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占いガール  作者:
タロット占い
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占いババ

千尋side



「千尋、お昼何食べる?」

そう言いながら隣を歩くのは紀伊ちゃん。

彼女は、磯野紀伊いそのきい

茶髪で縦巻きカール、バッチリメイクの綺麗なお姉さん。

中学校からの私の親友。

ネクラな私には不釣り合いに、見えるが紀伊ちゃんは何時だって私の味方で居てくれる。

大翔と別れた時だって、私を支えてくれたのは紀伊ちゃんだった。

こんな占いばっかりの生活をしてる私を見捨てたりしない。

紀伊ちゃんが居てくれなかったら、あの時も今も私はダメになってたと思う。

高校の時から一緒に暮らしてる紀伊ちゃんは、私の大切な家族だ。


「Aランチにしようかなぁ」

今日の占いでラッキーアイテムが、ハンバーグだったもん。


「じゃ、私もそうしよう。チケット買ってくるから千尋は席取りよろしく」

大学のカフェに着いた途端に、紀伊ちゃんはそう言いながら券売機へと向かった。

相変わらず行動早いなぁ。


空いてる席あるかなぁ?

カフェ内に視線をさ迷わせる。

あ、窓際の席が空いてる。

鞄を両手で抱き抱えて急ぐ。

早くいかないと、直ぐに席が埋まっちゃうもんね。


賑わうカフェを横切りながら、目的地へと向かう。


「千尋、この間ありがとう」

「また、占ってね」

途中で声をかけてくる女の子達に軽く会釈を返す。

空いていたテーブルについて、タロットを出す。

午後からの占いをしなくちゃ。

カードを並べながら自分について占う。

日常のことを知りたいと、念じながらカードを並べていく。

紀伊ちゃんがお昼ご飯を運んでくるまでに終わらせないとね。


過去からの啓示が出てる。

なんだか、凄く嫌な予感がした。

顔を上げた先に紀伊ちゃんを見つけてカードを集める。

これ以上占いたくないって気持ちもあったのかも知れないな。


「なに、沈んだ顔してるのよ。占い結果悪かったの?」

大きなトレーに二人分のランチを運んできた紀伊ちゃんは心配そうに私を見下ろす。


「あ・・・うん、あんまり良くなかった」

肩を落として溜め息をついた。


「大丈夫よ。千尋の占いは自分のことは当たらないから」

フフフと笑って、紀伊ちゃんはテーブルにトレーを置いた。


「そ、そんなことないもん」

酷いよ、紀伊ちゃん。


「そんなことあるわよ。どれだけ一緒にいたと思ってるのよ。ほら、温かいうちに食べよ」

そう言いながら紀伊ちゃんはAランチを私の前に置いてくれた。


「う、うん。ありがとう。お金後で渡すね」

「良いわよ。食費から払っておくし」

「了解」

頷いて、テーブルの上のカトラリーからナイフとフォークを取り出した。

うちの実家と紀伊ちゃんの実家で食費と家賃を折半していて、食費の方は共有のお財布に入れてある。

お互いに使うときにそこから貰っていくようにしてるんだ。


「「いただきます」」

二人で両手を合わせた。


出来立てのAランチは美味しそうだ。

ハンバーグとエビフライとサラダとパンとカボチャのスープ。

ここのランチは安くて美味しい。


「千尋も今日はバイトだよね?」

「うん。紀伊ちゃんもだよね?」

「そうよ。今日は10時までだから、先にご飯食べて寝て」

「分かった。私は今日はカテキョの方だから8時半には帰れるから晩御飯作っておいとくね」

「いつもありがと」

「ううん、こちらこそ」

フフフと笑い合う。


紀伊ちゃんはカラオケ店で週5でアルバイト。

私は家庭教師とマンション近くのコンビニで週2回バイトしてる。

早く終わる方がその日の夕飯を作ることになってるんだよね。


