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占いガール  作者:
血液型占い

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24/41

さよならを伝えよう

千尋side


どうやって、この場を納めたらいいんだろうか。

大翔に無理やり手を引かれてこんな所まで来てしまった。

パンケーキ屋に残してきた涼香ちゃんの事も気になるし。

早く解放してもらわないと。


パンケーキ屋で、涼香ちゃんとお茶をしていたら大翔が突然現れた。

どうしてこの街のあの場所に現れたのかは、分からない。

だけど、気持ちだけが焦った。

私の気持ちはまだ大翔に会う準備が出来てなかったんだよ。

別れた頃より大人っぽくなった大翔は背が高くなって、色気を醸し出したイケメンになってた。

昔の面影の残る瞳で私を捉えた大翔は、話がしたいと私を連れ出した。


涼香ちゃんを残していけないといった私に、すぐ終わるからと言ったはずなのに、話もせずに未だに歩いてる。

掴まれた手が凄く気持ち悪い。

あの子に触れたその手で掴まれてると思うと、鳥肌が立ってくる。


本当、やだ。

もう、逃げ出したい。


「離して」

「・・・・・」

「こんなことしてどうするつもり?」

必死に声をかけても大翔は何も言わない。

今さら私をどうしようと言うんだろう。

大翔と居る空間が苦しくて仕方ないと言うのに。


紀伊ちゃん、助けて。

心が悲鳴を上げる。

すれ違う人達は痴話喧嘩だと思っているのか、助けてくれそうにない。

強い力で掴まれた腕が痛いのに。

大翔の手を振り払って、逃げ出せない非力な自分が憎らしい。


「千尋、見つけた」

ホッとした様な声と、背中から覆い被さるようにして私のお腹に腕を回した誰か。


「えっ?」

と振り向くと、額に汗を滲ませた北本先輩の姿。


「誰だよ? お前」

大翔は突然現れた北本先輩に怒りを露にする。


「悪いけど。俺の彼女に触れるの止めてくれる?」

北本先輩は、大翔を睨み返しながら私の手を掴む大翔の腕を力一杯掴んだ。


「・・・っ、何するんだよ?」

痛みに私の手を離して、大翔は憎々しげに言う。


「それはこっちの台詞だ。女の子の腕に手形が付くぐらい握るなんて何してるんだ」

初めて見る黒い北本先輩。

相当怒ってるらしい彼は、冷たく大翔を見据えた。

それと、同時に私を背中から両腕を巻き付けて抱き締める。

それを見た大翔の顔が悔しそうに歪んだ。


「あ~あ、可哀想に手首赤くなってるね」

北本先輩は大翔を無視して私の腕を擦る。

触れられたそこに痛みを感じた。


「・・・っ、北本先輩」

顔だけ振り返ると、北本先輩は心配そうな顔で私を見下ろしていた。


「大丈夫?」

その言葉に、悔しいけどホッとした。

北本先輩がどうしてここにいるのか? とか思いながらも、さっきから私を襲ってた胸の痛みは消えたんだ。


「・・・はい」

安心した事で涙が滲んだ。


「俺を見てホッとしてくれるなんて嬉しいねぇ」

北本先輩が綺麗に微笑む。

その顔は、いつもの北本先輩だ。


「お前、誰だよ? 千尋を離せ」

大翔が北本先輩に突っかかる。


「さっき言ったけど? 俺の彼女だって」

低い声で言う北本先輩は、私と目が合うとさりげなくウインクした。

ここは、北本先輩の話に乗った方が良さそうだな。


「はぁ? 千尋、嘘だよな」

私に聞いてくる大翔。

そんな悲しそうな目をされても、私はもう貴方になにもしてあげられないんだよ。


「千尋」

不意に名前を呼ばれて、北本先輩を見上げる。


「はい」

「この彼は誰?」

北本先輩の瞳の奥がギラリと光ったような気がした。


「お、幼馴染み」

そう、もう大翔は幼馴染み以外の何者でもない。


「ち、違う。俺は千尋の・・・」

大翔はそう言いかけて言葉に詰まる。


「もしかして、元カレ?」

北本先輩は大翔の言葉を引き継ぐようにして私に訪ねた。


「・・・あ、中学の頃に付き合ってました」

もう何年も前。

随分と遠い過去だ。


「そっか~すっごい昔の元カレだね」

意地悪く口角を上げた北本先輩は、大翔に向かって挑戦的な目を向けた。


「・・・くっ」

悔しそうに奥歯を噛み締めた大翔は拳を握りしめてる。


「もしかしてさぁ。千尋が今でも自分を思ってるとか自惚れてたりして」

ハハハとバカにした笑みを浮かべた北本先輩は、さらにこう続けた。


「千尋には、俺みたいな極上の彼氏がもう居るんだよね。残念でした」と。

北本先輩、自分で極上って、先輩らしいですよ。

変な緊張が溶けていく。

北本先輩のいつものペースは、今の私に心地いい。


「そ、そんな、嘘だよな? 千尋」

「・・・私にとって大翔はもう過去の人だよ」

だから、追い求めるのはもう止めて。

大翔にとっても、私にとってもマイナスにしかならないんだよ。


