変わり始めた気持ち
「ねぇ、二人はなんの話をしてるの?」
ちょっとぐらい仲間に入れて欲しいな。
「千尋はまだ知らなくてもいいわよ」
「えぇ~」
唇を尖らせて抗議する。
「そのうち分かるよ、千尋ちゃん」
「北本先輩まで、そんなことを・・・」
除け者とか狡いよ。
「それより、俺へのお礼の事だけど」
「あ、はい」
「千尋にその変装を解いて欲しいんだ。ダメかな?」
「えっ?」
突然の北本先輩の申し出に驚いた。
どうして、先輩がそんな事を。
「ほら、あの日、事情を聞いたでしょ?」
「あ、はい」
占いで地味にした方が良いって出たからだと、北本先輩には伝えたけど。
「元カレの事にけりがついたんだし、千尋ちゃんに本当の自分に戻って欲しいなって思うんだよね」
北本先輩の言葉に、紀伊ちゃんも同じ気持ちだと言いたげに私を見た。
「・・・でも、占いが」
変装を始めた時に出た占いをまだ引きずってるのは、ダメだと思うけど、本当の自分に戻るのが怖い。
「今、新しく占ってみて。千尋ちゃんが前に進むために」
真剣な表情の北本先輩に、どうしていいのか分からなくなってくる。
「千尋、私も北本先輩の意見に賛成かも」
「紀伊ちゃん・・・」
「あんな昔の占いじゃなくて、新しく占って欲しい。千尋には本当の自分に戻って欲しいから」
本当の私・・・・・。
何年も前の占いを信じて、ずっと自分を変えずに今まで来た。
今さら、この格好じゃ無くなるのは、少し怖い。
「千尋ちゃん。この雑誌の恋占いよく当たるって評判なんだ。良かったら読んでみて」
北本先輩は鞄ら一冊の雑誌を取り出して、私に手渡してくれる。
「恋占いって・・・」
「元カレの呪縛から解き放たれたんだから、新しい恋しなきゃでしょ?」
北本先輩は、ね? と私の顔を覗き込む。
もしかして、北本先輩は、私のためにわざわざこの雑誌を用意してくれたのかも知れないな。
どうしてか、そんな気がした。




