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占いガール  作者:
恋占い

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26/41

変わり始めた気持ち


「お、紀伊ちゃんじゃん」


私達を見つけた渋沢先輩がへらりと笑う。

彼の両隣の女の子達が凄い顔で睨んでくるんですけど。

別に渋沢先輩には用なんてないのに。

そんな風に睨まれたら、気分悪いよね。


「渋沢先輩に用はないので、話しかけないでください。隣の女の子達から凄い顔で睨まれてるんで」

わぉ、紀伊ちゃん、いきなり飛ばすなぁ。


「・・・なっ」

「なんなのこの子」

二人の女の子は真っ赤な顔で怒りだす。


「普通の四大生ですけど」

わ~笑ってない目で微笑んでるよ。

紀伊ちゃん強者だよぉ。


「ちょ、ちょっと私達先輩よ。口の聞き方がなってないんじゃないの?」

そんなこと言ったら、倍返しされるのになぁ。


「先輩って言っても2歳年上ってだけですよね?」

紀伊ちゃんは負けない子なんだよ。

そして、口では紀伊ちゃんに勝てないと思う。


「な、なんなのこの子。渋沢くぅ~ん」

渋沢先輩に助けを求める女の子。

もうあからさまな甘え方に笑えてくる。


「まぁまぁ落ち着いて」

笑顔の渋沢先輩の瞳を観察してみると、紀伊ちゃんの言うように笑ってなかった。

なんだか、女の子を見下してるというか、軽く見てると言うか、そんな感じ。


「千景、さっさと済ましちゃお」

「あ、うん、そうだね」

渋沢先輩の観察とかしてる場合じゃなかった。

北本先輩に視線を向ける。


「千尋ちゃん、俺に用かな?」

北本先輩は優しく微笑んでくれる。


「あ、はい。少しお時間良いですか?」

こんな人目のある所は早く退散しないと。


「うん、千尋ちゃんの為ならいくらでも時間あるよ」

「あ、じゃあ、空いてる講義室でお話ししたいです」

北本先輩の言葉を軽く流して用件を伝える。


「講義室より良いところ知ってるから、ついてきて」

ね? と言われて、こちらがお願いしてるんだし、北本先輩に従った方がいいよね。


「・・・はい」

紀伊ちゃんをチラッと見たら頷いてくれたので、返事した。


「慧、今日はここでばいばい」

行こ、っと私達に声をかけて歩き出した北本先輩。


「えっ! 俺も行きたい」

やっぱり言うと思ってました、渋沢先輩。


「慧はその子達と遊ぶ約束してたでしょ? だからダメ」

渋沢先輩を振り返った北本先輩は悪戯っ子みたいに笑った。


「そ、そんなぁ~」

情けない声を出した渋沢先輩を放置して私達は先へと進んだ。



北本先輩に案内されてやって来たのは、大学近くの可愛いケーキ屋。

店内にイートインスペースがあって、大学帰りの女子生徒達がちらほらお茶をしていた。


「ここのケーキ美味しいから、好きなのどうぞ」

差し出されたメニュー。


「あ、でも・・・」

話をしたいだけだしなぁ。


「バイト代入ったばっかりだから奢るよ」

お礼を言いに来たのに奢って貰うのは心苦しい。


「そんなわけには・・・」

店内に入るときにチラッと見たショーウィンドの中に、凄く美味しそうなケーキがあったので、食べたいのは山々だけど。


「遠慮しないで。紀伊ちゃんも好きなの食べて」

私の隣に座る紀伊ちゃんにも声をかけた北本先輩。


「分かったわ。千尋、せっかくだから食べよう」

「・・・うん」

紀伊ちゃんがそう言うなら。


「良かった。遠慮しなくていいからね」

どうして、北本先輩がそんなに嬉しそうなのか分からない。

三人とも午後のケーキセットを頼むことにした。

飲み物もケーキも選べるのでお得だ。

注文を終えて、改めて北本先輩を見る。


「あの、この間はありがとうございました」

そう言って頭を下げる。


「別にお礼を言われるようなことはしてないよ」

「いえ。バイクの時も大翔の時も、北本先輩が居なかったら大変なことになってました。本当にありがとうございました」

本当に助かったから。


「たいした事してないって」

北本先輩は苦笑いする。


「千尋を二度も助けてくれたこと、感謝してるわ。私からもお礼を言わせて。ありがとう」

紀伊ちゃんも私の隣で頭を下げてくれた。


「ちょ、ちょっと二人とも頭を上げて。俺は俺のしたいようにしただけだよ。そんなにお礼を言われると照れ臭い」

頭をポリポリかいた北本先輩は、照れ笑いを浮かべる。


「それで、お礼をしたいんですけど、北本先輩は今欲しいものとかありますか?」

本題に入る。

私が選んでプレゼントすることも考えたけど。

北本先輩に聞いた方がいいんじゃないかと思ったんだよね。


「本当、いいんだって」

珍しく北本先輩が焦ってる。


「二回も助けられたから、何かしないとこの子の気が収まらないんですよ」

紀伊ちゃんが援護してくれる。


「う~ん、困ったなぁ。欲しい物って言ってもね」

北本先輩は困り顔で腕組みをして首を傾げた。

イケメンはそんな仕草も様になる。


「何か思い付きませんか?」

精一杯の感謝を伝えたい。

私が前を向いて進めるようになったから。


「そうだな・・・物じゃなくちゃダメかな?」

上目使いで聞いてきた北本先輩は、

「千尋の体とか言ったら、首絞めるから!」

と紀伊ちゃんに脅される。


「ククク、そんな事言わないよ」

口を開けて笑った北本先輩。


「千尋の恩人でも女ったらしには違いないもの」

「俺って信用ないんだね」

「ええ、聞くまでもないわ」

紀伊ちゃん、お礼を言いに来たのに好戦的にならないでぇ。


「おかしいなぁ。最近女の子とは遊んでないんだけど」

「飽きただけじゃないんですか?」

冷たい目を向ける紀伊ちゃんに、

「そんなんじゃなくて。信用してもらうために一途になろうと思ったんだよねぇ」

とへらりと笑った北本先輩。

どうやら、北本先輩は好きな人が出来たらしい。


「それはいいかも知れませんね」

女の子は一途に愛されたいと思うものだし。


「でしょ? 俺、信用してもらえるように頑張るね」

「はい。影ながら応援してます」

相手の人は知らないけど、ぜひ頑張って欲しい。


「あ~そうきたかぁ・・・」

への字に眉を下げた北本先輩。

えっ? 応援要らなかったのかな。


「北本先輩・・・まさか。本気になったの?」

紀伊ちゃんが、私をちらりと見た後、嫌そうに北本先輩を見る。


「あ、うん。そのまさかだね」

飾りのない笑顔を浮かべた北本先輩と、

「うわ・・・最悪。嫌な予感してたのよ」

大袈裟なほどに落胆した紀伊ちゃん。

二人はなんの話をしてるんだろうか。

私はすっかり茅の外だ。


「北本先輩が本気なら・・・私にとやかくいう権利はないけど・・・強引な事はしないでくださいね」

「分かってるよ。マイナスからのスタートだし、じっくりと時間をかけるつもりでいるよ」

「その言葉信じていいんでしょうね」

「ああ。神に誓うよ」

「それが一番胡散臭い」

紀伊ちゃんが眉間にシワを寄せた。


「今までとは違うから。俺も本気なんだ」

真っ直ぐな北本先輩の瞳は真剣だ。


「そう・・・分かったわ」

紀伊ちゃんは項垂れたように溜め息を一つついた。





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