「嘘だろ? 嘘だよな。もう浮気なんてしないって誓う。だから、俺の所に戻ってきてくれよ」

懇願する大翔の瞳は、ずっと昔に見たものだ。

あの頃と違って、胸が苦しくならないのは後ろに居る北本先輩のお陰かも知れない。


「お前、千尋が居たのに浮気したの? バカだよな。こんな最高級な彼女なのに裏切るとかあり得ないね」

真剣な声でそう言った北本先輩は、大翔を見下したように見据えた。

嘘でも、北本先輩の言葉が嬉しかった。

私を私と認めて貰えたような気がして。


「気の・・・気の迷いだったんだ」

大翔はそう言って項垂れる。


「俺は気の迷いなんて起こさないね。第一、こんな可愛い彼女がいるのに他の女にいい顔なんて面倒くさくてやってられないよ」

北本先輩の言葉が本気みたいに聞こえる。

その場かぎりの嘘だって分かってるのに、胸がキュンとするのを止められないよ。


「・・・っ」

大翔は崩れるようにその場に膝をつく。

昔、大好きだった大翔。

いつも一緒にいて、ずっとそれが続くと思ってた。

でも、何もかも幻想だったんだよ。


「大翔、さよならだよ。あの時、言えなくてごめん。私はもう大翔を恋人として見ることは出来ない」

さよならも言わずに、別れるの一言で大翔から逃げた私もきっと狡かった。

だから、二人ともこんなにも引きずってしまったんだね。



「・・・千尋、ごめん。あの時、裏切ってごめん」

大翔の大きな瞳から涙が溢れ落ちる。

それを見てチクチク胸の奥が痛んだけれど、私はもうその涙を拭ってあげる事はない。


「ううん。お互い忘れて別々の道を歩こう」

「・・・ああ」

「じゃ、これでお別れだよ」

溢れそうになる涙を我慢して北本先輩を振り返る。


「もういいの?」

優しい彼の声にゆっくり頷いた。


「じゃあ、行こう。涼香も心配してるし」

「はい」

北本先輩は私を解放すると手を引いて歩き出す。


涼香ちゃん、一人で大丈夫かな?

目尻の涙を人差し指で拭う。


「大翔君だっけ? 君の分まで千尋は俺が幸せにするよ。裏切って悲しませたりしないって誓う」

北本先輩は振り返って大翔に言う。


「・・・っ、はい、千尋をよろしくお願いします」

大翔の絞り出すような声がしたけど、私はもう振り向かなかった。

私達の進む道は交わることはない、この先ずっと。



北本先輩に手を引かれて、大通りまで戻る。

人が多くなってるのは、きっと気のせいじゃない。

お昼近くになって遊びに来た人が増えてるんだろう。

今まで大翔を思うと苦しくて切なくて、どうしようもなかった気持ちが今は清々しい。

これも、きっと北本先輩のおかげだ。

大翔にさよならを言えたのも、北本先輩が側に居てくれたから。

いつもは、ちょっかいをかけられて困ってたけど、今日は本当に助かった。


「北本先輩、ありがとうございました」

素直な気持ちでお礼が言えた。

私って前のバイクの事といい、なんだかんだと北本先輩に助けられてるよね。


「ううん、間に合って良かったよ」

私を見下ろす北本先輩は安心したように笑う。


「お陰で、過去と決別出来ました」

「千尋ちゃんが、いつも変装をしてるのは大翔君のせいかな?」

痛い所をついてくるなぁ、北本先輩。

私の事情に巻き込んでしまったんだから、話してもいいかな。

どうして、変装してない私が分かったのか謎だけどね。

今は、もういいかなって思える。


「そうですね。大翔が浮気した子が占い好きで占いに大翔が自分の運命の人だって猛アタックをしたんです。優しい大翔はその子を無下に出来なくて、なし崩しに体の関係になったんです」

前は口にするもの辛かった話なのに、案外あっさりと話せた。


「それで千尋ちゃんも占いにのめり込んだの?」

「はい。大翔を奪った占いなのに信じずには居られなくなって。バカみたいですよね」

自嘲的に笑った私に北本先輩は首を左右に振った。


「千尋ちゃんは、きっと必死なだけだったんだと思うよ」

必死なだけ・・・そう言われたらそうなのかも。

あの頃は、占いを憎みながらも、それに頼って生きるしかなくて。

ずっと・・・ずっとそれを引きずってきた。


「北本先輩のお陰で胸が軽くなりました」

「良かった。少しでも役に立てて」

「でも、北本先輩はどうしてあの場所が分かったんですか?」

そこは聞いておきたい。


「あ・・・あ、そうそう。たまたま繁華街に遊びに来てたら、涼香に千尋ちゃんを助けてって呼び止められて。それで探してたら拐われてる女の子が居るって通りすがりの人が言ってたから、場所を聞いたんだ」

北本先輩の目がちょっと泳いでたけど、そこは突っ込まないことにした。

本当に、今日は彼のお陰で助かったから。


「そうなんですね」

「あ、うん、そう。急ごうか涼香が待ちくたびれてるから」

「はい、そうですね」

フフフと笑って、北本先輩に手を引かれたまま駆け出した。

モヤモヤしてた何かはもう、私の心の中には無かった。

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