「私、カテキョのバイトもう一人増えるかも」

この間、学長に言われた事を思い出して伝える。


「そうなの? 千尋、今、中学生を二人見てるよね」

「うん。今度は小学6年生なんだって」

「体に負担にならないなら良いけど、無理しないでよ」

「分かってるよぉ」

紀伊ちゃんは心配性だ。

私、教えるのは得意だし、もう一人ぐらい増えても大丈夫だと思う。


「ならいいけど。千尋は直ぐに無理するから」

「しないよ。それにね、少しお金も欲しいから一人増えるのは助かるの」

再来月はお母さんの誕生日だから贈り物したいんだよね。


「何か欲しいものでもあるの?」

そう言ってエビフライにかじりついた紀伊ちゃん。


「ううん。再来月お母さんの誕生日だから」

首を左右に振ってからそう答える。


「あ、そっか、おばさんの誕生日ね。足りないなら私もカンパするわよ」

「いいよ、そんなの」

紀伊ちゃんは、化粧品や洋服を買ったりする為に働いてるのに、申し訳ない。


「おばさんが送ってくれる野菜とか缶詰とか、凄く助かってるもの、そのお礼ぐらいしなきゃ」

「そんなの良いってば。紀伊ちゃん家のおじさんだって色々送ってきてくれてるじゃん」

私の家も紀伊ちゃんも家も、生活の足しにと何かしら送ってきてくれる。

お互い様なんだからね。


「でも、足りなかったら言ってよね」

「うん、ありがとう」

紀伊ちゃんの優しさに胸が温かくなった。


「フフフ、千尋は可愛いな」

「そ、そんな事ないし」

そんな甘い顔して言われると、相手が女の子でも照れちゃうよ紀伊ちゃん。



「相席いいかな?」

そんな声が聞こえて顔を上げると、そこには美丈夫な男の子がいた。

さらりとした焦げ茶の髪の前髪に三本の赤いメッシュが入った彼は、長い睫毛の二重瞼で黒くて大きな瞳の持ち主だった。

100人居たら全員がイケメンだと溜め息を漏らすんじゃないだろうか?


「悪いけど、他の席にいってもらえる?」

紀伊ちゃんは冷たい視線で彼を見る。

明らかに敵意を向けてるのが見てとれた。

紀伊ちゃんが警戒する人だから、あんまりお近づきになっちゃいけなさそうだ。


「どこも一杯なんだよね」

周囲を見渡して肩を竦めた彼は人懐こい笑みを浮かべた。

確かに一杯だけど、この人一人ぐらいなら他の場所でも座れそうだけどなぁ。

だって、三人掛けや二人掛けの女の子達が色めき立ってる。

自分達の所へどうぞ! と言いたげに彼に視線を向けてるし。


「私達の所じゃなくても、喜んで迎えてくれる女の子達が沢山いますよ」

疑問に思った事を口にする。

ほら、うんうんと頷いてる子が何人も居るよ。


「えぇ~俺、窓際が良いんだよね」

そんなフランクに我が儘言われても困る。


「北本先輩、申し訳ないですが、違う場所に行ってください」

一言一言をゆっくりと言った紀伊ちゃんは、相当キレてる。

この人が北本先輩なんだ。

恋占いをして欲しいって言ってくる女の子から、名前だけは何度か聞いたことがあった。


北本倫太郎きたもとりんたろう三回生で、めちゃくちゃイケメンで、二年連続学祭でミスター青学を取ったらしい。

因みに青学とは、うちの青葉学院大学の略称だ。

来るもの拒まず去るもの追わずの、女ったらしだと、私は認識してる。


まぁ、顔は今、初めて知ったけど。

紀伊ちゃんが頑なに、相席を断る意味が分かったかも。

モテモテの北本先輩と相席なんかした日には、女の子達からの視線は痛いし、変に妬まれても困るしね。

しかし、本当、この人、綺麗な顔してるなぁ。


ぼんやり見てたら、目があった。

あまりのイケメンぷりにドキッとして、慌てて目を逸らす。

危ない危ない、こんな人無視してお昼ご飯食べなきゃ。


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