しながら、急いで食事を始めた。
言っても聞かない先輩を退かすより、私達がさっさと食べて退く方が早いとふんだようだ。
「慧、こっちこっち」
私と紀伊ちゃんの重い空気にも我関せずな北本先輩は、誰かの名前を読んで手招きした。
「お、良い席ゲットしたじゃん」
これまた軽そうな茶髪のイケメン登場。
その手には二人分のランチがある。
「最悪。渋沢慧まで、来るなんて」
紀伊ちゃんは、落胆したように吐き出した。
ああ、この人が渋沢先輩か。
北本先輩と並ぶイケメンで、やっぱり占いの相手としてよく名前を聞く。
もちろん、この人もチャラい。
類は友を呼ぶんだなぁ~としみじみ思う。
これは早々にここから立ち去らなきゃ。
増えた野次馬の視線に、食べる速度を上げた。
「隣座るねぇ。美人の隣とかラッキー!」
渋沢先輩は、軽い口調でそう言うと紀伊ちゃんの隣に腰かける。
紀伊ちゃんの眉間にシワが増えた。
そして、周囲は更にざわついた。
「ねぇねぇ、Aランチ美味しい?」
そう聞いてくる北本先輩はBランチだ。
「はぁ、まぁ」
適当に返す。
急いで食べてるんだから話しかけてくるな。
しかも、体をこっちに向けるの止めてください。
「ね、少しハンバーグちょうだい」
「嫌です」
可愛く言ってもあげません。
私達そう言う間柄じゃないし。
初めて会った人に、どうして分けなきゃいけないの。
「即答されてんの」
アハハと笑う渋沢先輩。
「うっせぇよ」
拗ねた顔をしてもイケメンはかっこいいらしい。
ちらりと見たら目が合った。
慌てて目を逸らしたのに、また話しかけてきた。
「占いババさんはなんて名前?」
「・・・・・」
まったく名乗りたくない。
「ねぇねぇ、良いじゃん。俺は北本倫太郎、倫って呼んでよ」
「・・・嫌です」
呼びたくないし、名前も教えたくない。
突き刺さる周囲の視線を、この人は感じないんだろうか。
悪意のある視線にゾッとするんだけど。
イケメンには関わりたくない。
大翔の時で懲りたんだよね。
「君は、紀伊ちゃんでしょ? 磯野紀伊ちゃんだよね」
渋沢先輩が、紀伊ちゃんにそう言ってにっこり笑う。
「勝手に名前を覚えないで」
紀伊ちゃんはクールにバッサリ切った。
「噂通りクールビューティー。あ、知ってると思うけど俺は渋谷慧ね。慧って呼んでよ」
「・・・ウザい」
「まぁまぁ、そう言わずに」
渋谷先輩、めげないなぁ。
もちろん、隣の北本先輩もだけど。
イケメンて自分に自信あるからこんなのなのかな?
「占いババさん、名前教えてよ」
しつこいです、北本先輩。
「ババ、ババってさっきから煩いのよ」
あ、紀伊ちゃんが切れた。
「良いよ、紀伊ちゃん」
そんな怒んないでよ。
「だって、千尋。こんな可愛い千尋を捕まえてババとか、ムカつくんだもの」
「へぇ、千尋ちゃんて言うんだね。可愛いね」
イケメンスマイルを私に向けた北本先輩に、紀伊ちゃんがしまったぁ~て顔して落ち込んだ。
うん、良いよ、紀伊ちゃん。
名前なんてそのうちバレるし。
「ごめん、千尋」
「ううん、大丈夫」
落ち込む紀伊ちゃんに微笑んだ。
「千尋ちゃん、笑ったら可愛い」
横顔を見てた北本先輩がそう言ったので、
「チッ・・・」
思わず舌打ち出ちゃったよ。




