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占いガール  作者:
星座占い

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13/41

仕組まれた偶然


「千尋ちゃん占ってぇ~きゃっ」

とやって来た百々(もも)ちゃんは、私の居る机の前で大きくつままづいた。

彼女は、ちょっと天然の混じったドジッ子。

同じ高校から入学した子で、たまにこうやって話しかけてくる。


「大丈夫?」

「うん、大丈夫」

テヘヘと笑う百々ちゃん


「今日は星座占いだけど、それでもいい?」

早見表を取り出しながら言う。


「うん。お願い。告白したいの」

両手を顔の前で合わせて頼んできた。

百々ちゃんはまた誰かに恋してるらしい。

移り気な百々ちゃんは、いつも恋多き女の子なんだけどね。


「じゃあ、百々ちゃんの生年月日教えて」

紙と鉛筆を彼女に手渡す。


「了解」

さらさらと紙に文字を書く百々ちゃん。


「じゃあ。占うね」

百々ちゃんの生年月日を見て、星座占いを始める。

ワクワクした様子で私を見てる百々ちゃんに、ちょっと、緊張した。


「えっと、百々ちゃんの今日の運勢はあんまりよくないかも。告白はやめた方がいいかな。あ、でも、家族運はいいから、大人しく家に帰ったらいいことがあるかも知れないよ」

「そっか・・・分かった。今日は止めとく。千尋ちゃんありがと」

肩を落として溜め息をついた百々ちゃんは、とぼとぼと帰っていく。

背中から哀愁が漂ってるよ、百々ちゃん。

また、次の恋を見つけてね。


「あら、また百々が来てたの?」

「お帰り、紀伊ちゃん」

講師の先生に呼ばれて席を外してた紀伊ちゃんが戻ってきた。


「ただいま。あの子、また誰かに恋してるの?」

呆れ顔で百々ちゃんの背中を見据える紀伊ちゃんに、

「そうみたい。今日、告白したかったらしいけど。占いの結果が良くなかったんだよね」

と返す。


「なら、仕方ないわよ」

「だよね」

「さ、用事も済んだし帰ろうか?」

「うん」

筆記用具を鞄にしまって立ち上がる。


「今日はコンビニでしょ?」

「うん。夕飯作ったら出掛けるね」

「了解。ぐれぐれも気を付けなさいよ、北本先輩に」

「分かってる」

そんな会話をしながら、私達は帰路についた。



自宅で着替えてバイト先のコンビニでバイト中。

さっきまっお客さんが多くてバタバタしてた。

客が引いたところで、品出しを始める。

コンビニのバイトは人目が多いから、いつもの瓶底眼鏡スタイルのまま。

自分の姿を隠せてるこの格好がやっぱり落ち着くし。


「いらっしゃいませ」

バイト仲間の良樹よしき君の声がする。

お菓子売り場から来店人数を確認すれば、やって来たのは一人。

対応は良樹君だけで、大丈夫そうだね。

新しい箱を開けて、お菓子を棚に納めていく。

これが終わったら、ゴミ集めをしなきゃ。

さくさくと働こう。

大学入学と共に働きはじめて3ヶ月、もう仕事も手慣れたもんだ。

初めはコンビニなんて言う人目の多い所で働くことに緊張したけれど。

慣れてみればなんてことはない。

レジ打ちで客を相手にするときだって、必要以上に話さなくてもいいし。

マニュアル通りの対応が出来るから、比較的に楽だ。

私の風貌を見て、変な誘いをする人も無駄話を振ってくる人もほとんどいないし。

ご近所のお婆ちゃんやお爺ちゃんは、たまに孫のように話しかけてくれるが、それぐらいなら平気だ。


「いらっしゃいませ」

再び良樹くんの声がした。

陳列の終わった空のお菓子の箱を手に、レジカウンターへと戻る。

良樹くんは一人目の客の対応中だった。

バックヤードに空箱をしまって、カウンターに再び戻ると、ジュースを手にレジへとやって来る人物が目に入った。


「ゲッ」

うんざりした声が出たのは許してほしい。


「あれ? 千尋ちゃん、ここでもバイトしてるんだ」

話しかけてほしくなかったのに、北本先輩は笑顔で私を見つめる。


「いらっしゃいませ」

マニュアル通りに挨拶する。

先輩の家から遠いうちのコンビニに現れるなんて、思いもしなかった。


「ハハハ、相変わらず。ジャイアントフランクちょう~だい」

「かしこまりました。1つでよろしいでしょうか?」

「よろしいです」

からかうようにそう返してきた北本先輩を見ることなく、手を消毒してトングを手に保温ケースを開ける。

北本先輩は、何が楽しいのかニコニコしながらこちらを見てる。


「ねぇねぇ。何時までバイト?」

「・・・・・」

うざい、本気でうざい。


「送っていこうか? 遅い時間だし」

カウンターからこちらを覗く北本先輩。


「いえ、結構です」

そう返して、紙の袋に入れたジャイアントフランクをカウンターに置いた。


今日の私の星占いは、問題なかったはずなのに。

一日の終わり近くに、こんな遭遇があるなんて最悪だ。

レジを打ちながら、心の中で悪態をつく。

バイトも後、30分で終わりだと言うのに、まさかの先輩の登場だ。


「あ、32番の煙草もちょうだい」

北本先輩の声に反応したのは、客の対応を終えた良樹くん。


「32番ですね。千尋ちゃん、はい」

後ろの棚から煙草を取り出しくれた良樹くんが、カウンターに置いてくれる。


「ありがと」

良樹くんにそう返してバーコードを読み取ると、レジが年齢確認を求めた。


「年齢確認をボタンを押してください」

「はいは~い」

北本先輩はレジの画面を慣れた手つきでタップした。


「合計三点で、860円になります」

ビニール袋に詰めた商品を、北本先輩の前に置いた。


「じゃ。千円で」

デニムの後ろポケットから取り出した財布から千円を出すと、私に差し出した。


「千円お預かりします。140円のお返しとレシートです」

素早く会計ボタンを押して、お釣りを手渡した。


「ありがと。ね、本当にバイトいつ終わるの?」

「ま、まだまだです」

「そっか~残念」

そう言いながらも顔は残念そうじゃないですね、北本先輩。


「ありがとうございました」

マニュアル通りに頭を下げた。

これ以上、話はしませんの意味を込めて。


「じゃ、またね」

ヒラヒラと手を振って去っていく北本先輩。

その背中を見つめながら、安堵の溜め息をついた。


「凄いイケメンですね。知り合いですか?」

すすすっと寄ってきた良樹くん。

男から見ても北本先輩はイケメンなんだね。


「かなりの女ったらしだけどね。大学の先輩だよ」

「まぁ、イケメンはそんなもんですよ」

「ふ~ん、そうなんだ」

どうでもいいけど。


「中々、あんなレベルの高いイケメンは居ないですけどねぇ」

と言う良樹くんは爽やかで愛嬌のある親しみやすい笑顔で笑う。


「うちの大学もう一人、あのレベルのいるけどね。あ、私、ごみ集めに行ってくるね」

そう告げて、新しいごみ袋を持ってカウンターを出た。



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