さよならを伝えよう
「分かった。絶対に連れてきてね」
「ああ。まかせとけ」
「先生達は、向こうの方に行ったと思うの」
「分かった。行ってくるな。ほら、パンケーキ食べといで」
涼香をオープンカフェの方へ向かわせて、俺は涼香が指差した方へと駆け出した。
千尋ちゃん、無事でいてくれ。
額に汗を滲ませて、人混みを捜索しながら進む。
休日の人の多さに苛立ちを覚えながらも、俺は必死で彼女の姿を探した。
怖い思いをしてるんじゃないか、泣いてないか。
そんな思いが次々と浮かんでくる。
早く、早く見つけてあげないと。
他の男に触れられてるんじゃないかと思うだけで気が狂いそうになる。
「どこだ! 千尋ちゃん」
手の甲で滲んだ汗を拭った時、横を通る女の子達の会話が聞こえた。
「さっきのって、人拐いかな?」
「えっ? あんなイケメンが?」
「だって、嫌がる女の子の手を無理に引いてたよ?」
「痴話喧嘩じゃない? だって女の子もかなりの美少女立ったし、お似合いのカップルじゃなかった?」
「まぁ・・・そう言われたらそうかもね」
まさか! 俺は慌てて振り返る。
「ねぇ、君達」
声をかけた途端にキャーと黄色い悲鳴が上がる。
「な、なんですか?」
はにかんだ様に上目使いをしてきた女の子。
もう一人も頬を染めてる。
あ~もう、君らが望んでる目的で声をかけた訳じゃないんだよ。
「さっき話してたカップルってどこで見たの?」
「えっ?」
そんなあからさまに残念そうな顔するなよ。
「どこで見たのかって聞いてるんだけど?」
強い口調でもう一度問いただす。
「あ・・・そ、その角を曲がった通りです」
俺の迫力に目をパチクリさせながら、指を指した女の子。
「そう、ありがとう」
もう用はないとばかりに背を向けて走り出す。
後ろから、何か声をかけてきたような気もするけど、気にすることなく目的の場所へと急いだ。
角を曲がり、直ぐに見えたのは嫌がる千尋ちゃんの手を引く男。
遠目だけど、教えてくれた女の子が言うように顔は整ってるみたいだ。
まぁ、あの程度じゃ俺の敵じゃないけどね。
俺は速度を上げて、千尋ちゃんの救出に向かった。
必死に走ることがカッコ悪いとか、人がジロジロ見てるとか、そんなの気にならないぐらいに、目の前の彼女達に意識を集中させていた。
早く・・・早く千尋ちゃんを救い出さなきゃ。




