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占いガール  作者:
星座占い

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15/41

仕組まれた偶然

倫太郎side


「北本先輩、これで血を拭いてください。腕から血が出てます」

さっきまでとは違って、おどおどした様子もなくハンカチを差し出してくれた千尋ちゃん。


「ありがとう。でも、君の膝の方が凄いよ」

俺の腕はかすり傷だし。

千尋ちゃんの膝の方が流血が激しい。


「私、家が直ぐそこなんで大丈夫です」

「いやいや、そう言う問題じゃないよ」

「そう言う問題です。使ってください」

千尋ちゃんは一歩も引かないと言う強い意思を込めて、ハンカチを押し付けてくる。

仕方ないなぁ、借りるか。


「じゃ、お言葉に甘えて」

ハンカチを受け取って、腕の血を拭き取る。


「今日は本当にありがとうございました。北本先輩が助けてくれなかったら大事故にあってました」

丁寧に頭を下げた千尋ちゃん。


「間に合ってよかったよ」

本当、彼女が出てくるのを待ち伏せしててよかった。

千尋ちゃんには言わないけど、コンビニを出たあと彼女の帰りを少し離れた所で待ってたんだよね。

別にストーカーするつもりはないけど、暇だったし待ってみたんだ。


「たまたま北本先輩が居てくれて良かったです」

千尋ちゃんの言葉に胸が痛いな。

たまたまじゃないからね。


「本当、たまたま遭遇してよかったよ」

ちょっと苦笑いになる。


「このお礼は改めてします。本当にありがとうございました」

千尋ちゃんはもう一度頭を下げると、その場から去っていく。


「あ、遅い時間だから送っていくよ」

「いいえ。紀伊ちゃんが直ぐそこまで迎えに来てくれてるので」

千尋ちゃんは少し先の方へと目を向ける。

あんまりしつこくしてもダメだよな。


「そっか。じゃあ、気を付けてね」

「はい。本当にありがとうございました」

何度も振り返りながら会釈する彼女を、心配しつつも見送った。

小さくなっていく背中を見つめながら、俺は吐息を吐く。

心臓がドキドキしてることに気づかれなくてよかったよ。


「千尋ちゃんが隠れ美少女だったなんて、反則だろ」

彼女は俯いてやり過ごしたつもりでいただろうけど、ばっちり顔が見えたんだよな。

視力の低い君は気づいていなかっただろうけど、君の眼鏡を探す俺を見てた時に、しっかりと顔が見えていたよ。

もちろん、その前に分かってたけど。

千尋ちゃんを助けるために抱き締めてバイクを避けた時に、俺は心臓が飛び出すんじゃないか? ってほどの衝撃を受けた。

彼女の愛らしさと、ふんわりと香ったソープの香りに全ての意識を持ってかれた。


マジか・・・本気でヤバイな。

何人もの女の子と遊んできた百戦錬磨の俺が、一瞬で彼女に心をわしづかまれるなんてな。

恋なんて、人を思う気持ちなんて、儚くて無駄なものだと思ってきたのに。


「幻想だろ」

悪あがきのように口にする。

だけど、ドキドキした胸は治まることはなかった。


このままじゃダメだ。

誰か適当に掴まえて遊ぶしかない。

そしてたら、こんな気持ちなんて消し飛ぶはずだ。

自分に言い聞かせて、彼女とは反対方向へと足早に向かった。



「どうした? そんなぼんやりして」

遊び相手を探してる時に掛かってきた慧の電話で急遽コンパに参加した。

俺の登場に女の子達が色めき立って、愛想よく接してくるのに、まったく触手が動かない。

こんなこと初めてだ。


「別に、ちょっと疲れてんのかも」

隣に座ってきた慧に、誤魔化すように苦笑いした。


「マジかよ。今日は綺麗な看護師のお姉さまが選り取りみどりだってのに」

慧が大袈裟に嘆いた振りをする。


「煩いよ。適当に遊ぶからほっといてくれ」

テーブルに置かれたジントニックを煽った。


「つれないねぇ。ほらほら。お姉さま達が話しかけたそうにしてるぞ」

「・・・・・」

慧の視線の先の女の子達は瞳をキラキラさせて俺を見てる。

にっこり笑って手を振れば、キャーと黄色い悲鳴が上がった。

この子達はこんなにも簡単に俺に釣られてくれるのに、千尋ちゃんには効かないんだよな。

そう思い付いて、首を左右に振った。

違う違う、彼女の事なんて、なんとも思ってない。

この子達の誰か一人と遊べば、不必要な感情は消えてなくなるはずだ。

昨日はどの子にしようかな。

あと腐れなく遊べる子がいい。

一夜の遊びに、本気を持ち出す子はごめんだからな。


「おっ、やる気になったか?」

女の子を物色し始めた俺に、慧が楽しそうに笑う。


「慧はどの子狙ってんの?」

被るのは避けたい。


「そうだなぁ~俺は簡単に股を開いてくれる子ならどの子でもいい」

おいおい、彼女達に聞こえたらどうするんだよ。


「じゃあ、俺は・・・・・黒いカーディガンを着た子」

派手な化粧で俺に欲情した瞳を向けてる女の子に誘うような視線を向けた。

ロックオンしたその子は、俺の誘いをうけいれて薄く唇を開けて妖艶に微笑みを返してくる。

よし、この後の予定は決まった。


「一番胸のあるお姉さまじゃん」

慧は軽い笑い声をたてる。


「女は胸でしょ」

早く会話を切り上げたくて、思ってもいない事を口にする。


「だよなぁ~じゃあ、俺もお姉さまを物色してくるわ」

慧が立ち上がって女の子達の方へいけば、俺に合図を送ってきた女の子が入れ替わりにこちらにやってきた。


「倫太郎君だっけ? 隣いい」

「ええ、どうぞ」

女受けのする笑みを浮かべて頷いた。

彼女が隣に座った瞬間に、匂いのきつい香水が漂った。


里美りみよ。よろしくね」

「ええ、こちらこそ」

「この後、二人で抜けましょうよ」

大きな胸を俺の腕にベッタリと寄せる里美。

俺を見る彼女の目は捕食者の目だな。

背筋がぞわりとした。

千尋ちゃんみたいに澄んでない。

あ~もう、俺どうしたの?

さっきから、千尋ちゃんの事ばっかり引き合いに出してるよ。


「いいですよ。楽しませてくれるんですか?」

「もちろん」

里美は色っぽく笑う。

この人は、相当自分に自信を持ってるんだろうな。

だったら、楽しませてくれよな。

俺のこのモヤモヤを吹き飛ばすぐらいにね。


「それは楽しみだ」

自信たっぷりに口角を上げた。

里美の胸が当たった腕に鳥肌が立ってたって言うのにね。


俺と里美は、予定通り二次会には行かずに二人で近くのラブホテルに向かった。

出せばすっきりした気分になると思っていたのに、それは間違いで。

彼女のテクニックをもっても、俺の気分は浮上せず。

1度だけ相手をしてやって、早々と別れた。

里美と遊ぶ前よりも、気分が最悪になった事だけは言っておく。


俺・・・マジで、どうしたんだろうな?

端々で思い出す千尋ちゃんの事。

らしくない自分に肩を落として家路についたのだった。




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